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⑧
しおりを挟む新婚なのに幸せそうでもない。
服装は以前よりも地味なものに代わりお化粧も最低限。
おしゃれもあまりしなくなった。
「リサ先生、最近はおしゃれを…」
「あまり派手なのは夫が好まないので」
派手ですって?
リサ先生は清楚感はあれど、派手さはなかった。
もっとおしゃれをしていいのに。
「爪も…」
「これは…」
以前は綺麗に整えられた爪も酷かった。
服装もベージュが多く目立たない服装なのにあの男は上等な服装で。
「リサ先生、顔色だって悪いわ」
「少し忙しくて」
家庭教師の仕事は短時間になって、家で仕事をしているのは聞いている。
夫の実家の事業が傾いており、会計の仕事や他にも仕事を押し付けられているのに夫はなにもしない。
通いの仕事だけで家事を手伝うこともしない。
「リサ先生」
「旦那様…」
「最近瘦せたんじゃないか」
「ダイエットをしているんです」
そんなウソ通用しないわ。
元からそんなに太っているわけじゃないのに。
「もう少しウェスト細くしたくて…」
「これ以上痩せてはダメよ」
暗い表情のリサ先生。
新婚生活はあまり上手く行っているようには見えない。
「叔父様…」
「結婚生活とは難しいものなのだろう」
「このまま見ているだけなの…」
「今の私達は見守るだけしかできない。してはいけないんだ」
ただでさえ、伯爵家に出入りしていることを責められていると聞く。
でもリサ先生は家庭教師の仕事に生きがいを感じているそうだ。
学校の先生になるのが夢だと言っていた。
家庭教師の仕事も大好きで生き生きしている。
「本来ならば家庭教師の仕事も他にするべきなんだろうが…」
「ダメよ!先生は続けたいって…」
「だが夫は良い気はしないそうだ」
第一、今時妻は家庭に縛り付けるなんて時代錯誤よ。
それにリサ先生の収入がなかったら暮らしは大変になるなんて理解していないわ。
「あの男、疫病神だわ」
「これ…」
「万一別居だからなんとかなっているんだわ。もし同居なんてしたらリサ先生は牢獄に入れられて召使のように働かされるのよ!」
「今度は灰被り姫を読んだのか」
「可哀想なリサ先生…意地悪な夫に虐げられて。王子様が助けてくれないから」
チラッと叔父様を見ても効果はないわね。
「叔父様、私はそろそろもっと難しいお勉強がしたいわ」
「そうか」
「でも、週三日だけでは足りないわ」
「ならば少しリサ先生と話すか」
なんとかしてあの男からリサ先生を引き離したい。
でも、あの男は典型的な支配欲のある男だわ。
侍女達が言っていたけど、ああいう男は妻を奴隷にしか思っていないと。
なんとしても引き離さないと。
そう思っていた私は甘かった。
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