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②
しおりを挟む窓から聞こえるパレードの音。
空に花火が上がる音も耳障りで仕方なかったが、何より不快なのは外でおめでたモード全開なのがだ。
僕はこんなにつらい思いをしているのに。
「今日は皇族の結婚式だったらな。海上で盛大な披露宴がされるそうだぜ」
「すげぇな」
「ここ何年かは皇族におめでたがなかったからな」
何がめでたいんだ。
クソ爺達はワインとハムを食べながら嬉しそうにしている。
「俺達のような罪人でも特別の配慮でワインとごちそうを振舞ってくれるんだから、器の大きさが違うよな。伯爵様は」
「ああ…お相手は平民のお嬢さんだっていうんだからよ」
皇族の貴族の相手が平民?
何所の酔狂な男だ。
馬鹿ではないか?
皇族と言えど、余程馬鹿なのかと思いながら見せられた。
「その相手がまた若いな…新聞に出ているな」
「まだ若くて美人だそうだぜ」
見せられた新聞に映るのはあの性悪な男と、リサだった。
「なっ…」
「お前も驚いたか。これでバツ一なんて驚きだな…」
「真実の愛で結ばれた二人のラブストーリーだとよ」
新聞には不愉快極まりない内容が書かれていた。
身分違いの恋をした二人は結婚を許されず、周りに反対され女は理不尽な婚姻を強いられる。
それでも健気に夫に尽くし、嫁ぎ先にもなじもうと努力するが、夫は妻を奴隷のように使い、稼いだお金を追いはぎのように奪いながら耐える日々。
挙句の果てには同居を命じられ、義実家にこき使われ、姪の世話をさせられる中子供ができないから代わりをさせてやっていると恩着せがましい真似をされながら耐える日々。
しかしそんな酷い境遇を見かねた伯爵は、愛する人を守る為に行動を起こす。
虐げられた妻は離縁を決意するも、元夫は妻との離縁を拒み、あることないこと吹聴し、元妻の両親にも嫌がらせをして裁判にまで発展したが、伯爵との愛は深まり絆を強め最後は真実の愛が勝ち取るだと!
何だこの記事は…
「そういや小説も出ていたんだよな。俺…頼んで回してもらってんだ」
「ここは娯楽が救ねぇからな。本を無償で寄付してくれた貴族様に感謝だな」
そういいながら見せたのはシリーズになっている小説だった。
表紙はまんまリサだ。
裏の表紙にはズタボロの服の僕に似た男が書かれている。
これは一種の嫌がらせじゃないか!
ありえない!
こんなの認められるか!
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