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21.十年越しの思い
しおりを挟む通常ならば俺は婚約破棄を突きつけられた令息となる。
だが、他国との強いつながりがあるのであれば別だ。
特に大国の血縁者となれば後々、政治に関しても使い道があるし。
何より俺の伯母に当たる方が王妃陛下で、先代国王の姪となれば簡単に手を出すことは不可能だった。
挙句俺は女王陛下の妹君の義息子となるならば、俺に手を出すなんて自殺行為だ。
公で文句を言えるわけがないので――。
「おめでとうございます!」
「なんと喜ばしい!」
思ってもいなくても言う彼等の表情は若干歪んでいたが、今は見なかった事にすべきかもしれない。
「まぁ、なんてゲンキンな方」
「本当に…」
隣で腹黒い笑みを浮かべている女王陛下とサジータ様にビクつく。
「さぁ、ルイス。前に立つのです」
「え?」
「この日の為に用意していたのじゃ」
渡されたのは銀色の王冠だった。
通常、王が頭に乗せる王冠は黄金で伴侶は白銀の王冠とされているのが、この国での習わしだった。
けれど、この王冠はデザインがシンプルだが宝石はオリハルコンを削った物だった。
「これは我が夫がつけていたものよ、当時は夫も驚いていたな」
「普通の反応ですがね?国家予算10年分の価値はありますからな」
(10年…)
眩暈がした。
時価いくらぐらいするかなんて想像できない!
「当然じゃ、王の配偶者なのじゃからな」
「陛下は色々ぶっ飛び過ぎなのです。ルイス様、どうかこのお二人の暴走のストッパー役になってください…シュヴァン殿下がお亡くなりになられてから気苦労が多くて…」
ハンカチを取り出し涙を拭う宰相様は余程苦労していたのだろうけど、俺にできるのかな?
俺、平凡だし。
「大丈夫ですわ、ルイス様」
「サジータ様…」
「貴方は既にすべて持っておりますのよ?だから何も心配いりませんわ。私にすべてお任せくださいな」
女王陛下とは異なるが、サジータ様も女傑だと思った。
なんというか王としての資質があるような気がしたのは俺の気のせいだろうか。
「さぁ、宴の続きじゃ!音楽を!」
「大いに盛り上がるのです!」
女王陛下とサジータ様が盛り上げるように指示した後にリディア王女は俺に手を差し出す。
「さっきの続きをいたしましょう」
「はい」
差し伸べられた手を取りながら立場が逆だと思いながらも、これはこれでありなのかもしれない。
幼い頃に諦めた初恋は巡り巡って別の形で叶えられた。
十年の時を得て俺達はようやく手を取り合いながら歩くことが許されるようになるのだった。
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