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靴を脱がされ競技場の前に連れていかれた私は恐ろしい光景を目の当たりにした。



凶暴な牛に囲まれる囚人が怯えていた。



「何よこれ」

「今から見世物になるんだ」


「え?」

答えたのは私を拘束している兵士の一人だった。


牛達は、鎖を解かれるとそのまままっすぐに囚人達の元に走っていく。


大きな角が迫ってくる中、囚人達は必死で逃げる。
その間も牛達は止まることもない。


「闘牛の血を活性化させるための大事な場だ。本番では闘牛が人間を狩る場を賭け事にされている。人が逃げ切れるか、それとも闘牛が殺すか」


「そんな…」

生きるか死ぬかじゃない。
例え生き延びてもその先にあるのは地獄だ。


「とりあえず本番だって生き残った人間は競技場の闘牛の世話係となる。勿論毎日あいつらに狙われる」

「そんな…」


嫌よ。
なんて悪趣味なのよ。


「さぁ、早くお前もこのベルをつけろ」

何より屈辱的なのはカウベルを首につけることだわ。

なんの拷問よ!


「絶対いやよ!」


だけど抵抗してもむなしく、私はカウベルをつけられ他の囚人達と同じような目に…


「「「モォォォ!」」」


「いやぁぁぁ!」


死にたくなければ逃げるしかない。
死ぬか生きるかの瀬戸際で私はとにかく走った。


「あの囚人すごいな」

「逃げているな」

「ああ、角に刺さっても死にはしねぇのにな」

冗談じゃないわ。
死ななくても重傷を負うじゃない。


地面に倒れこむなおかしな連中を見て解らないの?

頭いっちゃっているじゃない!



「何が何で生き延びてやる!」


痛い思いは嫌だけど、あんな廃人のようになるのはもっと嫌だわ。



「モォォォ!」

「牛ごときが私を襲おうなんて許しがたいのよ!」



逃げながら私は地面に落ちているマントを手に取った。


「こうなったらやってやる!」



大きかろうと所詮牛なのだから。
人間様を舐めるんじゃないと思った。


でも…


「ぎゃあああ!」


背後から襲われて壁に激突した。


マタドールのまねごとをしたけど無理だった。


「あいつ、馬鹿だろ」

「こいつらは皆肉食系だからな…マタドールの真似事なんて逆効果だ」



背中に突き刺さる痛みと、全身打撲傷の私は起き上がることができない。

でも、起きないと串刺しにされる。
こんな地獄が続くならば楽に薬で殺してくれた方がずっと幸せだと思いながら何度も続く地獄を味わうのだった。



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