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8.卵と俺
しおりを挟む生誕祭の準備は大掛かりだった。
特に城下町の広場では沢山の飾りつけや、当日の夜には花火を打ち上げることになっている。
パーティーは王宮で行われるが、広場でも庶民たちのパーティーが行われる。
生誕祭はおめでたい行事でもあるが、国民の一番の御祝い事は新たな女王の誕生だろう。
そしてその行事に行事て王女様グッズを売りつけようとする商売人がいる。
リディア王女殿下が身に着けているアクセサリーを真似て作った服飾品を売りつけ一儲けする輩が。
「さぁさぁ、見て行きな!今だけ限定だよ!」
「プリンセスジュエリーだよ!」
「さぁ、早い者勝ちだ!」
市場にて、たたき売りをする三人の老婆。
言うまでもなく、グライアイ姉妹が生誕祭前を狙って商売をしている。
彼女達は職人としても才能があり、生誕祭前を狙って商売をする。
特に中級階級の女性をターゲットに手頃な値段の服飾品を売りさばき儲けようと考えているのだ。
そして俺は――。
「ほらほら、キリキリ働きな!」
ピシャッ!
鞭で叩かれながら馬車馬の如く働かされながら、受付をさせられる。
他にも会計や商品の品出しに、お客様の対応もさせられる。
「やっぱり行事前は財布の紐が緩くなるから儲け時だね」
「キヒヒ、生誕祭前が一番稼げるからね」
「このままバンバン売るよ」
愛想を振りまきながら女性客を標的にしながらあくどい表情をする老婆達に呆れながらも、せっせと働く。
「そこの商品を磨いておいておくれ!」
「あっ…あの、これって」
厳重な宝箱に入っている金品類を見て嫌な予感がした。
「闇市で売買した商品だよ。人間の骸骨で作った杯だ」
「スケルトン達に高値で売りつけるんだよ」
(骸骨が骸骨を買うの!)
理解しにくいけど、俺のように乙女的な趣味も似たような物かと思った。
「あれ?玉子がある」
普通のサイズとは異なり随分と大きな玉子だった。
恐竜の卵のように模様がついている玉子にそっと耳を当てると。
ドクン!
「え?」
卵から脈が聞こえた。
「いやいや、聞き間違いだよな」
もう一度耳を当てると。
ドクン!
ドクン!!
今度は大きな脈が聞こえた。
「えっ…何?」
ドンドン音が多くくなっているよう気がした。
「メェェェ!」
「どうしたの?ロシナンテ」
何故かロシナンテが卵に反応している。
すると卵がピクピク動き始めた。
そして卵の天辺が割れ始め、卵から雛が生まれた。
「ピー?」
手の乗りサイズの雛が顔を出し、俺をじっと見つめたと同時に。
「ピー!!」
「えっ…ちょっ!」
雛は俺にすり寄って来た。
これは?
「おい、ルイ坊や?何をサボっておるんじゃ。早く商品を出さんか…」
「なんじゃ…なっ!」
何故か雛は俺にすり寄って離れなくなってしまった。
しかし、この時俺は気づきもしなかった。
生まれた時から動物に好かれやすい体質と偶然が重なった産物により、人畜無害な生き物と思っていた雛が、実は珍でもない種族だった事に気づくはずもなかった。
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