145 / 169
⑧
しおりを挟む新婚なのに幸せそうでもない。
服装は以前よりも地味なものに代わりお化粧も最低限。
おしゃれもあまりしなくなった。
「リサ先生、最近はおしゃれを…」
「あまり派手なのは夫が好まないので」
派手ですって?
リサ先生は清楚感はあれど、派手さはなかった。
もっとおしゃれをしていいのに。
「爪も…」
「これは…」
以前は綺麗に整えられた爪も酷かった。
服装もベージュが多く目立たない服装なのにあの男は上等な服装で。
「リサ先生、顔色だって悪いわ」
「少し忙しくて」
家庭教師の仕事は短時間になって、家で仕事をしているのは聞いている。
夫の実家の事業が傾いており、会計の仕事や他にも仕事を押し付けられているのに夫はなにもしない。
通いの仕事だけで家事を手伝うこともしない。
「リサ先生」
「旦那様…」
「最近瘦せたんじゃないか」
「ダイエットをしているんです」
そんなウソ通用しないわ。
元からそんなに太っているわけじゃないのに。
「もう少しウェスト細くしたくて…」
「これ以上痩せてはダメよ」
暗い表情のリサ先生。
新婚生活はあまり上手く行っているようには見えない。
「叔父様…」
「結婚生活とは難しいものなのだろう」
「このまま見ているだけなの…」
「今の私達は見守るだけしかできない。してはいけないんだ」
ただでさえ、伯爵家に出入りしていることを責められていると聞く。
でもリサ先生は家庭教師の仕事に生きがいを感じているそうだ。
学校の先生になるのが夢だと言っていた。
家庭教師の仕事も大好きで生き生きしている。
「本来ならば家庭教師の仕事も他にするべきなんだろうが…」
「ダメよ!先生は続けたいって…」
「だが夫は良い気はしないそうだ」
第一、今時妻は家庭に縛り付けるなんて時代錯誤よ。
それにリサ先生の収入がなかったら暮らしは大変になるなんて理解していないわ。
「あの男、疫病神だわ」
「これ…」
「万一別居だからなんとかなっているんだわ。もし同居なんてしたらリサ先生は牢獄に入れられて召使のように働かされるのよ!」
「今度は灰被り姫を読んだのか」
「可哀想なリサ先生…意地悪な夫に虐げられて。王子様が助けてくれないから」
チラッと叔父様を見ても効果はないわね。
「叔父様、私はそろそろもっと難しいお勉強がしたいわ」
「そうか」
「でも、週三日だけでは足りないわ」
「ならば少しリサ先生と話すか」
なんとかしてあの男からリサ先生を引き離したい。
でも、あの男は典型的な支配欲のある男だわ。
侍女達が言っていたけど、ああいう男は妻を奴隷にしか思っていないと。
なんとしても引き離さないと。
そう思っていた私は甘かった。
1,067
お気に入りに追加
5,151
あなたにおすすめの小説

自分勝手な側妃を見習えとおっしゃったのですから、わたくしの望む未来を手にすると決めました。
Mayoi
恋愛
国王キングズリーの寵愛を受ける側妃メラニー。
二人から見下される正妃クローディア。
正妃として国王に苦言を呈すれば嫉妬だと言われ、逆に側妃を見習うように言わる始末。
国王であるキングズリーがそう言ったのだからクローディアも決心する。
クローディアは自らの望む未来を手にすべく、密かに手を回す。

離婚したらどうなるのか理解していない夫に、笑顔で離婚を告げました。
Mayoi
恋愛
実家の財政事情が悪化したことでマティルダは夫のクレイグに相談を持ち掛けた。
ところがクレイグは過剰に反応し、利用価値がなくなったからと離婚すると言い出した。
なぜ財政事情が悪化していたのか、マティルダの実家を失うことが何を意味するのか、クレイグは何も知らなかった。

妹に婚約者を奪われたので妹の服を全部売りさばくことに決めました
常野夏子
恋愛
婚約者フレデリックを妹ジェシカに奪われたクラリッサ。
裏切りに打ちひしがれるも、やがて復讐を決意する。
ジェシカが莫大な資金を投じて集めた高級服の数々――それを全て売りさばき、彼女の誇りを粉々に砕くのだ。

誰にも信じてもらえなかった公爵令嬢は、もう誰も信じません。
salt
恋愛
王都で罪を犯した悪役令嬢との婚姻を結んだ、東の辺境伯地ディオグーン領を治める、フェイドリンド辺境伯子息、アルバスの懺悔と後悔の記録。
6000文字くらいで摂取するお手軽絶望バッドエンドです。
*なろう・pixivにも掲載しています。

皆さん勘違いなさっているようですが、この家の当主はわたしです。
和泉 凪紗
恋愛
侯爵家の後継者であるリアーネは父親に呼びされる。
「次期当主はエリザベスにしようと思う」
父親は腹違いの姉であるエリザベスを次期当主に指名してきた。理由はリアーネの婚約者であるリンハルトがエリザベスと結婚するから。
リンハルトは侯爵家に婿に入ることになっていた。
「エリザベスとリンハルト殿が一緒になりたいそうだ。エリザベスはちょうど適齢期だし、二人が思い合っているなら結婚させたい。急に婚約者がいなくなってリアーネも不安だろうが、適齢期までまだ時間はある。お前にふさわしい結婚相手を見つけるから安心しなさい。エリザベスの結婚が決まったのだ。こんなにめでたいことはないだろう?」
破談になってめでたいことなんてないと思いますけど?
婚約破棄になるのは構いませんが、この家を渡すつもりはありません。

平民の娘だから婚約者を譲れって? 別にいいですけど本当によろしいのですか?
和泉 凪紗
恋愛
「お父様。私、アルフレッド様と結婚したいです。お姉様より私の方がお似合いだと思いませんか?」
腹違いの妹のマリアは私の婚約者と結婚したいそうだ。私は平民の娘だから譲るのが当然らしい。
マリアと義母は私のことを『平民の娘』だといつも見下し、嫌がらせばかり。
婚約者には何の思い入れもないので別にいいですけど、本当によろしいのですか?

だってお義姉様が
砂月ちゃん
恋愛
『だってお義姉様が…… 』『いつもお屋敷でお義姉様にいじめられているの!』と言って、高位貴族令息達に助けを求めて来た可憐な伯爵令嬢。
ところが正義感あふれる彼らが、その意地悪な義姉に会いに行ってみると……
他サイトでも掲載中。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる