152 / 169
③
しおりを挟むここにいる連中は外の情報はほとんど入らないから何が真実か偽りか解らないんだ。
僕は新聞に書かれている程の事をしたのか?
ミレイを放置したことは虐待と言われるのは今なら理解できる。
でも、そもそもの原因は姉さんで。
赤ん坊をどうしていいか解らないんだし、第一子育ては女の仕事だろ?
男がするものじゃないんだ。
なのに裁判でもさも僕が悪いように言われ。
リサだってそこまで僕を憎んでいるわけじゃない。
だから裁判にでなかったんだ。
なのにあんまりじゃないか!
「おっ…二人のお通りだぜ」
「おい、何俯いてんだ。見ないと損だぜ?」
空気が読めない爺が僕の背中を押した。
すると大通りには立派な馬車が通っている。
皇族が婚礼時に使う馬車で、まるで皇帝と皇妃の結婚式パレードかと思う程の豪華さだった。
「何だ…あれは」
「通常ならまずないが、お相手が先帝陛下の腹心の家臣であり、甥だしな」
「周りも許すよな…つーか、護衛騎士は近衛騎士ってどうなんだ」
「いんじゃないか」
近衛騎士だと!
王族や皇族以外は護衛につかないんじゃないのか?
「馬鹿な…相手は貴族ではないのに」
「お前馬鹿だと思ったが、物を知らねぇんだな」
こんな馬鹿な爺に言われたくない!
「貴族じゃなくても皇妃になった前例はある。皇后だってな」
「それに、伯爵の奥方なら問題ないだろ?先手陛下が許可しているなら」
「だな!身分至上主義なんて時代錯誤だ…にしても奥方は美しいな」
「あれで平民って嘘だろ?貴族のお嬢様にしか見えないぞ」
揃ってリサを褒めちぎるクソ爺達にイライラする。
「ふざけるな。あれは僕の…」
元妻だって言おうとしたが、最後まで言えなかった。
「おい、無礼なことを言うなよ」
「聞こえたら不敬罪になるだろうが」
「本当に非常識な男だな。親の顔が見てみたいぜ」
「やめておけよ。こんな教養のない男はきっと孤児で情夫だったんだぜ」
口をふさがれて違うと言えなかった。
暴れてもどこにそんな力があるのか解らない。
爺の癖に!
「おお、キスするぞ」
「いいねぇ、若いって…記者の前でサービスか」
「ヒューヒュー!」
うざい…
限りなくうざくて仕方ない。
この後見たくもない光景を強制的に見せられ、屈辱の四時間を過ごした。
日が暮れた頃に船が出て夜の花火に爺達は再びわけのわからないことを離され、町でのお祭りモードは一週間続いたのだった。
…が、僕の地獄はここで終わらなかった。
1,179
お気に入りに追加
5,423
あなたにおすすめの小説
婚約者が私以外の人と勝手に結婚したので黙って逃げてやりました〜某国の王子と珍獣ミミルキーを愛でます〜
平川
恋愛
侯爵家の莫大な借金を黒字に塗り替え事業を成功させ続ける才女コリーン。
だが愛する婚約者の為にと寝る間を惜しむほど侯爵家を支えてきたのにも関わらず知らぬ間に裏切られた彼女は一人、誰にも何も告げずに屋敷を飛び出した。
流れ流れて辿り着いたのは獣人が治めるバムダ王国。珍獣ミミルキーが生息するマサラヤマン島でこの国の第一王子ウィンダムに偶然出会い、強引に王宮に連れ去られミミルキーの生態調査に参加する事に!?
魔法使いのウィンロードである王子に溺愛され珍獣に癒されたコリーンは少しずつ自分を取り戻していく。
そして追い掛けて来た元婚約者に対して少女であった彼女が最後に出した答えとは…?
完結済全6話
平民の娘だから婚約者を譲れって? 別にいいですけど本当によろしいのですか?
和泉 凪紗
恋愛
「お父様。私、アルフレッド様と結婚したいです。お姉様より私の方がお似合いだと思いませんか?」
腹違いの妹のマリアは私の婚約者と結婚したいそうだ。私は平民の娘だから譲るのが当然らしい。
マリアと義母は私のことを『平民の娘』だといつも見下し、嫌がらせばかり。
婚約者には何の思い入れもないので別にいいですけど、本当によろしいのですか?
あなたの嫉妬なんて知らない
abang
恋愛
「あなたが尻軽だとは知らなかったな」
「あ、そう。誰を信じるかは自由よ。じゃあ、終わりって事でいいのね」
「は……終わりだなんて、」
「こんな所にいらしたのね!お二人とも……皆探していましたよ……
"今日の主役が二人も抜けては"」
婚約パーティーの夜だった。
愛おしい恋人に「尻軽」だと身に覚えのない事で罵られたのは。
長年の恋人の言葉よりもあざとい秘書官の言葉を信頼する近頃の彼にどれほど傷ついただろう。
「はー、もういいわ」
皇帝という立場の恋人は、仕事仲間である優秀な秘書官を信頼していた。
彼女の言葉を信じて私に婚約パーティーの日に「尻軽」だと言った彼。
「公女様は、退屈な方ですね」そういって耳元で嘲笑った秘書官。
だから私は悪女になった。
「しつこいわね、見て分かんないの?貴方とは終わったの」
洗練された公女の所作に、恵まれた女性の魅力に、高貴な家門の名に、男女問わず皆が魅了される。
「貴女は、俺の婚約者だろう!」
「これを見ても?貴方の言ったとおり"尻軽"に振る舞ったのだけど、思いの他皆にモテているの。感謝するわ」
「ダリア!いい加減に……」
嫉妬に燃える皇帝はダリアの新しい恋を次々と邪魔して……?
【完結】契約妻の小さな復讐
紺
恋愛
「余計な事をせず、ただ3年間だけ僕の妻でいればいい」
借金の肩代わりで伯爵家に嫁いだクロエは夫であるジュライアに結婚初日そう告げられる。彼には兼ねてから愛し合っていた娼婦がいて、彼女の奉公が終わるまでの3年間だけクロエを妻として迎えようとしていた。
身勝手でお馬鹿な旦那様、この3年分の恨みはちゃんと晴らさせて貰います。
※誤字脱字はご了承下さい。
タイトルに※が付いているものは性描写があります。ご注意下さい。
だってお義姉様が
砂月ちゃん
恋愛
『だってお義姉様が…… 』『いつもお屋敷でお義姉様にいじめられているの!』と言って、高位貴族令息達に助けを求めて来た可憐な伯爵令嬢。
ところが正義感あふれる彼らが、その意地悪な義姉に会いに行ってみると……
他サイトでも掲載中。
悪役令嬢が残した破滅の種
八代奏多
恋愛
妹を虐げていると噂されていた公爵令嬢のクラウディア。
そんな彼女が婚約破棄され国外追放になった。
その事実に彼女を疎ましく思っていた周囲の人々は喜んだ。
しかし、その日を境に色々なことが上手く回らなくなる。
断罪した者は次々にこう口にした。
「どうか戻ってきてください」
しかし、クラウディアは既に隣国に心地よい居場所を得ていて、戻る気は全く無かった。
何も知らずに私欲のまま断罪した者達が、破滅へと向かうお話し。
※小説家になろう様でも連載中です。
9/27 HOTランキング1位、日間小説ランキング3位に掲載されました。ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる