155 / 169
⑥
しおりを挟む「本当にくだらない男」
蔑むような発言と僕をゴミ以下だと言わんばかりの言葉にいらだつ。
「身の程を弁えない馬鹿な男。こんな男死んでしまった方がいいのに」
「何を…」
「リサ先生は優しすぎるのよ。好きでもない男と無理やり結婚させられ尊厳を奪われ。体を汚されて…真に愛する人と生きることも諦めて」
真に愛するのは僕だろう?
第一、僕達の結婚は無理やりってどういうことだ。
「何を言っているんだ。僕は望まれて…」
「ふっ…アハハハ!何を言っているの?ありえないわ」
「そっちこそ何を言っているんだ!」
もしここに僕を拘束する連中とガラスの壁がなかったら抑え込んでいるだろう。
それだけの屈辱をされたのだ。
「まだ知らないのね?教えてあげる…リサ先生に嫉妬する醜い夫人が無理やり縁談を結んだのよ。年頃なのに結婚していないなんて外聞が悪いとか色々あることないことを吹き込んでね!」
「そんな!嘘だ!」
だって…
それじゃあリサは僕を愛していなかったのか?
僕は望まれて婚約をして結婚していたんだから。
「叔父様の妻、もしくは愛人の座を狙っていた男爵夫人は適当な男をリサ先生にあてがった…特に女性を復習したがる馬鹿な男をね」
「そんな…」
僕達の結婚の仲介人をしてくれた男爵夫人がそんなことを。
「面倒な姑は、嫁を支配したがっていた…しかもリサ先生のご両親は商人として成功しているからお金があるわ」
「違う…」
「結果、しょうもない出来損ないの男は聡明な妻のおかげで世間からの風当たりは良かった。くだらない事業に手を出した馬鹿な舅と姑もいい暮らしができたもの」
「違う違う!」
「全部リサ先生のおかげ。なのにお前はリサ先生が優秀なのが気に入らなかった…そして有頂天になったお前はリサ先生の功績を自分の力だと思った」
「僕は優秀で…それにリサは子もできない」
「子供が出いないのは、お前の母親が薬を盛っていたからよ」
「何だって!」
薬ってどういうことだ?
母さんがリサに薬を盛っていたなんて…
「同居を開始したころからね…血液を検査で毒が検出されたわ。薬の出どころも解っている…リサ先生は妊娠しにくい体なんかじゃない」
「違う!リサは子を身ごもれなくて…」
「それこそありえないのよ。現に子を身ごもっているのだから」
「は?」
「リサ先生は妊娠しているわ」
僕と結婚して一度も子を身ごもらなかったのに。
「叔父様とリサ先生は結婚してすぐ身ごもった…それはお前に問題があるから」
「嘘だ嘘だ…うわぁぁあ!」
これ以上聞きたくない。
僕に問題があった?
子供ができないのはずっとリサの所為だと思った。
子供ができない欠陥だらけの女を僕は優しく見守っている理想的な夫だと思いたかったんだ。
既にズタボロな僕だったが、悪魔のようなお嬢様は足りなかったようだ。
1,266
お気に入りに追加
5,331
あなたにおすすめの小説
自分勝手な側妃を見習えとおっしゃったのですから、わたくしの望む未来を手にすると決めました。
Mayoi
恋愛
国王キングズリーの寵愛を受ける側妃メラニー。
二人から見下される正妃クローディア。
正妃として国王に苦言を呈すれば嫉妬だと言われ、逆に側妃を見習うように言わる始末。
国王であるキングズリーがそう言ったのだからクローディアも決心する。
クローディアは自らの望む未来を手にすべく、密かに手を回す。
皆さん勘違いなさっているようですが、この家の当主はわたしです。
和泉 凪紗
恋愛
侯爵家の後継者であるリアーネは父親に呼びされる。
「次期当主はエリザベスにしようと思う」
父親は腹違いの姉であるエリザベスを次期当主に指名してきた。理由はリアーネの婚約者であるリンハルトがエリザベスと結婚するから。
リンハルトは侯爵家に婿に入ることになっていた。
「エリザベスとリンハルト殿が一緒になりたいそうだ。エリザベスはちょうど適齢期だし、二人が思い合っているなら結婚させたい。急に婚約者がいなくなってリアーネも不安だろうが、適齢期までまだ時間はある。お前にふさわしい結婚相手を見つけるから安心しなさい。エリザベスの結婚が決まったのだ。こんなにめでたいことはないだろう?」
破談になってめでたいことなんてないと思いますけど?
婚約破棄になるのは構いませんが、この家を渡すつもりはありません。
離婚したらどうなるのか理解していない夫に、笑顔で離婚を告げました。
Mayoi
恋愛
実家の財政事情が悪化したことでマティルダは夫のクレイグに相談を持ち掛けた。
ところがクレイグは過剰に反応し、利用価値がなくなったからと離婚すると言い出した。
なぜ財政事情が悪化していたのか、マティルダの実家を失うことが何を意味するのか、クレイグは何も知らなかった。
酷い扱いを受けていたと気付いたので黙って家を出たら、家族が大変なことになったみたいです
柚木ゆず
恋愛
――わたしは、家族に尽くすために生まれてきた存在――。
子爵家の次女ベネディクトは幼い頃から家族にそう思い込まされていて、父と母と姉の幸せのために身を削る日々を送っていました。
ですがひょんなことからベネディクトは『思い込まれている』と気付き、こんな場所に居てはいけないとコッソリお屋敷を去りました。
それによって、ベネディクトは幸せな人生を歩み始めることになり――反対に3人は、不幸に満ちた人生を歩み始めることとなるのでした。
【完結】側妃は愛されるのをやめました
なか
恋愛
「君ではなく、彼女を正妃とする」
私は、貴方のためにこの国へと貢献してきた自負がある。
なのに……彼は。
「だが僕は、ラテシアを見捨てはしない。これから君には側妃になってもらうよ」
私のため。
そんな建前で……側妃へと下げる宣言をするのだ。
このような侮辱、恥を受けてなお……正妃を求めて抗議するか?
否。
そのような恥を晒す気は無い。
「承知いたしました。セリム陛下……私は側妃を受け入れます」
側妃を受けいれた私は、呼吸を挟まずに言葉を続ける。
今しがた決めた、たった一つの決意を込めて。
「ですが陛下。私はもう貴方を支える気はありません」
これから私は、『捨てられた妃』という汚名でなく、彼を『捨てた妃』となるために。
華々しく、私の人生を謳歌しよう。
全ては、廃妃となるために。
◇◇◇
設定はゆるめです。
読んでくださると嬉しいです!
平民の娘だから婚約者を譲れって? 別にいいですけど本当によろしいのですか?
和泉 凪紗
恋愛
「お父様。私、アルフレッド様と結婚したいです。お姉様より私の方がお似合いだと思いませんか?」
腹違いの妹のマリアは私の婚約者と結婚したいそうだ。私は平民の娘だから譲るのが当然らしい。
マリアと義母は私のことを『平民の娘』だといつも見下し、嫌がらせばかり。
婚約者には何の思い入れもないので別にいいですけど、本当によろしいのですか?
アリシアの恋は終わったのです【完結】
ことりちゃん
恋愛
昼休みの廊下で、アリシアはずっとずっと大好きだったマークから、いきなり頬を引っ叩かれた。
その瞬間、アリシアの恋は終わりを迎えた。
そこから長年の虚しい片想いに別れを告げ、新しい道へと歩き出すアリシア。
反対に、後になってアリシアの想いに触れ、遅すぎる行動に出るマーク。
案外吹っ切れて楽しく過ごす女子と、どうしようもなく後悔する残念な男子のお話です。
ーーーーー
12話で完結します。
よろしくお願いします(´∀`)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる