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26.サジータの牙

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緑の手の持ち主は、あらゆる面でも才能に恵まれていた。
魔力はそこまで強くないが、時として魔力以上の能力を発揮していた。


大錬金術師が、錬金術が魔法に勝るとも劣らないことを証明したように。
魔導士にも負けない薬師を世に送り出したのが緑の手の持ち主だったのだから。


緑の手の者がいれば国は豊かになり、病気からも民を救える。
そして、緑の手の者が作った薬で貿易をして、他国との同盟を結ぶことだって可能だった。



王族として国をよりいい方向に持っていくためにもルイスの才能を惜しい。


「私は何も前ストラス伯爵の意向を切り捨てるわけではありません。ですが、人の心は移ろいやすいものです。何より、適材適所がございますわ」

「うむ…」

この時は誰もが夢にも思わなかっただろう。
ルイスが婚約破棄をされて国外追放となるだろうことを。

しかし私は気づいていた。

マリエルのような派手好きで浪費家の娘には領地代行の意味が解っていないだろうと。


宮廷貴族と違い領地を持つ貴族は意味もなく贅沢をしているのではない。

領地を預かる領主が湯水のようにお金を使い続ければ、破綻するのは目に見えている。
そうなれば火の粉を被るのは、領民なのだから。


愚かな行いをするマリエル達をがルイスを追放した後に自滅するように準備を進めていた。


(そうじゃ…ルイス殿を私の息子に迎えれば…後にリディアの婿にできる)


姉上の話によればリディアはルイスを慕っていると聞き余計に婚約解消を狙った。


そして、狙い通りルイスは婚約解消をされたが。
ここで私は手を打っていた。


領地内では公の場で婚約破棄をされた側であるが、マリエルの不義で婚約破棄になった事にした。
未だに情報がちゃんといきわたっていないことを利用しマリエルが、ルイスと婚約中に狼藉を働き浮気を繰り返していたことも事実なので信ぴょう性を出しながら噂を流した。


大切なのは、ルイスは被害者でありながらも前ストラス伯爵の願いを叶える為に健気に振舞っていたと言う事だった。

おかげで、気真面目な貴族達はマリエルを軽蔑さした。
商人達もマリエルのやりようの酷さに思うことがあり、商売を打ち切ったのだ。


商売を打ち切った商人にもそれとなくルイスがされて来た仕打ちを流しながらも、ストラス家の薬草を作れるものはないと言えば、後はどうなるか目に見えていた。


ストラス家の一番の財源の薬草を無くし、領地代行をしていたルイスがいなくなった状態では家が傾くのは早かったが、それだけではルイスの受けた苦しみは解らない。

ならば最もふさわしい舞台を用意してやろうと目論んだのだった。

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