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②
しおりを挟む変わらない日々と変わりゆくものがある。
あの後ライアスさんは公爵家で公認会計士となり、平民でありながらも貴族以上の財を築き上げた。
元より勤勉で真面目で仕事熱心だった彼は同じく生真面目なご主人様から評価が高かった。
身分よりも実力主義だったこともある。
私達が結婚して二年目に、公爵様の姪に当たるご令嬢と恋愛関係になり一年後に婚約をした。
その後に子爵家に婿養子が決まった。
お互い信頼しあい、今度こそは幸福になれるだろうと誰もが思った。
ミレイとの関係も良好だと聞かされた。
グレイスさんは、寄宿学校の学園長を任され、ますます教鞭を振るっているとか。
スコット先生も新しくできた小学校で子供達と毎日のように忙しい日々を送っているとか。
一番尊敬するのは先帝陛下だわ。
もう無理ができない年齢なのに、最近はまた新しい事業を行い、貴族至上主義の世界を壊すべく新しい改革を考えている。
あと少しで貴族も税金を支払うことになる。
貧しい平民だけの重税を強いる世は消えることを風の噂で知った。
皆ちゃんと未来に向かって歩いている。
あの時、多くの人に背中を押されて勇気を出して本当に良かった。
「どうしたんだ」
「いいえ、未来は明るいと思いまして」
「そうだね」
ずっと閉ざされていたと思っていた。
でも、少しの勇気を持つだけで違う未来が待っている。
あの時はこんな素敵な日々が待っている。
悲しい記憶は幸せな記憶が塗り替えてくれる。
「若干騒々しさがあるが」
「これからもっと賑やかになりますわ」
私の周りはこうして華やかになっていく。
時にはヒヤッとすることが多いけど。
「旦那様、ジャン先生がご到着です」
「ああ…行こうか」
「はい」
ジャンは弁護士から裁判官に出世を果たした。
その報告を聞くことになっている。
シンパシー家の事は不思議と耳に入らない。
彼らが今どうしているかは解らないけど、人々の記憶から彼らの存在は消えつつある。
私も幸福な時間が彼らの存在を記憶から薄れて来た。
あえて聞くこともなく私の中ですっかり過去の存在になっているのは、彼らは覚えてなくてもいいと思ったからだ。
今頃どうしているかなんて思わない。
ただ過去の行動を悔やみ反省して未来を生きて欲しいと思うだけだった。
過去は戻らないのだから。
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