上 下
143 / 169

しおりを挟む




例え裕福でも平民と貴族の婚姻は難しい。
間を取り持ってくれる人が必要で、でも叔父様を利用したい人は多いと子供ながらに察した。


「お嬢様、新し母君はやはり若く美しい方がふさわしいですわ。私の姪のような」

「そうですわ。ですからあまり若い家庭教師を傍に置くのはどうかと」

「いかに旦那様のお情けとはいえ…教養もないくせになんて図々しいのでしょう」


私が落ち着き、リサ先生が三か月過ぎても私の家庭教師を続行していることで私の心が落ち着いたと勝手に勘違いしていたらしい。


噂では両親を失ったショックで病気だとか噂を流していたのも知っているのよ。

その噂を流しているのも目の前のデブ夫人。


本名はデブリタ男爵夫人。

私はデブ夫人と呼んでいる。


見た目ではなく心が油まみれのデブだからだ。
自分だって平民だった癖に男爵に見初められたからなのか。


リサ先生は平民であるけどご両親は立派だ。
そんじょそこらの成金とはわけが違うしお父様は商人としても成功を収めている一方で慈善事業も行っている。


お母様も元は侍女で教養もある。
平民でありながら貴族以上の教養もある立派な人だわ。


数回お会いしたけど、私が当初傲慢な態度を取っても子供扱いせずにちゃんと大人としての対応をしながらも甘やかしてくれた。


「あんな元侍女と成金の娘なんて…」

「本当に伯爵様も何故…」


聞いていて腹が立つわね。


このおばさん…


「それは叔父が人を見る目があるからではなくて?」

「は?」

「見た目だけ取り繕った女性って…見ていて哀れなのよね。貴女のように」

「なっ…」

「服のセンスもアウトだけど。叔父様、潔癖症なの…それに選ぶ権利があるわ。私もだけど」



唖然とした表情をしている。
私が大人しくなったと思っているのでしょうけど。



私は変わらないわ。


「貴女、臭いのよ…叔父様吐きそうな肥溜めのようだって言ってたわ」

「なんですって」

「耳も遠いのね?医者に診てもらうのことをお勧めするわ…それから叔父様は馬鹿な人嫌いなの」


真っ赤になって怒るデブ夫人。
でも知った事じゃないわ。


勝手に怒っていればいいのよ。


「このクソガキ!」


けれど隣にいた侍女が私に汚い言葉を吐き暴力を働こうとした時だ。


「きゃあああ!」


私は悲鳴を上げた。


すると…


「お嬢様!」

「リサ先生!」


偶然廊下を通りかかったリサ先生とマミーが殴られそうになった私を見て助けてくれた。


「なんてことを」


「怖かったわ…この人たちが」


「どういうつもりです!」


私はリサ先生にしがみつきながら二人を見ながら笑ってやった。
以後、デブ夫人は邸の出入りを禁じられたけど。

その数か月後の事。


リサ先生に縁談が持ち上がったのだった。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私が我慢する必要ありますか?

青太郎
恋愛
ある日前世の記憶が戻りました。 そして気付いてしまったのです。 私が我慢する必要ありますか? 他サイトでも公開中です

あなたの嫉妬なんて知らない

abang
恋愛
「あなたが尻軽だとは知らなかったな」 「あ、そう。誰を信じるかは自由よ。じゃあ、終わりって事でいいのね」 「は……終わりだなんて、」 「こんな所にいらしたのね!お二人とも……皆探していましたよ…… "今日の主役が二人も抜けては"」 婚約パーティーの夜だった。 愛おしい恋人に「尻軽」だと身に覚えのない事で罵られたのは。 長年の恋人の言葉よりもあざとい秘書官の言葉を信頼する近頃の彼にどれほど傷ついただろう。 「はー、もういいわ」 皇帝という立場の恋人は、仕事仲間である優秀な秘書官を信頼していた。 彼女の言葉を信じて私に婚約パーティーの日に「尻軽」だと言った彼。 「公女様は、退屈な方ですね」そういって耳元で嘲笑った秘書官。 だから私は悪女になった。 「しつこいわね、見て分かんないの?貴方とは終わったの」 洗練された公女の所作に、恵まれた女性の魅力に、高貴な家門の名に、男女問わず皆が魅了される。 「貴女は、俺の婚約者だろう!」 「これを見ても?貴方の言ったとおり"尻軽"に振る舞ったのだけど、思いの他皆にモテているの。感謝するわ」 「ダリア!いい加減に……」 嫉妬に燃える皇帝はダリアの新しい恋を次々と邪魔して……?

平民の娘だから婚約者を譲れって? 別にいいですけど本当によろしいのですか?

和泉 凪紗
恋愛
「お父様。私、アルフレッド様と結婚したいです。お姉様より私の方がお似合いだと思いませんか?」  腹違いの妹のマリアは私の婚約者と結婚したいそうだ。私は平民の娘だから譲るのが当然らしい。  マリアと義母は私のことを『平民の娘』だといつも見下し、嫌がらせばかり。  婚約者には何の思い入れもないので別にいいですけど、本当によろしいのですか?    

婚約者が私以外の人と勝手に結婚したので黙って逃げてやりました〜某国の王子と珍獣ミミルキーを愛でます〜

平川
恋愛
侯爵家の莫大な借金を黒字に塗り替え事業を成功させ続ける才女コリーン。 だが愛する婚約者の為にと寝る間を惜しむほど侯爵家を支えてきたのにも関わらず知らぬ間に裏切られた彼女は一人、誰にも何も告げずに屋敷を飛び出した。 流れ流れて辿り着いたのは獣人が治めるバムダ王国。珍獣ミミルキーが生息するマサラヤマン島でこの国の第一王子ウィンダムに偶然出会い、強引に王宮に連れ去られミミルキーの生態調査に参加する事に!? 魔法使いのウィンロードである王子に溺愛され珍獣に癒されたコリーンは少しずつ自分を取り戻していく。 そして追い掛けて来た元婚約者に対して少女であった彼女が最後に出した答えとは…? 完結済全6話

【完結】契約妻の小さな復讐

恋愛
「余計な事をせず、ただ3年間だけ僕の妻でいればいい」 借金の肩代わりで伯爵家に嫁いだクロエは夫であるジュライアに結婚初日そう告げられる。彼には兼ねてから愛し合っていた娼婦がいて、彼女の奉公が終わるまでの3年間だけクロエを妻として迎えようとしていた。 身勝手でお馬鹿な旦那様、この3年分の恨みはちゃんと晴らさせて貰います。 ※誤字脱字はご了承下さい。 タイトルに※が付いているものは性描写があります。ご注意下さい。

だってお義姉様が

砂月ちゃん
恋愛
『だってお義姉様が…… 』『いつもお屋敷でお義姉様にいじめられているの!』と言って、高位貴族令息達に助けを求めて来た可憐な伯爵令嬢。 ところが正義感あふれる彼らが、その意地悪な義姉に会いに行ってみると…… 他サイトでも掲載中。

冤罪を掛けられて大切な家族から見捨てられた

ああああ
恋愛
優は大切にしていた妹の友達に冤罪を掛けられてしまう。 そして冤罪が判明して戻ってきたが

悪役令嬢が残した破滅の種

八代奏多
恋愛
 妹を虐げていると噂されていた公爵令嬢のクラウディア。  そんな彼女が婚約破棄され国外追放になった。  その事実に彼女を疎ましく思っていた周囲の人々は喜んだ。  しかし、その日を境に色々なことが上手く回らなくなる。  断罪した者は次々にこう口にした。 「どうか戻ってきてください」  しかし、クラウディアは既に隣国に心地よい居場所を得ていて、戻る気は全く無かった。  何も知らずに私欲のまま断罪した者達が、破滅へと向かうお話し。 ※小説家になろう様でも連載中です。  9/27 HOTランキング1位、日間小説ランキング3位に掲載されました。ありがとうございます。

処理中です...