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13.婚約破棄後の話し合い

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「一体、どういうことなの!」

お義父様がルイスを追放した一週間後、私と夫は婚約破棄に手続きをするべくストラス家に向かった。
ストラス伯爵夫人は邸内で癇癪を起しながら怒鳴り散らしていた。
茶番劇のような婚約破棄があって直ぐに、懇意にしていた商会から手を切られてしまっただけでなく、王家から領地返上の命令が下った。

それだけではなく、前ストラス伯爵が残した遺言により、領地の権利を大半無くすことになったのだ。


「どうにもこうにもありません。亡くなられた前ストラス伯爵様は遺産の半分をルイス様に引き継いでもらいたいとおっしゃらえていました…万一婚約が白紙になったならば、その領地は国に返上するとの事です」

「そんなの!」

「マリエル様は引継ぎの手続きをなさっておりませんので、領地を引き継ぐことはできません。新居の土地の名義はルイス様になっておりますし、建物の費用もルイス様が持っていましたので」

「私の物なんだから、権利は私にあるはずよ!」

「ならば、その代金を支払っていただかなくてはなりません」


先ほどから話し合いが進まない状況で私達はげんなりしていた。
婚約破棄の後に発生する問題は、領地の引継ぎなどや、支度金の返金等だったので私と夫はストラス家に訪れていたが、ストラス家の顧問弁護士によると。



「聞いてないわ!跡継ぎは私のはずよ!」

「正確には、ルイス様とマリエル様が結婚した後に、お子様が跡継ぎになるとの事です。婿養子であれど、正式な跡継ぎとなることを望まれたのはルイス様です」

「なんであんな出来損ないのルイスが!大体血も繋がってないじゃない!」

「前ストラス伯爵様は無理な縁談を頼み込んだので、せめてもの詫びだとおっしゃられていました。傾いた伯爵家を陰から支え、貢献してくださったルイス様にせめてと…」


前ストラス伯爵が…そんなことを。


私はルイスを冷遇するストラス伯爵夫人にマリエル嬢に良い感情を抱いていなかった。
大切に慈しみ愛情を注いできたあの子を消耗品のように扱って来たのを目の当たりにしたのだから。


こんなことならば婚約を了承するべきではなかった。

けれど、前ストラス伯爵はちゃんと考えてくれていたのね。


「既に現ストラス伯爵様…お祖父様は了承しております。領地の半分を国に返上する事を」

「勝手な!」

「勝手?随分な言いぐさだな…」


ずっと静観していた夫が口を挟んだ。


「態々息子に恥をかかせ、婚約破棄をつきつけて置きながら良く言えたものだ…流石性根の腐った親子は面の皮が分厚いと見える。本当に…」

「なっ!」

「優秀な新たな婿がいるならば領地拡大も問題ないだろう?不肖の息子が作った薬草よりもずっと素晴らしいポーションを作ってくれるのだろう?良いではないか?」


氷のように冷たい表情で告げる夫のデヴィットの言葉に何も言えなくなるが、マリエル嬢は違ったようだ。

「いいじゃないお母様、雑草を育てていた領地なんてあっても意味がないわ」

「マリエル…」

「被害者ぶって、何よ?ルイスを追放する手助けをしてあげたのに。感謝されても恨まれる理由はないわ!」


「感謝だと…」

「貴方」


私も堪忍袋の尾は切れそうだったわ。
なんて傲慢な人なのかしら?

あの茶番劇のような婚約破棄を物語のように美談としているなんて。

家同士の約束事を何だと思っているのかしら。

何より、ルイスの価値も理解しようともしないなんて不愉快だわ。


「何よ?」

「勘違いなさっているようですが、私はルイスを勘当しておりません」

「は?」


お義父様は勘当したと口で言っているけど、本心は違うような気がする。
これ以上領地にいればルイスの立場が悪くなるのは明白だし、マリエル嬢がルイスを亡き者にしてしまう可能性だって出てくるのだから。


「私の息子は誠実で、優秀です。どこぞの阿婆擦れの情夫に成り下がるような愚か者ではありません」

「何ですって?」


今日は思いのほか饒舌だけど、それ程に怒っているのは明白だった。

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