37 / 91
31.畑だらけ
しおりを挟む今日はやけに暗いと思った。
いつも通りの時間に目を覚ますと、部屋全体が暗いと思って起き上がる。
「今日は曇り?それにしても変だな」
「ピー!ピピー!!」
「んー?モモちゃん?」
枕元で飛び回るモモちゃんにどうしたのかと思った刹那。
「えっ…」
窓を開けると庭が立派な畑になっていた。
「なんだこれ!」
「ピー!」
急いで窓から降りると庭は野菜の畑となっていた。
「ルイス!」
「パパ上、庭が…」
「なんということだ!」
確かに一夜のうちに美しい庭園が野菜の畑で埋め尽くされれば驚くよな?
しかもとてつもなくでかい大樹が立っていたら驚くなという方が無理な話だろう。
「素晴らしい!」
…でもなかった。
パパ上ははしゃいでいた。
使用人はパニック状態だと言うのに。
もしやママ上は?
「今日は涼しいのぉ?ちょうどいい影じゃ」
普通にモーニングコーヒーを飲んでいる!
大物だ。
この夫婦はある意味最強じゃないのか?
「どうしたルイス。そんな所に立っておらず、コーヒーを飲むが良い」
「はぁ・・」
「ピー!」
「モモ、そなたにミルクじゃ」
動じないサジータは昨日にモモちゃんが邸に紛れ込んだ時も通常運転だった。
「ピー!」
「おお、愛い奴め」
一緒に仲良く朝食タイムを取るのはいいけど、侍女長以外は失神しているんだけど。
「それにしてもトマトと珍しい。観賞用にはちと多すぎじゃな」
やっぱり観賞用にしか使わなんだ。
もったないな。
「ママ上」
「何じゃ?」
「朝食に一品、サラダをっ作ってもよろしいですか?」
「良い」
貴族の令息が厨房に入る事は当初使用人に止められたが、王都から離れている領地内ではある程度自由が許された。
普段から自分の事は自分でしているので料理がしたいと言えばサジータは止めなかった。
ただ公の場ではできるだけ避けるように言われていた。
「お待たせしました!」
「ん?これはなんぞ?」
「トマトの中にサラダが入っているな」
丸ごとトマトを使って中をくりぬき新鮮なサラダを入れてドレッシングも入れてみた。
「こちら、どうぞ」
「うむ?実に奇怪であるが赤い器とは珍しい」
「そうだな」
二人は珍しい物が好きなので対抗もなく食べる二人は怖い者知らずだった。
(まぁ、毒は入っていないけど…いいのか?)
王族ならばもっと警戒すべきだと少し心配になるが。
「うっ…」
「これは…」
一口食べてすぐに二人は口元を抑えた。
「二人共!」
「まさか毒が!」
顔色が変わり、侍女達が急いで駆け寄るも。
「「美味い!」」
ズルッとズッコケた。
まるで喜劇のようだったが、心配する側からしたら笑えない。
「なんと瑞々しく美味なのじゃ!」
「ドレッシングもさっぱりして実に良い。王都のドレッシングは少々胃に来るのでな」
そういえば宮廷料理で使われるドレッシングはフレンチドレッシングが主流だった。
後は油を沢山使って見た目華やかなドレッシングだが、高カロリーでお腹にも優しくない。
何より味が濃い。
対する俺が今出したドレッシングオリーブオイルを使った酸味のあるイタリアンドレッシングで玉ねぎを沢山使っているからヘルシーだ。
「こちら、トマトも食べられますので」
「何?本当だ…」
「トマトは食べられたのか」
ナイフでトマトを切るとドレッシングと合わさり、更に美味しくなるようにしてある。
「しかし、トマトはこんなに赤かったのだな?私達が目にしているのは緑かオレンジ色だ」
うん、それは熟す前の状態だ。
そんな状態で食べても美味しいはずがない。
「ピー!」
「モモちゃんはフルーツトマトね?」
昨日、トマトを見つけた時に見つけた。
これならモモちゃんも食べられるだろうが、美味しいなトマト。
この時呑気にトマトを食べて忘れていた。
パパ上とママ上が悪だくみを考えている事を。
5
お気に入りに追加
2,915
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
(完結)妹に婚約者を譲れと言われた。まあ、色ボケ婚約者だったので構わないのですが、このままでは先が不安なので、私は他国へ逃げます
にがりの少なかった豆腐
恋愛
※後半に追加していた閑話を本来の位置へ移動させました
――――――――――
私の婚約が正式に決まる前日の夜。何かにつけて私の物を欲しがる妹が私の婚約者が欲しいと言い放った。
さすがに婚約について私がどうこう言う権利はないので、私に言われても無理と返す。
しかし、要領がいい妹は何をしたのか、私から婚約者を奪うことに成功してしまった。
元より婚約に乗り気でなかった私は内面では喜びで溢れていた。何せ相手は色ボケで有名な第2王子だったのだから。
そして、第2王子と妹の婚約が正式に発表された後、私に関する根も葉もない悪い噂が流れ始めました。
このままでは、私がこの国で暮していけばどうあっても先は暗いでしょう。親も助ける気は無いようですし、ならばさっさとどこかへ逃げ出した方が良いかもしれませんね。
そうして私は他国の知人を頼りに、人知れず国を出ることにしました。
※この世界には魔法が存在します
※人物紹介を追加しました。
実家から絶縁されたので好きに生きたいと思います
榎夜
ファンタジー
婚約者が妹に奪われた挙句、家から絶縁されました。
なので、これからは自分自身の為に生きてもいいですよね?
【ご報告】
書籍化のお話を頂きまして、31日で非公開とさせていただきますm(_ _)m
発売日等は現在調整中です。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
婚約破棄されたので、聖女になりました。けど、こんな国の為には働けません。自分の王国を建設します。
ぽっちゃりおっさん
恋愛
公爵であるアルフォンス家一人息子ボクリアと婚約していた貴族の娘サラ。
しかし公爵から一方的に婚約破棄を告げられる。
屈辱の日々を送っていたサラは、15歳の洗礼を受ける日に【聖女】としての啓示を受けた。
【聖女】としてのスタートを切るが、幸運を祈る相手が、あの憎っくきアルフォンス家であった。
差別主義者のアルフォンス家の為には、祈る気にはなれず、サラは国を飛び出してしまう。
そこでサラが取った決断は?
婚約破棄をされた悪役令嬢は、すべてを見捨てることにした
アルト
ファンタジー
今から七年前。
婚約者である王太子の都合により、ありもしない罪を着せられ、国外追放に処された一人の令嬢がいた。偽りの悪業の経歴を押し付けられ、人里に彼女の居場所はどこにもなかった。
そして彼女は、『魔の森』と呼ばれる魔窟へと足を踏み入れる。
そして現在。
『魔の森』に住まうとある女性を訪ねてとある集団が彼女の勧誘にと向かっていた。
彼らの正体は女神からの神託を受け、結成された魔王討伐パーティー。神託により指名された最後の一人の勧誘にと足を運んでいたのだが——。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
学園首席の私は魔力を奪われて婚約破棄されたけど、借り物の魔力でいつまで調子に乗っているつもり?
今川幸乃
ファンタジー
下級貴族の生まれながら魔法の練習に励み、貴族の子女が集まるデルフィーラ学園に首席入学を果たしたレミリア。
しかし進級試験の際に彼女の実力を嫉妬したシルヴィアの呪いで魔力を奪われ、婚約者であったオルクには婚約破棄されてしまう。
が、そんな彼女を助けてくれたのはアルフというミステリアスなクラスメイトであった。
レミリアはアルフとともに呪いを解き、シルヴィアへの復讐を行うことを決意する。
レミリアの魔力を奪ったシルヴィアは調子に乗っていたが、全校生徒の前で魔法を披露する際に魔力を奪い返され、醜態を晒すことになってしまう。
※3/6~ プチ改稿中
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
婚約破棄されたショックで前世の記憶を取り戻して料理人になったら、王太子殿下に溺愛されました。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
シンクレア伯爵家の令嬢ナウシカは両親を失い、伯爵家の相続人となっていた。伯爵家は莫大な資産となる聖銀鉱山を所有していたが、それを狙ってグレイ男爵父娘が罠を仕掛けた。ナウシカの婚約者ソルトーン侯爵家令息エーミールを籠絡して婚約破棄させ、そのショックで死んだように見せかけて領地と鉱山を奪おうとしたのだ。死にかけたナウシカだが奇跡的に助かったうえに、転生前の記憶まで取り戻したのだった。
乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?
シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。
……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる