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④
しおりを挟む午前中から重労働を強いられ、その合間に孤児の面倒を見るように言われ私は精神的にも肉体的にも限界だった。
「おばさん」
「誰がおばさんよ」
「だっておばさんじゃん」
生まれが卑しいからなのか教養がまるでないクソガキは口の利き方も解ってない。
私にむかっておばさんだなんて。
「だって他のシスターはお肌綺麗だけど、おばさんカサカサだし…なんか臭いし」
「それに目が死んだ魚のようだし…おばさん病気なの?」
「おばさん、飴あげるよ?」
貶されるよりも屈辱的なのはこんなクソガキに施しを受けるなんて最悪だわ。
「ああ…なんて優しい子たちなの」
「辛い環境でも人を思いやる心を持っているなんて」
「本当にね?心が現れるわ…ほら受け取りなさいよ」
冗談じゃないわ。
ここでこんな得体知れない飴を受け取りたくないわ。
「おばちゃん、どうしたの」
「だから!」
私はおばちゃんじゃないと言おうとしたのだけど。
「何をしているのです」
「どうなさいました皆さん」
エプロン姿の院長と元姑が現れた。
「仕事はまだまだあるのですよ?遊んでいる時間は…」
「違うんです院長先生!子供たちがサンディに救いの手を差し伸べていたのです」
「素晴らしいことです。子供たちは弱い人への慈しみをちゃんと持っていて、自分より不幸な人に…」
この女、本当に私を馬鹿にしているんじゃないか?
絶対に私を馬鹿にするためにわざとだと思わざるを得ないわ。
もし無自覚だったらこれ以上ない程質が悪いわ!
「お菓子なんてほとんどもらえないのに、サンディに差し出したんです」
「まぁ…そうだったのですか」
しかも院長は涙を流しハンカチで拭いている。
馬鹿でしょ?
本当に馬鹿しかいないわ!
「子供達は罪人に慈悲の心を持って接するとは…」
罪人を強調する院長に悪意を感じるわ。
「さぁ、サンディ…」
「いらないわよ!」
差し出された飴を拒絶し子供の手をはたくと飴は地面に落ちて私はそれを踏んだ。
「こんなもの」
私がこんな汚い子供に施しを受けるなんてありえないのだから。
そのまま背を向けようとすると…
「ふっ…ふぇぇぇえん!」
「びぇぇぇん!」
飴を差し出した子供が泣き出し、つられるように傍にいた子供も泣く始末だった。
「うるさっ!」
耳を塞ぎながらその場から離れようとしたが首元を掴まれる。
「ぐぇ!」
「アンタ!なんてことしてんのよ」
不良修道女に首根っこを掴まれそのまま引きずられてしまった。
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