【本篇完結】無能だと言われて婚約破棄に追放されましたが、女王陛下に見初められました!

ユウ

文字の大きさ
上 下
4 / 91

3.お迎え

しおりを挟む



真夜中に森を抜けるのは危険だった。
何故なら魔獣達が人を襲う可能性があるからだ。

ただし、通常ならばだ。


ただし俺は生まれてこの方魔獣に襲われた経験はない。


その理由は――。


「ガウ!」

「メル―!」

前方から現れたのは魔熊で後方から近づくのは。

「モォォォ!!」

魔牛だった。


「ワゥ!」

「モー!」


何故か俺は魔獣かれらから好かれていた。
領地には多くの野生の魔獣が生息しており、祖先はテイマーだった事もある。

魔力はほとんどなく加護無しの俺であるが、領地の仲間達の助けもあり、特に不自由を感じていない。


まぁ、お金はないけど。
食べて行くのには困らないし、俺の趣味で必要なお金は稼いでいる。


「迎えに来てくれたんだね?ありがとう」

「モォォォ!!」

「ビーフン、夜も遅いから静かにしてね」

「ガウ」

「ハニー、眠っている皆を起こさないように頼んだよ」


魔熊のハニーに抱かれながら俺はそのまま、森を抜けて行く。

道中疲れがピークに達していたのかうとうと眠ってしまい、気が付いた頃には自分の部屋のベッドで眠っていた。


「うっ…朝か」

日の光で目を覚ますと枕元にはロシナンテが眠り、床にはビーフンとハニーも眠っている。


「ふわぁー、良く寝た」

カーテンを開けると麗らかな日差しが眩しく感じ、穏やかな朝が訪れた。



はずだった。


「ルイス!」

「あ、オスカー」

侯爵家令息であり、幼馴染で親友でもある。

「こんな朝早くからどうした…いででで!」

前髪を引っ張られる。
いきなり押しかけて来て前髪を引っ張るなんて酷い!


「頭に凍傷の傷跡がある。あのクソ女にまたやられたのか!!」

「ちょっと揺らさないで…うっぷ」

肩を持たれシャッフルされてしまう。
朝食を食べていないから良かったが、吐きそうだ。





「かー!むかつく!不愉快だ」

「そう怒るなよ」

「お前は男の矜持を侮辱されたんだぞ!紐なのは誰だ?遊び歩いて男漁りばかりに精を出しているふしだら女が!一番不愉快なのは母親だ…誰のおかげで不自由ない暮らしができている!誰のおかげで薬草を売れていると思っているんだ!」


朝早くから叫び続けるオスカーを何とか落ち着かせたいが、完全に頭に血が上っているので難しい。


「大体、前ストラス伯爵が生前の時に決められた婚約だろう?婚約の継続を願ったのは誰だ?」

「ストラス伯爵夫人です」

「なのに、恩を仇で返しやがって!大体追放ってなんだ?ストラス領地の半分以上はお前が復興させたのに、何自分の物にしてんだ!散々搾取しておきながら!」


オスカーが言う、ストラス領地の半分が俺の物だと言うのは事実だ。
マリエルの父親の、前ストラス伯爵が存命だった頃は荒地だったが、俺が薬草農園にしたのだ。

他にも荒れているが使えそうな土地を利用して農作物を作り、その土地の手入れを俺に任せると同時に、権利も譲られた。


土地の名義は俺になっているのだが…

「大体今の家だって、前ストラス伯爵がお前に残したんだろう?婿のお前に残せるものが少ないからせめてと」

「そのはずなんだけど」

生存遺言として譲られたはず。
新居となる予定の邸も俺の名義になっているので、所有権は俺にあるはずなんだけど。


きっと、マリエルは自分の物だと思っている。
昔からそうだった。

マリエルの物はマリエルの物。
俺の物もマリエルの物という考えがあってジャイアニズムだったな。


「これからどうするんだ」

「家を出るよ…勘当してもらう」

「は?」

こうなった以上は、実家にも居づらい。
姉上にも迷惑がかかるし、義兄様にも苦労を掛けてしまう。


いや、あの人は構わないと言うけど。
婚約破棄になって追放された俺を傍に置けばどうなるか目に見えている。


「王都で仕事を探してひっそりと静かに過ごすよ」

「お前はまだ隠居する歳じゃない。大体、働き口はあるのか?」

「これでも領地代行を長年務めて来たんだ…何とか生きて行くよ」


姉上のように優れた剣の腕もなければ加護もないけど、生きて行くことはできる。


だから心配ない。

しおりを挟む
感想 143

あなたにおすすめの小説

勇者パーティを追放された聖女ですが、やっと解放されてむしろ感謝します。なのにパーティの人たちが続々と私に助けを求めてくる件。

八木愛里
ファンタジー
聖女のロザリーは戦闘中でも回復魔法が使用できるが、勇者が見目麗しいソニアを新しい聖女として迎え入れた。ソニアからの入れ知恵で、勇者パーティから『役立たず』と侮辱されて、ついに追放されてしまう。 パーティの人間関係に疲れたロザリーは、ソロ冒険者になることを決意。 攻撃魔法の魔道具を求めて魔道具屋に行ったら、店主から才能を認められる。 ロザリーの実力を知らず愚かにも追放した勇者一行は、これまで攻略できたはずの中級のダンジョンでさえ失敗を繰り返し、仲間割れし破滅へ向かっていく。 一方ロザリーは上級の魔物討伐に成功したり、大魔法使いさまと協力して王女を襲ってきた魔獣を倒したり、国の英雄と呼ばれる存在になっていく。 これは真の実力者であるロザリーが、ソロ冒険者としての地位を確立していきながら、残念ながら追いかけてきた魔法使いや女剣士を「虫が良すぎるわ!」と追っ払い、入り浸っている魔道具屋の店主が実は憧れの大魔法使いさまだが、どうしても本人が気づかない話。 ※11話以降から勇者パーティの没落シーンがあります。 ※40話に鬱展開あり。苦手な方は読み飛ばし推奨します。 ※表紙はAIイラストを使用。

この度、猛獣公爵の嫁になりまして~厄介払いされた令嬢は旦那様に溺愛されながら、もふもふ達と楽しくモノづくりライフを送っています~

柚木崎 史乃
ファンタジー
名門伯爵家の次女であるコーデリアは、魔力に恵まれなかったせいで双子の姉であるビクトリアと比較されて育った。 家族から疎まれ虐げられる日々に、コーデリアの心は疲弊し限界を迎えていた。 そんな時、どういうわけか縁談を持ちかけてきた貴族がいた。彼の名はジェイド。社交界では、「猛獣公爵」と呼ばれ恐れられている存在だ。 というのも、ある日を境に文字通り猛獣の姿へと変わってしまったらしいのだ。 けれど、いざ顔を合わせてみると全く怖くないどころか寧ろ優しく紳士で、その姿も動物が好きなコーデリアからすれば思わず触りたくなるほど毛並みの良い愛らしい白熊であった。 そんな彼は月に数回、人の姿に戻る。しかも、本来の姿は類まれな美青年なものだから、コーデリアはその度にたじたじになってしまう。 ジェイド曰くここ数年、公爵領では鉱山から流れてくる瘴気が原因で獣の姿になってしまう奇病が流行っているらしい。 それを知ったコーデリアは、瘴気の影響で不便な生活を強いられている領民たちのために鉱石を使って次々と便利な魔導具を発明していく。 そして、ジェイドからその才能を評価され知らず知らずのうちに溺愛されていくのであった。 一方、コーデリアを厄介払いした家族は悪事が白日のもとに晒された挙句、王家からも見放され窮地に追い込まれていくが……。 これは、虐げられていた才女が嫁ぎ先でその才能を発揮し、周囲の人々に無自覚に愛され幸せになるまでを描いた物語。 他サイトでも掲載中。

「宮廷魔術師の娘の癖に無能すぎる」と婚約破棄され親には出来損ないと言われたが、厄介払いと嫁に出された家はいいところだった

今川幸乃
ファンタジー
魔術の名門オールストン公爵家に生まれたレイラは、武門の名門と呼ばれたオーガスト公爵家の跡取りブランドと婚約させられた。 しかしレイラは魔法をうまく使うことも出来ず、ブランドに一方的に婚約破棄されてしまう。 それを聞いた宮廷魔術師の父はブランドではなくレイラに「出来損ないめ」と激怒し、まるで厄介払いのようにレイノルズ侯爵家という微妙な家に嫁に出されてしまう。夫のロルスは魔術には何の興味もなく、最初は仲も微妙だった。 一方ブランドはベラという魔法がうまい令嬢と婚約し、やはり婚約破棄して良かったと思うのだった。 しかしレイラが魔法を全然使えないのはオールストン家で毎日飲まされていた魔力増加薬が体質に合わず、魔力が暴走してしまうせいだった。 加えて毎日毎晩ずっと勉強や訓練をさせられて常に体調が悪かったことも原因だった。 レイノルズ家でのんびり過ごしていたレイラはやがて自分の真の力に気づいていく。

兄がいるので悪役令嬢にはなりません〜苦労人外交官は鉄壁シスコンガードを突破したい〜

藤也いらいち
恋愛
無能王子の婚約者のラクシフォリア伯爵家令嬢、シャーロット。王子は典型的な無能ムーブの果てにシャーロットにあるはずのない罪を並べ立て婚約破棄を迫る。 __婚約破棄、大歓迎だ。 そこへ、視線で人手も殺せそうな眼をしながらも満面の笑顔のシャーロットの兄が王子を迎え撃った! 勝負は一瞬!王子は場外へ! シスコン兄と無自覚ブラコン妹。 そして、シャーロットに思いを寄せつつ兄に邪魔をされ続ける外交官。妹が好きすぎる侯爵令嬢や商家の才女。 周りを巻き込み、巻き込まれ、果たして、彼らは恋愛と家族愛の違いを理解することができるのか!? 短編 兄がいるので悪役令嬢にはなりません を大幅加筆と修正して連載しています カクヨム、小説家になろうにも掲載しています。

婚約破棄された公爵令嬢は虐げられた国から出ていくことにしました~国から追い出されたのでよその国で竜騎士を目指します~

ヒンメル
ファンタジー
マグナス王国の公爵令嬢マチルダ・スチュアートは他国出身の母の容姿そっくりなためかこの国でうとまれ一人浮いた存在だった。 そんなマチルダが王家主催の夜会にて婚約者である王太子から婚約破棄を告げられ、国外退去を命じられる。 自分と同じ容姿を持つ者のいるであろう国に行けば、目立つこともなく、穏やかに暮らせるのではないかと思うのだった。 マチルダの母の祖国ドラガニアを目指す旅が今始まる――   ※文章を書く練習をしています。誤字脱字や表現のおかしい所などがあったら優しく教えてやってください。    ※第二章まで完結してます。現在、最終章について考え中です(第二章が考えていた話から離れてしまいました(^_^;))  書くスピードが亀より遅いので、お待たせしてすみませんm(__)m    ※小説家になろう様にも投稿しています。

そんなに妹が好きなら死んであげます。

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』 フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。 それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。 そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。 イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。 異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。 何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……

婚約破棄をされ、父に追放まで言われた私は、むしろ喜んで出て行きます! ~家を出る時に一緒に来てくれた執事の溺愛が始まりました~

ゆうき
恋愛
男爵家の次女として生まれたシエルは、姉と妹に比べて平凡だからという理由で、父親や姉妹からバカにされ、虐げられる生活を送っていた。 そんな生活に嫌気がさしたシエルは、とある計画を考えつく。それは、婚約者に社交界で婚約を破棄してもらい、その責任を取って家を出て、自由を手に入れるというものだった。 シエルの専属の執事であるラルフや、幼い頃から実の兄のように親しくしてくれていた婚約者の協力の元、シエルは無事に婚約を破棄され、父親に見捨てられて家を出ることになった。 ラルフも一緒に来てくれることとなり、これで念願の自由を手に入れたシエル。しかし、シエルにはどこにも行くあてはなかった。 それをラルフに伝えると、隣の国にあるラルフの故郷に行こうと提案される。 それを承諾したシエルは、これからの自由で幸せな日々を手に入れられると胸を躍らせていたが、その幸せは家族によって邪魔をされてしまう。 なんと、家族はシエルとラルフを広大な湖に捨て、自らの手を汚さずに二人を亡き者にしようとしていた―― ☆誤字脱字が多いですが、見つけ次第直しますのでご了承ください☆ ☆全文字はだいたい14万文字になっています☆ ☆完結まで予約済みなので、エタることはありません!☆

双子の妹を選んだ婚約者様、貴方に選ばれなかった事に感謝の言葉を送ります

すもも
恋愛
学園の卒業パーティ 人々の中心にいる婚約者ユーリは私を見つけて微笑んだ。 傍らに、私とよく似た顔、背丈、スタイルをした双子の妹エリスを抱き寄せながら。 「セレナ、お前の婚約者と言う立場は今、この瞬間、終わりを迎える」 私セレナが、ユーリの婚約者として過ごした7年間が否定された瞬間だった。

処理中です...