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82幸せ中で消える記憶

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それから一年後。
私達は子供は男の子を出産した。

言うまでもなく、懐妊パーティーをすると先帝陛下が言い出し、またしても大騒ぎになった。


スコット先生は周りに言いふらし、町中では私達の事で噂になっている。
人から人へと噂は流れるも、喜んでくれる人がいるのは本当に幸せな事だった。


その一方で私が子供ができない体だと噂を流した人達はバッシングを受けたそうだ。


何故ならその一年後にまた一人子供を出産したからだ。


そして二年後の現在。



「リサ、大丈夫か。大丈夫なのか!」

「旦那様、いい加減になれてくださいませんか」


現在三人目を妊娠しているのだ。



「しかしめでたいのぉ!子宝に恵まれて」

「本当に…旦那様は不能と思ってましたので」

「ああ、正直あっちの方はな」


本人がいる前で言うことじゃないけど私のお腹をさすりながら必死な旦那様の耳には聞こえない。


「リサ叔母様」


「マリー様」


結婚してしばらくして私はお嬢様からマリー様に代わった。
本当は呼び捨てでよいと言われたけど、侯爵夫人となった方にそんな呼び方はできない。


何より呼び方がどうであれ、私にとって大切な教え子であり心の先生であることは変わらない。

幼い間に様々な大人の思惑を見て聞いていたからこそ、大事なことを見逃さず行動できたマリー様を心から尊敬している。


「私、素敵な事を思いついたのですが」

「待て待て!今度は何を考えた。何の悪だくみだ」


さっきまで聞こえてなかったのに、マリー様の事に関しては本当に地獄耳だわ。



「失礼ですわ。先日お姑様と一緒に夫人会で使えない男よりも優秀な女性を宮廷に採用すべきだという意見がありましたの」


「そんなことまで…」

「そのうち女性だけの学校を作って、病院も女性専用が必要ではないかと」


言っていることは正しい。
女性専用の病院は必要なのは解る。


女性特有の病があるのだから。


「男どもが無駄なお金を使っているんですからふんだくればいいのです」

「マリー…」

「子を産むのは女性、家を守るのも女性…外でお金を稼ぐだけの男は役立たずです!家事育児も男がしてもおかしくありません!」


正論だわ。
何も言い返せないし、間違いではない。


「これから女性を生きやすくするために男尊女卑は無くすべきです」

「逆に女尊男卑が成立しそうな気がするぞ」

「私もです」


けれど、これまで女性が見下されていたのだから改善されるのはいいことなのよね。



でも、その改革は思った以上にスピーディーに行われていることを私は知らなかった。


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