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11.祖父の行動
しおりを挟むフレスベルグの雛を常に連れて仕事をする。
「ピー!」
「好奇心旺盛だけど、薬草は食べちゃダメだぞ?」
色々気になるのか、何でも口に入れようとするので困った物だ。
「後で木苺を上げるから」
「ピピー!」
フレスベルグは果物や魚を好むらしいが、特に雛は苺や木苺が好物のようだ。
書物には詳しく書かれていないが、苺を食べさせたら興奮していた。
「将来は巨大な鳥になるのに、ギャップがすごいな」
常に俺の肩に止まり傍から離れない。
まるでカルガモのようだと婆さん達に馬鹿にされるも、寝る時も離れようとしないから困ってはいるがまんざらでもなかった。
「あれ?ロシナンテ?」
「メェェェ!」
口に咥えているのは手紙だった。
「義兄上?」
あんな形で出て来たから義兄上はきっと心配してられるだろうな。
まぁ、姉上が暴れまわっていないか心配だけど。
「えーっと」
緊張しながら手紙を読むと…
「は?フェンネル家とストラス家の条約が破棄?」
隣接する領地同士、親しい関係に会った両家の関係が断たれた事が書かれていた。
「お祖父様がストラス家を訴え、今までの薬草すべてを押収?そんな…」
ありえないと思った。
今まで長い付き合いをしていたのに、いきなりこんな真似をするなんて。
「しかもお祖父様がストラス家に殴り込み…いやいや、何ってんの!」
厳格なお祖父様であるが武力行使はしない人だった。
理性的なお祖父様が殴った?
しかも公の場でキャルドンを完膚なきまで殴り、あげくの果てにはストラス家に慰謝料を請求し、俺の汚名返上の為に走り回っている?
「どうして…お祖父様」
俺は一族に泥を塗ってしまったのに。
長男に生まれながら、加護を得ることなく魔力もほとんどない。
薬草を育てて採取して生産するぐらいしか能がない。
争いごとも嫌いで、領地の魔獣の世話をしている方が好きなダメな孫なのに。
なのに、どうして。
「メェー!」
今さら確認する術はない。
お祖父様が俺を勘当して家から追放したのは、貴族の子息であるならば当然だった。
姉上は怒っていたけど、俺があのまま家にいれば姉上の立場も危ぶまれる。
お祖父様のしたことは今でも間違いはないと思っている。
領地を、領民を守ることを第一としている人だから。
「ストラス家と関係を切って大丈夫かな…」
マリエルはあの通りの性格だし、後からいちゃもんを付けてお祖父様に何かしないか心配はある。
体の弱い母上に、心労を与えたくないけど。
今の俺にできることはないと思っていた矢先。
「よぉ、ルイス」
「オスカー…」
挨拶も無しに現れたオスカーがどや顔で入って来る。
「辛気臭い顔をしているじゃないか、兄弟」
「は?」
「まぁ、時間もない事だから…急いで準備をするぞ」
「準備?」
何を言っているんだ?
「三日後には生誕祭が行われる、そしてその生誕祭で恒例の舞踏会が行われるのは知っているな?」
「知っているけど…俺は関係ないよ」
婚約破棄をされた俺は踊る相手もいないんだから。
「まぁまぁ、新しい嫁さんを探す場としては最高だろ?その為にも今からしっかり準備をしよう」
「は?ちょっと!」
何故か首輪と鎖を握っている。
何をする気だ!
「俺に任せろ」
「何を!」
一体何をする気だ!
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