148 / 169
82幸せ中で消える記憶
しおりを挟むそれから一年後。
私達は子供は男の子を出産した。
言うまでもなく、懐妊パーティーをすると先帝陛下が言い出し、またしても大騒ぎになった。
スコット先生は周りに言いふらし、町中では私達の事で噂になっている。
人から人へと噂は流れるも、喜んでくれる人がいるのは本当に幸せな事だった。
その一方で私が子供ができない体だと噂を流した人達はバッシングを受けたそうだ。
何故ならその一年後にまた一人子供を出産したからだ。
そして二年後の現在。
「リサ、大丈夫か。大丈夫なのか!」
「旦那様、いい加減になれてくださいませんか」
現在三人目を妊娠しているのだ。
「しかしめでたいのぉ!子宝に恵まれて」
「本当に…旦那様は不能と思ってましたので」
「ああ、正直あっちの方はな」
本人がいる前で言うことじゃないけど私のお腹をさすりながら必死な旦那様の耳には聞こえない。
「リサ叔母様」
「マリー様」
結婚してしばらくして私はお嬢様からマリー様に代わった。
本当は呼び捨てでよいと言われたけど、侯爵夫人となった方にそんな呼び方はできない。
何より呼び方がどうであれ、私にとって大切な教え子であり心の先生であることは変わらない。
幼い間に様々な大人の思惑を見て聞いていたからこそ、大事なことを見逃さず行動できたマリー様を心から尊敬している。
「私、素敵な事を思いついたのですが」
「待て待て!今度は何を考えた。何の悪だくみだ」
さっきまで聞こえてなかったのに、マリー様の事に関しては本当に地獄耳だわ。
「失礼ですわ。先日お姑様と一緒に夫人会で使えない男よりも優秀な女性を宮廷に採用すべきだという意見がありましたの」
「そんなことまで…」
「そのうち女性だけの学校を作って、病院も女性専用が必要ではないかと」
言っていることは正しい。
女性専用の病院は必要なのは解る。
女性特有の病があるのだから。
「男どもが無駄なお金を使っているんですからふんだくればいいのです」
「マリー…」
「子を産むのは女性、家を守るのも女性…外でお金を稼ぐだけの男は役立たずです!家事育児も男がしてもおかしくありません!」
正論だわ。
何も言い返せないし、間違いではない。
「これから女性を生きやすくするために男尊女卑は無くすべきです」
「逆に女尊男卑が成立しそうな気がするぞ」
「私もです」
けれど、これまで女性が見下されていたのだから改善されるのはいいことなのよね。
でも、その改革は思った以上にスピーディーに行われていることを私は知らなかった。
1,207
お気に入りに追加
5,422
あなたにおすすめの小説
あなたの嫉妬なんて知らない
abang
恋愛
「あなたが尻軽だとは知らなかったな」
「あ、そう。誰を信じるかは自由よ。じゃあ、終わりって事でいいのね」
「は……終わりだなんて、」
「こんな所にいらしたのね!お二人とも……皆探していましたよ……
"今日の主役が二人も抜けては"」
婚約パーティーの夜だった。
愛おしい恋人に「尻軽」だと身に覚えのない事で罵られたのは。
長年の恋人の言葉よりもあざとい秘書官の言葉を信頼する近頃の彼にどれほど傷ついただろう。
「はー、もういいわ」
皇帝という立場の恋人は、仕事仲間である優秀な秘書官を信頼していた。
彼女の言葉を信じて私に婚約パーティーの日に「尻軽」だと言った彼。
「公女様は、退屈な方ですね」そういって耳元で嘲笑った秘書官。
だから私は悪女になった。
「しつこいわね、見て分かんないの?貴方とは終わったの」
洗練された公女の所作に、恵まれた女性の魅力に、高貴な家門の名に、男女問わず皆が魅了される。
「貴女は、俺の婚約者だろう!」
「これを見ても?貴方の言ったとおり"尻軽"に振る舞ったのだけど、思いの他皆にモテているの。感謝するわ」
「ダリア!いい加減に……」
嫉妬に燃える皇帝はダリアの新しい恋を次々と邪魔して……?
平民の娘だから婚約者を譲れって? 別にいいですけど本当によろしいのですか?
和泉 凪紗
恋愛
「お父様。私、アルフレッド様と結婚したいです。お姉様より私の方がお似合いだと思いませんか?」
腹違いの妹のマリアは私の婚約者と結婚したいそうだ。私は平民の娘だから譲るのが当然らしい。
マリアと義母は私のことを『平民の娘』だといつも見下し、嫌がらせばかり。
婚約者には何の思い入れもないので別にいいですけど、本当によろしいのですか?
婚約者が私以外の人と勝手に結婚したので黙って逃げてやりました〜某国の王子と珍獣ミミルキーを愛でます〜
平川
恋愛
侯爵家の莫大な借金を黒字に塗り替え事業を成功させ続ける才女コリーン。
だが愛する婚約者の為にと寝る間を惜しむほど侯爵家を支えてきたのにも関わらず知らぬ間に裏切られた彼女は一人、誰にも何も告げずに屋敷を飛び出した。
流れ流れて辿り着いたのは獣人が治めるバムダ王国。珍獣ミミルキーが生息するマサラヤマン島でこの国の第一王子ウィンダムに偶然出会い、強引に王宮に連れ去られミミルキーの生態調査に参加する事に!?
魔法使いのウィンロードである王子に溺愛され珍獣に癒されたコリーンは少しずつ自分を取り戻していく。
そして追い掛けて来た元婚約者に対して少女であった彼女が最後に出した答えとは…?
完結済全6話
【完結】契約妻の小さな復讐
紺
恋愛
「余計な事をせず、ただ3年間だけ僕の妻でいればいい」
借金の肩代わりで伯爵家に嫁いだクロエは夫であるジュライアに結婚初日そう告げられる。彼には兼ねてから愛し合っていた娼婦がいて、彼女の奉公が終わるまでの3年間だけクロエを妻として迎えようとしていた。
身勝手でお馬鹿な旦那様、この3年分の恨みはちゃんと晴らさせて貰います。
※誤字脱字はご了承下さい。
タイトルに※が付いているものは性描写があります。ご注意下さい。
愛想を尽かした女と尽かされた男
火野村志紀
恋愛
※全16話となります。
「そうですか。今まであなたに尽くしていた私は側妃扱いで、急に湧いて出てきた彼女が正妃だと? どうぞ、お好きになさって。その代わり私も好きにしますので」
だってお義姉様が
砂月ちゃん
恋愛
『だってお義姉様が…… 』『いつもお屋敷でお義姉様にいじめられているの!』と言って、高位貴族令息達に助けを求めて来た可憐な伯爵令嬢。
ところが正義感あふれる彼らが、その意地悪な義姉に会いに行ってみると……
他サイトでも掲載中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる