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⑤
しおりを挟む目の前に現れたのは以前よりも少し雰囲気が変わった我儘なお嬢様だった。
「本当によろしいのですか、侯爵夫人」
「ええ…」
侯爵夫人だと!
あの生意気なクソガキが!
「何故お前が…」
「貴様!」
「ぐぁ!」
ガラスの壁に叩きつけられる。
「無礼者めが!この方は何方と思っている!」
「皇帝陛下の甥君の奥方だぞ!」
そんな…
あんなクソガキがありえない。
「本当に学習能力のない男。そこの貴方、手を離してくださる?」
「しかし…」
「これは命令よ」
「ハッ!」
こんな子供に命令されて従うなんて馬鹿だろ。
どんなに身分が高かろうが所詮は侯爵家のお情けだろう。
叔父が伯爵家で親が既に他界しているというのは聞いている。
なのに偉そうに。
貴族の妻なんて所詮は飾りだ。
「本当に身の程知らずな男。こんな男にリサ叔母様が長い間虐げられたと思うと不愉快だわ」
「叔母?何を言っている…もうあの女は」
パチン!
扇を閉じる音が聞こえた瞬間。
腹を鞭で叩かれる。
「あああ!」
「言葉にお気をつけなさいな。今牢屋でそれなりの暮らしができるのはリサ叔母様のお情けです。本体なら極刑にしてやるところを。あの方はお前に罪を償うことを望んでいたのだから」
「何が罪だ…僕はあの女を妻にしてやったんだ」
感謝されるべきだというのに何様だ。
「何所までも愚かな事。お前は一週間後島流しになるわ」
「一週間?」
「ええ、牢屋でただ飯を食べるのは終わり。税金の無駄ですもの…新しい地では食事はでるけど、ここよりももっと酷く、気候も悲惨よ」
「なっ…ここよりも!」
「あら?基本、罪人にとって牢獄は天国よ。兵の中なら命の安全も保障されているのだから」
罪人にとって天国?
朝早くからたたき起こされて、お祈りをさせられ、その後は畑仕事なのに。
「重労働と言ってもマシですわ。朝から晩まで鉱山で労働を強いられたり、人間以下の扱いを受けるわけではないのだから。でも外に出れば悪意がお前を襲うわ」
「悪意…」
「裁判の記事は国中…いいえ、国外にも流れているわ」
そんな…
僕が悪役に仕立て上げられた裁判は王都だけではないということなのか。
「だが…そんなの!」
「お前が送られる地は、ここからずっと西にある領地に変更になりました。男尊女卑のお前には女尊男卑の領地がお似合いよ」
「なっ!」
「そこで自分が今までどれだけ酷いことをしたか思い知りなさい」
この僕が女にこき使われる?
女なんかに?
そんな屈辱耐えられない!
なのに我儘お嬢様は更に残酷な現実を僕に教えた。
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