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45.宰相の愚痴
しおりを挟む以前から問題視されていた神殿側の援助金。
聖職者達の怠慢について長らく議論を重ねて来た私達は悩んでいた。
日に日に増える孤児達。
かつて教会は救いの場でもあったのだが、何時からかその意味が変わって来た。
聖職者は民の味方ではなく貴族のご機嫌取りをするようになってしまった。
彼等の機嫌を伺い多額の寄付金を得ることで、聖職者の立場を利用するようになっていた。
聖職者としての勤めを懸命に果たそうとするのは小さな教会の神父達で、彼等は己の身を削り続けながら民を救おうとしていた。
なのに上に立つ者は顧みることもない。
大きな教会は国の援助が足りないと言うが、あまりにも差がなるのではないか。
他の官僚も何とかしようと試みるも、気位が高い祭司や助祭司に付け込む隙が無い。
真っ向から言っても無駄だった私はどうしたものか。
そんな時だった。
ルイス様よりある書類を見せられたのは。
とある教会が援助金をちょろまかしている事を。
そして不正をしている事を見つけてくださったのだった。
しかし、これだけでは証拠として甘く、犯人を他の物に仕立て上げられると言われてしまった。
そこでルイス様は作戦を変え、彼等を持ち上げながら追い詰めるように言われた。
他の教会よりも運営が上手く行っている事を持ち上げ、他の教会の聖職者の指導を依頼する。
勿論その聖職者は偽物でスパイを潜入させる者だった。
勿論困っている教会の神父達にも話を聞かせ。
そこで彼等が潰れかけた教会を救うべく奔走しているとの噂を流し、教会に通う民をそちらに移動させる。
やりたい放題している教会では民に暴力を振るうのだが、その場合は商人や貴族が見ていないのが前提だった。
しかももうすぐ中央神殿の代表が視察に来る。
彼等が来る日を狙い、ボロを出させれば好都合だったが、まさか女性を囲んでいたとは。
流石にドン引きしたが…
ルイス様もそこまで想定していなかったが、上手く事を運ぶことができた。
おかげで不正を暴くことができ、司祭は王都から追放して二度と聖職者に返り咲くことはできなかった。
「何と恐ろしい方だ」
「ルイスは切れ者だからな」
「陛下、何故あのような才を持つ方を野放しにしておられたのですか」
十年近く、あの馬鹿親子に採取され続け、虐げられていたとは。
なんて無駄な時間を!
「私も盲点じゃった…恐らく、生きる為に頭を使い続けたのであろう?ストラス領の民がここ十年震災があれど、食べるのに困らなかったようじゃ。聞けば災害に備えて食料を確保したり、辺境伯爵にも協力してもらっていたそうじゃ」
「辺境伯爵と言いますと…」
「クラフト辺境伯爵よ」
あの方は数ある辺境伯爵の中でも気位が高く、気難しいと聞きます。
王家に忠誠を誓う誇り高き一族でもあるのです。
「聞けば幼少の頃からルイスを可愛がっていたそうじゃ。当時、クラフト夫人が病で倒れた際もルイスが献身的な看病をしてクラフト夫人の病は治ったと聞く」
「なんと…それは」
「元よりあの男は子供好き故、ルイスを寵愛した。辺境地では些細な病も命取りだ」
恐らくルイス様はストラス夫人に内緒で薬草を譲っていたのかもしれません。
あの強欲な夫人ならば薬草をチラつかせて惨い事をしそうですからね。
「ルイスはそれだけでなく、作物が育たぬ領地が作物が育つようにアドバイスをしたり、兵糧を作るのにも協力的だ。、あぁ欲がないのかレシピを提供したのに見返りも求めなかった故に…」
「恐ろしい…」
その場で何か要求していれば関係はその場で終わったかもしれませんが、何も求めなかったルイス様に恩を感じたのでしょう。
ある意味金品以上の物を得てしまったということに。
「ルイスは無自覚だろう…此度の婚姻は中立側の物は賛成じゃ。辺境に住まう貴族もな」
中立側の貴族や辺境地に住まう貴族の中には王家に敵対心を持つ者も多い。
けれど、彼等を味方につけるのは難しいのですが。
それをやってのけたルイス様は…
「影の支配者ですか」
「本人は無自覚だから余計に質が悪いと言っている!既に辺境伯爵がルイスを持ち上げておるわ!」
机を叩き嘆く上王陛下を察しますよ。
戴冠式を終え、新たな王となったリディア様はまだまだ未熟故に補佐に回りながら頭を抱える日々はまだまだ続きそうです。
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