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2.婚約破棄の後に
しおりを挟むパーティーが盛り上がりを見せる最中だった。
「皆様にご報告がございます。今日を持ってルイス・フェンネルとの婚約を破棄し、真の婚約者、キャルドン・カプセルと婚約することになりました」
声高らかに告げた宣言に驚く招待客だった。
対するマリエルは自信満々に告げながら俺を見下し指さした。
「我が伯爵家の金食い虫であるルイス!この場で貴方の悪事を明らかにして差し上げますわ!領地代行でありながら、なんの成果も出せず、我が伯爵家の財産を食いつぶす無駄な薬草を作り続けた罪は軽くなくてよ」
「いや…薬草は」
「お黙りなさい!発言を許した覚えはありませんわ。身の程を弁えなさい。父の遺言故に私はずっと耐えてきました。心を殺し、好きでもない男と結婚して絶望的な未来しか描けないと思ってましたが…キャルがすべてを守ると言ってくれたのです」
なんの茶番劇だ。
確かに、前ストラス伯爵様の遺言で婚約を結ばれたが。
「よって即刻、我が領地から追放します。今すぐ私の目の前から消えなさい!この能無し男」
「二度と私の愛しいマリエルの前に姿を見せないでくれ。君は土いじりが好きなら貧乏領地で死ぬまで花を愛でていればいい…貴族社会では生きられないだろうからね」
誰もが俺をあざ笑っていた。
同席するストラス伯爵夫人も何も言わなかったが視線を逸らせていると言うことはそういうことなのだろう。
「申し訳ありませんが…ルイス様」
「承知しました」
口では申し訳ないといいながらも、内心ではどう思っているのか安易に解る。
だからこれ以上この場にいることはできないと思い、そのままパーティー会場をで言ったが、俺への嫌がらせはこれで終わらなかった。
邸を出ると泥の入ったバケツをひっくり返され泥水を被ってしまう。
「うわぁ、汚いな」
「だがお似合いだろ!あははは」
「泥被り令息ってか!ほら、水をかけてやるよ!」
水の魔法で攻撃され、体が氷のように冷たくなり、その後には風の魔法で攻撃される。
「ドライヤーかけてやるよ!あははは」
「俺達って優しいよな!」
無言で俺はそのまま去って行く、勿論馬車なんて用意されているはずもない。
恐らく彼等が勝手に追い返してしまったのだろう。
この仕打ちを受け、執着する物等ない。
だが、俺がいなくなったら領民はどうなるのだろうか。
俺にそんなことを言う資格はないが、領地代行をしていた俺に仕事を任せきりだったのに大丈夫なのか。
まぁ、新しい婚約者はあそこまで言い切るのだから自信はあるのかもしれない。
邸を出て何処に行こうか。
領地には帰れないし、帰った所で家族に迷惑がかかる。
父は不在で、姉も遠征に向かっている最中。
これ以上家族に迷惑をかけたくない、邸に戻ったら荷造りをして家を出よう。
ひっそり静かに薬草を育てながら生きるのも悪くないかもしれないと思いながら邸を出て行くと、何かが聞こえた。
「ん?この足音は…」
速度が上がり、近づいてきたのは。
「メル!」
見た目は馬でサイズはロバで俺の相棒だった。
「ロシナンテ!」
「メェー!」
鳴き声は羊のようだが、正真正銘の馬だった。
ただし精霊でもあるけど。
「そうか、迎えに来てくれたのか」
「メェェ!!」
一人で帰るはずだったがロシナンテが迎えに来てくれたので少しだけ心強くなった。
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