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番外編マリエルの末路④
しおりを挟む背中に痛みが走り、冷たい床は氷のようだった。
ずっと鞭打ちをされ続けた私は意識が飛びそうになるけど、気絶できないのは地獄だった。
「まったく、反省の色が見えませんわね」
「うっ…」
「お前は何処かまで愚かなのでしょう?五歳の子供でも理解できる頭を持っていないとは。どこまで馬鹿なのでしょう?」
あの後私は、この女に見つかり、そのまま拘束された。
私に無礼を働いたメイド達はなんの咎も受けずにおかしいじゃない。
死刑にされても生ぬるいぐらいなのに、私は地下牢で鞭打ちをされ、冷水を掛けられ続ける。
「先ほどから聖水をかけてますが邪気は払えませんわね…神父様にお願いして禊をさせるべきかしら?ダメだわ、水が汚れるかもしれません…男と交わり過ぎた体では水が汚れます」
「なっ…」
私を娼婦と一緒にするんじゃないわよ。
交わった男はちゃんと選んでいるし避妊だって抜かりはなかったんだから!
大体私の体は綺麗なんだから。
バシッ!
「きゃあ!」
「何です、その反抗的な目は。今後の仕事は炊事場の下働きです。いいですね?人前に出ることは許しませんわ」
「うっ…」
「三日間はそこで反省しなさい。水とパンだけは置いておきます」
そう言い残して地下牢から出て行った。
「冗談じゃないわ…こんなパン食べられるわけないじゃない」
固いし、ぱさぱさして。
ジャムもバターもないこんなパンなんて私の口に合わないわ。
「お母様は役に立たないし…どうにかしないと」
その時だった。
足音が聞こえた。
「マリエル、大丈夫?」
「誰?」
「私よ、下級メイドのシェリーよ。傷薬を持ってきたの…奥様には内緒よ。それからスープを少し」
随分と地味で冴えない女だった。
赤毛でそばかすがあって見るに堪えない醜い女だった。
「マリエル、貴女元はお嬢様だったの?」
「元じゃないわ今もよ」
「でもここに来たって事は、悪い事をしたか、敗戦国の奴隷かのどちらかよ。私は敗戦国の奴隷なのだけど…でも、ここは悪い所じゃないわ」
聞きもしないでぺらぺらしゃべる女にいら立つ。
別にアンタの身の上話なんて聞きたくないわ!それよりも早くこの手錠をどうにかしないさいよ。
「手錠を…」
「ごめんなさい。鍵は上級メイド様が持っているの。私のような下っ端メイドは鍵は渡されていないの」
役に立たないなわね!
いるだけで目障りでしかない女!
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「何かあるの?」
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「慈善活動?」
「けれど旦那様が放蕩家だとか言って、女好きなんですって」
この時私は気づいた。
そのラッド夫人の旦那はいいカモだと。
きっと天は私に味方をしてくれていたのよ!
私が這い上がる為の手助けをしてくれたのね!
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