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⑥
しおりを挟むどうして世界は私に優しくないの?
何もかも上手く行かない。
「何でよ…何で私ばっかり不幸なの!どうして幸せになれないのよ!」
私は生まれた時から優秀な子供だった。
選ばれた存在だったはずなのに、何所で間違えたというの?
「何で…どうしてよ!」
嘆く私に周りは何も言わない。
僅かな時間静まり返る中、私を見下す声が聞こえた。
「馬鹿じゃないの」
「ガーナ!」
「アンタ、悲劇のお姫様ぶって馬鹿だろ?こんな簡単な方程式も解けないわけ?」
同情するでもなく、怒るでもなく。
私に向けられた視線は軽蔑だけだった。
「鏡に向かって毎日自分は不幸だって言ってんの?馬鹿だろ…世の中アンタより不幸な人間はごまんといるんだよ!生まれた環境が違うだけで貧乏くじ引く人間がね!」
「ガーナ…もう止めましょう」
「いいや、これは世の中舐め腐ってんだよ!誰からも手を差し伸べてもらえて当然。優しくされて当然というのは間違いだ…アンタは不幸じゃない!」
「嘘よ…こんな不幸なことがあるわけないわ。今の生活は地獄だわ」
こんな汚い服装で毎日労働を強いられ、挙句の果てに聖職者に説教される日々。
孤児院で子供の面倒を見させられるなんて。
「アンタ、一度でも院長先生に感謝をしたことある?」
「何で感謝しないといけないのよ!こんなクソ…きゃあ!」
乾いた音が響く。
「もう一度言ったらその顔をへこますよ。二度と院長先生を侮辱するんじゃない」
「ガーナ、もういいのです」
「良くありませんよ。確かに貴女は口うるさい婆さんです。頭が固くて融通が利かなくてガミガミで梅干し婆さんですけど」
何よ、あんたもそう思っているんじゃない!
「でも、誰よりも愛情深い聖母なんだよ!」
「は?」
こんな醜い老婆が聖母?
「人のために尽くし、人を愛する院長先生は聖母だ。私はこの世に、慈母神がいるなら婆さんのような女神だね!院長先生のようにね!」
「これは喜ぶべきなのでしょうか…神に対しても無礼な気が」
「院長様!ガーナは院長様を女神さまよりも尊い存在だと言っております」
「言い方が少し…ですが、私達修道院の修道女は同じ気持ちです」
意味が解らない。
この老婆が女神よりも美しい?
頭がおかしいんじゃなの?
「アンタは院長先生がいなかったら収容所に近い施設に放り込まれるはずだったんだ…それを!」
「何よそれ…人権の侵害じゃない!」
私がそんな施設に入れられるはずだった?
許されるはずがない。
そんな扱いは!
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