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37.国を支える臣下
しおりを挟む王宮に入り謁見の間にて通される最中、既に俺を待っていてくださった女王陛下にその傍には側近達がいる。
俺を盗み見する貴族達の視線はまるで品定めのようにも感じたが、オスカーが傍で守ってくれていた。
「あまり近づかないでくださる?」
「無理を言わないでください。私は殿下の護衛騎士です。傍にいなくては守れません」
「そういいながら、今度は護衛騎士の立場を利用なさる気ですの?」
女王陛下の元に歩く最中、後ろではこんな言い争いをされていた事を俺は知らなかった。
「ルイスよ、良くぞ帰って来てくれた」
「ハッ!」
大勢の前で失態を犯すわけには行かず緊張が走る中、傍には女王陛下が王女時代からお支えされていた方々。
宰相閣下や財務大臣や武功を上げた騎士の皆様。
彼等は女王陛下と苦楽を共にした方々で国の政治を背負っておられる方々でもある。
「大儀である。王都を離れた間、そなたは素晴らしい功績を残した」
「ハッ…はい?」
功績ってなんだ?
「サジータ妃より報告を受けております。作物がここ十年育たぬ地に対策をなさり…領地開拓に貢献なされたと」
いや領地開拓って言うよりも畑開拓です。
しかも俺は趣味の畑を作り、俺の趣味に領地の皆さんが協力してくれただけ。
こう言っては何ですが、俺はバカンスの期間畑を耕しながら美味しい野菜を作っては料理して食べの繰り返しをしていた。
その間、王配としての勉強なんてほとんどしていないんだけどな。
本当に遊んでいたようなもので。
「女王陛下、私はそのような大それた真似は…」
「実に謙虚なものよな?決して前に出ることなく一歩下がることを徹底するとは誠に我が夫と似ておる。のぉ?宰相」
「ええ、内情の功を持って生涯陛下をお守りした殿下と似ておられます。王配としての役目を既に理解されておられます。ルイス様、どうかお願い申し上げます。我が国にはまだまだ荒れた地が多うございます」
「宰相閣下…」
待て待て!
こんな大勢の中でやめてくれる?
今日は俺のお披露目だったんじゃないの?
なのになんだよこれ!
「新しき時代を作る為にもどうかお力添えを。我ら一同忠誠を」
「「「忠誠を!」」」
この時、謁見の間に衝撃が走った。
俺に膝を折る貴族や騎士達は、どんな権力者にも決して媚びることはない人ばかりだった。
決して高位貴族に頭を下げないと言われ。
特に宰相閣下は、幾度も女王陛下と対立したことがあると言われていた。
その理由は、女王陛下の壁となる為だったとも聞かされていた。
そんな人に頭を下げさせてしまった俺は、これからさらに大変なことになるだろうという予想がしたが。
「王配殿下万歳!」
「「「万歳!!」」」
俺が王配となることを望んでくれる人がいるならば期待に応えたいと思った。
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