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27.厳しい要求

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どの国も共通する習わしがある。
国王の配偶者となるの場合、通常は高位貴族に養子縁組をした後に花嫁修業を最低でも三か月受けるのが当然だった。


俺の場合は最低でも半年は必要なはずだ。


しかし…


「あの、公爵様」

「パパ上と呼んでくれ」

「はっ…はぁ」


俺は現在公爵家が所有する別邸にて招かれていた。
向かいにはサジータ様の旦那様でありウズミ・モリアーヌ公爵様がニコニコと笑顔を浮かべている。


「そんなに見ては穴が開くではないか」

「そうは言うが、ずっと息子が欲しかったから仕方ないじゃないか」

「その内孫が沢山増えれば、手が足りなくなるわ…」

はい?
孫ってなんだ?


「何を呆けておるのだ。孫が生まれ、姫君であれば公爵家の養女と迎える手筈になってるのは知っておるな」

「はい…」

通常政略結婚等で嫁ぐ側が跡継ぎがいない場合等では、子供の第二子を跡継ぎとして実家に養子にすると言うのは珍しい事ではない。

俺の前世でも戦国時代ではあったけど。

いや、早すぎないか?
まだ結婚もしていないのに子供の話なんて!


「王の配偶者になる以上は、子は必要じゃ。そなたの身を守る為にも」

「いえ…姫様はまだ年若く。早すぎる出産はお体に負担がかかります」

「ルイスよ、そなた…」


まずい、これは出過ぎた発言だったか?

けれど、他国でも子供を産んで早くなくなった女性は多い。
その理由として無理な出産が原因であることもなきにしもあらずだった。


「ご無礼を承知で発言をお許しいただけますでしょうか」

「遠慮はいらないよ。言いなさい」

パパ上は穏やかに俺の発言を許してくれた。


「近年、出産して亡くなる女性の数は多く。私の母も私を産んでから体を壊してしまいました。若い内に立て続けに出産することは母体にも影響が出ます」

「うむ…姉も難産だったからのぉ」

「姫様はまだ成人して日も浅く、若すぎます。お体に支障がでては本末転倒でございます」


別に、嫌だから言っているんじゃない。
女王陛下も子供ができにくい体であったけど、リディア王女も同様だ。

その理由として考えられるのが魔力の強さだ。
強い魔力故に子供ができにくい体という厄介な体質は未だに改善が困難だった。


「しかし、早い段階に子を作らねばそたの権威が失墜するであろう」

「今さら失墜する程の権威はないと思いますよ」

「ルイスや…苦労していたのだな」

「泣くでないわ!」


よよよと無くパパ上を睨みながら俺を咎めるサジータ様。

「そなたはもう伯爵の子息ではない。王の配偶者となるのだ…低姿勢は止めよ」

「いきなりそれは酷ではないか?何より義兄上はずっと低姿勢だったぞ?」

「その所為で貴族派アホどもに散々見下され、実のない果実等と不名誉な事まで言われていたのだぞ!」


亡くなられたシュヴァン殿下は生前相当苦労し、何度も離婚を突きつけられたと聞く。
その理由は、女王陛下に妊娠の兆しが全くなかった。

噂では原因はシュヴァン殿下にあるらしいが。


「心無い者達が義兄上には種がないと噂を流したのだ…姉上も子ができにくい体だった。故に義兄上が庇われたのだ!ご自分の体が弱いせいで満足に勤めが果たせぬとな…すべては姉上を守る為じゃ」


そうだったんだ。
亡くなられても尚、その面影を大事にする女王陛下は一度も再婚を望まなかった。


今でも祈りの間に飾られている平和を象徴する天使の絵はシュヴァン殿下がモデルだと聞かされたが、本当に天使のような人だったのかもしれない。


「私は義兄のような目に合って欲しくないのだ」

「サジータ、君の気持は解るが…周りが言うべきじゃないだろ」

「うむ…」

まだ結婚式もしていない状況で子供の話をするのは早い。


しかし俺の立場を考えれば、できるだけ早く子を作って欲しいのはパパ上も同じらしい。

どうしたものか、困り果てた。

大体、まだプラトニックな関係なんだから無理だろ!


なんて思っていた俺は馬鹿だった。

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