【本篇完結】無能だと言われて婚約破棄に追放されましたが、女王陛下に見初められました!

ユウ

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4.勘当

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家を出ようと思ってました。


でも――。


「ダメだ」

昼過ぎに帰って来た父上に止められました。
隣で咳き込む母上も厳しい表情をして首を縦に振ることはなかった。

姉上に至っては。

「死にたいようね。散々ルイスから搾取しておいて婚約破棄?追放?ふざけるんじゃないわよ!!」

「待て待て、魔力を発動するな」

「今すぐ灰にしてやるわ!」


俺の想像通り姉上は烈火の如く怒っていた。
唯一の救いは、義兄上が冷静であったことぐらいだと思ったが。


「物的証拠が残るし、生ぬるい…私は、生き地獄を味合わせながらジワジワいたぶりたいのだがな」

いや、最後の頼みの綱である義兄上も援護射撃に回っている始末だ。


「まったく何処までも愚かな…マリエル嬢もだが、婚約者を繋ぎ留められぬとは。お前の落ち度だ」


杖で床を叩きながら厳しい表情をするお祖父様。
我が家ではお祖父様の言葉は絶対でもあり、逆らうことはできなかった。


「お前は何処まで家に泥を塗れば気が済むのだ…ただでさえ加護無しというだけで恥だと言うのに」

「お祖父様!あんまりです」

「アディーレは黙っておれ」

「くっ…」

普段から勝気な姉上でもお祖父様に逆らうことはできなかった。

「婚約破棄の一件は王宮に向かい陛下にお詫びしなくてはならん。お前が王都に向かえ」

「待ちください。王宮でさらし者になさるおつもりですか…そんなことをしたら!」


義兄上が声を荒げて庇おうとしてくださったが…


「これ以上、領地にいさせるわけには行かん。王宮より手紙は来ておる。生誕祭についてじゃ」

差し出された手紙には王族の紋章が描かれていた。

「生誕祭に参加するのがお前の最後の勤めと心得よ」

それはつまり――。


「お義父様、ルイスをフェンネル家から追放なさる気ですか!」

「そうだ。生誕祭が終わり次第…二度と帰って来ることは許さぬ」


有無を許さないと言わんばかりにお祖父様は部屋を出て行き、俺の顔を見ることもなかった。

「そんな…ゲホゲホ!!」

「休んだ方が良い、部屋に…」

父上が母上を支えながら部屋に戻るように告げるも母上は泣きそうな表情をしていた。

お祖父様が一度言ったことは覆すことは不可能だった。
一度領地を出たら二度と帰って来ることはできないだろうし、留まればどうなるか。


「ルイス!」

「荷造りはできていますので」


後ろ髪を引かれる思いだった。
病弱な母に更なる心労を与える俺はなんて親不孝なんだろうか。


「親不孝をお許しください」

「ルイス…」

父上に頭を下げながらどんなお叱りも受けようと思ったが…


「お前は一度でも親不孝をしたことがあるのか?」

「え?」

「私はお前を誇りに思う。誰よりも優しく愛情深いお前を恥じたことは、一度もない」


こんな時まで父上は俺を責めない。
本当なら罵倒されても仕方ない程恥ずかしい息子だっただろうに。

「ありがとうございます。私を今日まで慈しみ育ててくださり、誠にありがとうございます」

「ルイス…」

「母上、どうかお体をお大事に…遠くから祈っております」

これが最後の別れになるかもしれない。
それでも少しでも長く生きて欲しいと願わずにはいられない。





悲しみに暮れながら静かに誰かに見送られることもなく荷物は最小限にして出て行く。



「まぁ、何とかなるか!」

俯くことなく顔を上げながら領地を出て行く俺は思いのほか明るかった。


なんせ俺は――。


「お役目が終わったら趣味に没頭しよう。そして乙男に戻る!」

前世の記憶がある。
前世では成人しており、少しばかり特殊な人種だった。

その名も乙男オトメン
少女趣味を持つ男を意味しているのだ。

小さい頃から花の世話や手芸が好きだった俺は、趣味でハンドメイド作家をしていた。

領地でも俺の趣味で色々作っていた。


だから王都で店を開くのもいいかもしれない。
元は趣味んだったし、特別なスキルはほとんどないが、心強い味方もいるから大丈夫だ。




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