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9.すり込み
しおりを挟む――すり込み。
雛が初めて見た者を親と思い込む習性であり、過去にも魔鳥等が人間を親と思い込んだ事があった。
「ピー!」
「完全にやっちまったな」
現在俺は正座をさせられお説教中でした。
「なんでうちの店にフレスベルグの雛がいたんじゃ?」
「何所で紛れたんじゃ?」
「知っていたら高値で売り飛ばしたと言うのに」
気にする所はそこ!
しかも後半は人としてどうかと思う発言が…。
いや、人間じゃないけど。
「ピー!」
「こりゃ、不味いのぉ?ルイ坊を親だと思っておるぞ」
神獣や魔獣にもすり込みは共通しているので、一度親と認識してしまうとすり込みを消去するのは至難の業だった。
過去にも聖獣の親になってしまった人間がいたが、その人間が平民だった事から相応しくないと権力者が親となった人間を殺そうとしたが、殺そうとした人間だけでなく、国までも滅ぼされかけたらしい。
ちなみにその雛は暗黒竜だったとか。
「下手にお前と引き離せば、わしらの命が危うい」
「は?」
「フレスベルグはかなり気性が荒くてのぉ…地獄の鳴き声で敵を殺すこともできる。死を飲み込む者と言われるだけあって恐ろしいのじゃ」
つまり、そんな厄介な種族の親になったと?
「ちなみに羽ばたけば風が吹き、嵐を呼び、国一つぐらい鎮めるのは簡単じゃ。猛吹雪を起こしたり、後は天変地異に津波を起こせるからのぉ…数多のテイマーが使役しようとして逆に食われとるぞ」
「俺、死ぬじゃないか!」
俺は可愛い物は好きだけど、そんな物騒な魔獣なんて御免だ。
どうせなら小動物の方がずっといいんだけど!
「無理じゃぞ。既に親と認識しているからな」
「死ぬまで、地の果てまでついて行くだろうな」
「いや、死体を巣に運び、骸骨を後生大事にされるじゃろうよ?良かったな」
何所が良いんだ?
良い要素が何処にあるの?
完全にホラーじゃないか。
「あの…お返しするのは?」
「まぁ、フレスベルグは売れるからな?後は首をちょん切って売買されておるぞ?面玉も高値で…」
「やめてぇぇぇ!!」
こんな小さな雛になんてことを!
俺は動物愛好家なんだよ!
特に小さな動物が大好きなんだ!
なのに…
「ピィ?」
こんな愛らしい子に非道な目に合わせるなんてできない!
「北にフレスベルグの群れがいると聞くがな」
「え?」
「あいつ等は基本、群れで動いておる。世界樹から下界を見下ろして生活しているぞ」
それだ!
そうだよ、鳥は群れで生活するものだ。
ならば成体になれば空も飛べるし、仲間の元に帰してあげればいいんじゃない?
今はまだ生まれたてだから身を守ることもできない。
なら、それまでの間だけでも。
「まだこんなに小さいから一人で生きて行くのは難しいもんね」
「ピィ!ピピー!!」
ひとまず里親になることを決めた俺だったが、フレスベルグのよう高位種族の里親になることは何を意味するのか深く考えていなかった。
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