上 下
151 / 169

しおりを挟む




窓から聞こえるパレードの音。
空に花火が上がる音も耳障りで仕方なかったが、何より不快なのは外でおめでたモード全開なのがだ。


僕はこんなにつらい思いをしているのに。


「今日は皇族の結婚式だったらな。海上で盛大な披露宴がされるそうだぜ」

「すげぇな」

「ここ何年かは皇族におめでたがなかったからな」


何がめでたいんだ。
クソ爺達はワインとハムを食べながら嬉しそうにしている。


「俺達のような罪人でも特別の配慮でワインとごちそうを振舞ってくれるんだから、器の大きさが違うよな。伯爵様は」

「ああ…お相手は平民のお嬢さんだっていうんだからよ」


皇族の貴族の相手が平民?

何所の酔狂な男だ。
馬鹿ではないか?


皇族と言えど、余程馬鹿なのかと思いながら見せられた。

「その相手がまた若いな…新聞に出ているな」

「まだ若くて美人だそうだぜ」


見せられた新聞に映るのはあの性悪な男と、リサだった。


「なっ…」


「お前も驚いたか。これでバツ一なんて驚きだな…」


「真実の愛で結ばれた二人のラブストーリーだとよ」


新聞には不愉快極まりない内容が書かれていた。


身分違いの恋をした二人は結婚を許されず、周りに反対され女は理不尽な婚姻を強いられる。
それでも健気に夫に尽くし、嫁ぎ先にもなじもうと努力するが、夫は妻を奴隷のように使い、稼いだお金を追いはぎのように奪いながら耐える日々。


挙句の果てには同居を命じられ、義実家にこき使われ、姪の世話をさせられる中子供ができないから代わりをさせてやっていると恩着せがましい真似をされながら耐える日々。

しかしそんな酷い境遇を見かねた伯爵は、愛する人を守る為に行動を起こす。
虐げられた妻は離縁を決意するも、元夫は妻との離縁を拒み、あることないこと吹聴し、元妻の両親にも嫌がらせをして裁判にまで発展したが、伯爵との愛は深まり絆を強め最後は真実の愛が勝ち取るだと!



何だこの記事は…


「そういや小説も出ていたんだよな。俺…頼んで回してもらってんだ」

「ここは娯楽が救ねぇからな。本を無償で寄付してくれた貴族様に感謝だな」


そういいながら見せたのはシリーズになっている小説だった。


表紙はまんまリサだ。
裏の表紙にはズタボロの服の僕に似た男が書かれている。


これは一種の嫌がらせじゃないか!


ありえない!


こんなの認められるか!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私が我慢する必要ありますか?

青太郎
恋愛
ある日前世の記憶が戻りました。 そして気付いてしまったのです。 私が我慢する必要ありますか? 他サイトでも公開中です

あなたの嫉妬なんて知らない

abang
恋愛
「あなたが尻軽だとは知らなかったな」 「あ、そう。誰を信じるかは自由よ。じゃあ、終わりって事でいいのね」 「は……終わりだなんて、」 「こんな所にいらしたのね!お二人とも……皆探していましたよ…… "今日の主役が二人も抜けては"」 婚約パーティーの夜だった。 愛おしい恋人に「尻軽」だと身に覚えのない事で罵られたのは。 長年の恋人の言葉よりもあざとい秘書官の言葉を信頼する近頃の彼にどれほど傷ついただろう。 「はー、もういいわ」 皇帝という立場の恋人は、仕事仲間である優秀な秘書官を信頼していた。 彼女の言葉を信じて私に婚約パーティーの日に「尻軽」だと言った彼。 「公女様は、退屈な方ですね」そういって耳元で嘲笑った秘書官。 だから私は悪女になった。 「しつこいわね、見て分かんないの?貴方とは終わったの」 洗練された公女の所作に、恵まれた女性の魅力に、高貴な家門の名に、男女問わず皆が魅了される。 「貴女は、俺の婚約者だろう!」 「これを見ても?貴方の言ったとおり"尻軽"に振る舞ったのだけど、思いの他皆にモテているの。感謝するわ」 「ダリア!いい加減に……」 嫉妬に燃える皇帝はダリアの新しい恋を次々と邪魔して……?

平民の娘だから婚約者を譲れって? 別にいいですけど本当によろしいのですか?

和泉 凪紗
恋愛
「お父様。私、アルフレッド様と結婚したいです。お姉様より私の方がお似合いだと思いませんか?」  腹違いの妹のマリアは私の婚約者と結婚したいそうだ。私は平民の娘だから譲るのが当然らしい。  マリアと義母は私のことを『平民の娘』だといつも見下し、嫌がらせばかり。  婚約者には何の思い入れもないので別にいいですけど、本当によろしいのですか?    

婚約者が私以外の人と勝手に結婚したので黙って逃げてやりました〜某国の王子と珍獣ミミルキーを愛でます〜

平川
恋愛
侯爵家の莫大な借金を黒字に塗り替え事業を成功させ続ける才女コリーン。 だが愛する婚約者の為にと寝る間を惜しむほど侯爵家を支えてきたのにも関わらず知らぬ間に裏切られた彼女は一人、誰にも何も告げずに屋敷を飛び出した。 流れ流れて辿り着いたのは獣人が治めるバムダ王国。珍獣ミミルキーが生息するマサラヤマン島でこの国の第一王子ウィンダムに偶然出会い、強引に王宮に連れ去られミミルキーの生態調査に参加する事に!? 魔法使いのウィンロードである王子に溺愛され珍獣に癒されたコリーンは少しずつ自分を取り戻していく。 そして追い掛けて来た元婚約者に対して少女であった彼女が最後に出した答えとは…? 完結済全6話

【完結】契約妻の小さな復讐

恋愛
「余計な事をせず、ただ3年間だけ僕の妻でいればいい」 借金の肩代わりで伯爵家に嫁いだクロエは夫であるジュライアに結婚初日そう告げられる。彼には兼ねてから愛し合っていた娼婦がいて、彼女の奉公が終わるまでの3年間だけクロエを妻として迎えようとしていた。 身勝手でお馬鹿な旦那様、この3年分の恨みはちゃんと晴らさせて貰います。 ※誤字脱字はご了承下さい。 タイトルに※が付いているものは性描写があります。ご注意下さい。

愛想を尽かした女と尽かされた男

火野村志紀
恋愛
※全16話となります。 「そうですか。今まであなたに尽くしていた私は側妃扱いで、急に湧いて出てきた彼女が正妃だと? どうぞ、お好きになさって。その代わり私も好きにしますので」

だってお義姉様が

砂月ちゃん
恋愛
『だってお義姉様が…… 』『いつもお屋敷でお義姉様にいじめられているの!』と言って、高位貴族令息達に助けを求めて来た可憐な伯爵令嬢。 ところが正義感あふれる彼らが、その意地悪な義姉に会いに行ってみると…… 他サイトでも掲載中。

冤罪を掛けられて大切な家族から見捨てられた

ああああ
恋愛
優は大切にしていた妹の友達に冤罪を掛けられてしまう。 そして冤罪が判明して戻ってきたが

処理中です...