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⑧
しおりを挟む「もう話すだけ無駄ですよ」
「そうですね」
私を見ない二人は、扉の方を見た。
微かに足音が聞こえ、複数の兵士が中に入ってくる。
「院長先生、シスターガーナ」
兵士の一人が院長と修道女に何かを言っていた。
「ではよろしいですね」
「はい、彼女をお連れください。更生の見込みはありません」
他の兵士が私の腕を強くつかみ無理やり立たせた。
「痛い!」
「早く立て!」
乱暴な扱いに誰も注意しない。
院長は私と目を合わせることはなかった。
「ちょっ…むが!」
文句を言おうとするも口に石を放り込まれ、その上から布をかぶされる。
「もーもごもご!もー!」
言葉を話すことができない。
「大人しくしろ。既に貴様に抵抗することは許されない…暴れるならば多少の手荒な真似も許される」
そんなのあんまりだわ。
これじゃ家畜と同じ扱いじゃない!
体を拘束されて口をふさがれ、少し暴れたら暴行を与えられるなんてひど過ぎる。
「もう二度と会うことはないわ。元気で過ごしな…人間としての尊厳はないけど」
この女!
今すぐ殴ってやる!
「さぁ、早くお連れください」
「はい、失礼いたします」
丁寧に敬礼をして私はそのまま連行され、牢馬車に乗せられた。
何を言っても誰も聞かない。
聞いてくれなかった。
身動きが取れない私は暴れるしかなかった。
嫌よ。
北の最果てになんて行きたくない。
そこでどんな扱いを受けるか解らないけど最悪な環境であることは解った。
お願い助けて!
謝るから、反省するから許して!
暴れまわり柵に向かって体当たりをするとガーナとかいう修道女が私の元に近づいてきた。
「シスター!なりません!」
「いいんですよ」
私のすぐそばに来て…
「いい気味だよサンディ…堕ちる所まで落ちて最後は一人で死ねばいいんだよ」
他の兵士には見えないようにガーナは告げた。
「シナリオ通りにアンタは踊ってくれた…アンタを地獄に叩き落すためにお嬢様の読みは当たったね」
何ですって?
お嬢様って…まさか。
あの生意気な貴族の…
「アンタを一番最悪な形で北の最果てに行かせるには、アンタに一人で踊ってもらう必要があった。私はその昔アンタの所為で大事な人を傷つけられ人生を奪われたんだよ…だからお返しだ」
裏ですべてあの我儘お嬢様が仕組んでいた?
そしてこの女も…
「だけど訂正してやるよ。院長先生と他の修道女は善意でアンタを守ろうとしたんだ」
そんな言葉を聞いてもなんとも思わなかった。
あるのは絶望だけだった。
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