154 / 169
⑤
しおりを挟む目の前に現れたのは以前よりも少し雰囲気が変わった我儘なお嬢様だった。
「本当によろしいのですか、侯爵夫人」
「ええ…」
侯爵夫人だと!
あの生意気なクソガキが!
「何故お前が…」
「貴様!」
「ぐぁ!」
ガラスの壁に叩きつけられる。
「無礼者めが!この方は何方と思っている!」
「皇帝陛下の甥君の奥方だぞ!」
そんな…
あんなクソガキがありえない。
「本当に学習能力のない男。そこの貴方、手を離してくださる?」
「しかし…」
「これは命令よ」
「ハッ!」
こんな子供に命令されて従うなんて馬鹿だろ。
どんなに身分が高かろうが所詮は侯爵家のお情けだろう。
叔父が伯爵家で親が既に他界しているというのは聞いている。
なのに偉そうに。
貴族の妻なんて所詮は飾りだ。
「本当に身の程知らずな男。こんな男にリサ叔母様が長い間虐げられたと思うと不愉快だわ」
「叔母?何を言っている…もうあの女は」
パチン!
扇を閉じる音が聞こえた瞬間。
腹を鞭で叩かれる。
「あああ!」
「言葉にお気をつけなさいな。今牢屋でそれなりの暮らしができるのはリサ叔母様のお情けです。本体なら極刑にしてやるところを。あの方はお前に罪を償うことを望んでいたのだから」
「何が罪だ…僕はあの女を妻にしてやったんだ」
感謝されるべきだというのに何様だ。
「何所までも愚かな事。お前は一週間後島流しになるわ」
「一週間?」
「ええ、牢屋でただ飯を食べるのは終わり。税金の無駄ですもの…新しい地では食事はでるけど、ここよりももっと酷く、気候も悲惨よ」
「なっ…ここよりも!」
「あら?基本、罪人にとって牢獄は天国よ。兵の中なら命の安全も保障されているのだから」
罪人にとって天国?
朝早くからたたき起こされて、お祈りをさせられ、その後は畑仕事なのに。
「重労働と言ってもマシですわ。朝から晩まで鉱山で労働を強いられたり、人間以下の扱いを受けるわけではないのだから。でも外に出れば悪意がお前を襲うわ」
「悪意…」
「裁判の記事は国中…いいえ、国外にも流れているわ」
そんな…
僕が悪役に仕立て上げられた裁判は王都だけではないということなのか。
「だが…そんなの!」
「お前が送られる地は、ここからずっと西にある領地に変更になりました。男尊女卑のお前には女尊男卑の領地がお似合いよ」
「なっ!」
「そこで自分が今までどれだけ酷いことをしたか思い知りなさい」
この僕が女にこき使われる?
女なんかに?
そんな屈辱耐えられない!
なのに我儘お嬢様は更に残酷な現実を僕に教えた。
1,243
お気に入りに追加
5,151
あなたにおすすめの小説

自分勝手な側妃を見習えとおっしゃったのですから、わたくしの望む未来を手にすると決めました。
Mayoi
恋愛
国王キングズリーの寵愛を受ける側妃メラニー。
二人から見下される正妃クローディア。
正妃として国王に苦言を呈すれば嫉妬だと言われ、逆に側妃を見習うように言わる始末。
国王であるキングズリーがそう言ったのだからクローディアも決心する。
クローディアは自らの望む未来を手にすべく、密かに手を回す。

家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。

【完結】妹が私の婚約者から好意を抱かれていると言いましたけど、それだけは絶対にあり得ませんから
白草まる
恋愛
シルビアとセリアの姉妹はルーファスと幼馴染であり、家族ぐるみの付き合いが続いていた。
やがてルーファスとシルビアは婚約を結び、それでも変わらない関係が続いていた。
しかし、セリアが急に言い出したのだ。
「私、よく考えてみたのですけど……ルーファス様、私のことが好きですよね?」

正妃である私を追い出し、王子は平民の女性と結婚してしまいました。…ですが、後になって後悔してももう遅いですよ?
久遠りも
恋愛
正妃である私を追い出し、王子は平民の女性と結婚してしまいました。…ですが、後になって後悔してももう遅いですよ?
※一話完結です。
ゆるゆる設定です。

妹に婚約者を奪われたので妹の服を全部売りさばくことに決めました
常野夏子
恋愛
婚約者フレデリックを妹ジェシカに奪われたクラリッサ。
裏切りに打ちひしがれるも、やがて復讐を決意する。
ジェシカが莫大な資金を投じて集めた高級服の数々――それを全て売りさばき、彼女の誇りを粉々に砕くのだ。
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。

だってお義姉様が
砂月ちゃん
恋愛
『だってお義姉様が…… 』『いつもお屋敷でお義姉様にいじめられているの!』と言って、高位貴族令息達に助けを求めて来た可憐な伯爵令嬢。
ところが正義感あふれる彼らが、その意地悪な義姉に会いに行ってみると……
他サイトでも掲載中。

溺愛されている妹がお父様の子ではないと密告したら立場が逆転しました。ただお父様の溺愛なんて私には必要ありません。
木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるレフティアの日常は、父親の再婚によって大きく変わることになった。
妾だった継母やその娘である妹は、レフティアのことを疎んでおり、父親はそんな二人を贔屓していた。故にレフティアは、苦しい生活を送ることになったのである。
しかし彼女は、ある時とある事実を知ることになった。
父親が溺愛している妹が、彼と血が繋がっていなかったのである。
レフティアは、その事実を父親に密告した。すると調査が行われて、それが事実であることが判明したのである。
その結果、父親は継母と妹を排斥して、レフティアに愛情を注ぐようになった。
だが、レフティアにとってそんなものは必要なかった。継母や妹ともに自分を虐げていた父親も、彼女にとっては排除するべき対象だったのである。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる