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50.視察
しおりを挟む忙しいスケジュールを毎日やりくりして新婚生活はあってないようなモノだったが、朝食と夕食だけは一緒にするようにしていた。
そして待ちに待った視察の日が訪れた。
辺境地にある王族の別邸で一泊して視察に向かう。
視察先には先の戦争で亡くなった戦士達の慰霊碑もあるので花を手向ける事になっている。
「嬉しいですわ。仕事と言えど視察に行けて」
「陛下、大事な公務です」
「解ってますわ、私が女王となって初めての視察ですもの。立場は理解してますわ…でも、幼少期にルイスと過ごしたあ後に行けるのですから嬉しいのです」
オスカーがはしゃぐリディ―を咎めるも、本人はちゃんと理解しているだろうから大丈夫だろう。
俺はというと。
「やっぱりお弁当は温かいのが良いかな?」
「何普通に弁当の献立を考えてるんですか殿下!」
「えー?だって長旅だからお弁当を作らないと」
「ルイス、サンドイッチを入れてください」
「陛下も便乗しないでください」
普段から多忙のリディ―に俺は愛妻弁当を差し入れしていた。
いや、この場合は愛夫弁当になるのか?
「王族の中でも夫にお弁当を作っていただけるのは私ぐらいですわ!」
「普通ありませんからね?」
「当日は視察前に、王族の別邸で一泊して、湖の近くでルイスの美味しいお弁当を食べる予定ですわ。今から待ち遠しい」
結婚したから王宮に缶詰状態だったから遠出が嬉しいのだろう。
視察は遊びじゃないけど、幼少期に過ごした場所が幾つかあるからゆっくりさせてあげたい。
「シュークリームを作って持って行こう」
「お前…甘やかすなよ」
馬車の中でお茶ができるように準備を進めて置こうと思う。
きっと楽しい旅になると思っていた。
そう、この時まですっかり忘れていたんだ。
視察先の領地は俺の実家の目と鼻の先であり、ストラス領地のすぐ傍であることに。
王族の別邸は普通の貴族の邸よりもこじんまりとして休暇を過ごしやすいように作られていた。
庭園も小さいながらも心を癒せる空間になっていたのだけど警備は薄いのだ。
けれど、まさかこんな事態になるとは思わなかった。
俺も彼女の存在をすっかり忘れていた。
まさか今さら彼女達に合うことになるとはこの時夢にも思わなかった。
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