140 / 169
③
しおりを挟む私は考えを改めた。
これまで自分の能力に過信をしてしまった。
元から負けず嫌いだった私は負けっぱなしでは気が済まない。
なんとしてもぎゃふんと言わせてやりたいと思い、その日から眠る以外の時間は机にかじりついた。
「お嬢様、あまり無理を…」
「この私に敗北の二文字はないわ!」
机に向かい記憶力を向上させるべく特訓をした。
「私はもうチェスを見るのも嫌なんだが」
「絶対に先生に勝つの!」
チェスの特訓も欠かすことなくだ。
そのおかげでチェス大会でも優勝してしまった。
なのに――!
「本日は危なかったですわ」
「くっ…」
勝てなかった。
「何でよ!」
「落ち着かないか」
「完璧だったはずよ!」
何度やっても勝てない。
戦術を変えてみたのに、リサ先生に勝てなかった。
「お前はまだ幼い…リサは学生時代チェス大会に何度も優勝しているし、実家は商会だ。チェスの名人も出入りしているからな」
「くっ…」
なんてことなの。
強い相手と対戦しているからというの?
「お嬢様は外に出ることをなさいませんし」
「あんな場所行きたくないわ」
両親が死んだときに憐れみながらも私を馬鹿にして。
挙句の果てに私を利用しようとする連中ばかりじゃない。
頭の悪い連中ばかり。
血のつながった家族でも利用できるかどうか。
「マリー、お前が人間不信になっているのは解る。だがそんなに視野を狭めては馬鹿な連中と同じになる」
「叔父様!私をあんな連中と一緒になさるの!」
「そうではない…一部の人間の所為でお前の交流関係を絶つような真似をしないでほしい。リサ先生は信頼できる人だ。同時に貴族の令嬢以上に教養がある」
叔父様は私に嘘は言わない。
リサ先生は教養のある人だし、貴族令嬢ではないのに所作が完璧だった。
「お前が信頼できる人かどうか、観察するんだ…周りの声に耳を傾けるんじゃない」
「はい…」
本当は解っている。
リサ先生は他の家庭教師とは違うことも。
でも私は天邪鬼だった。
素直になれるようないい子じゃないから。
「マリー。お前は優しい子だ。ちゃんと解っている」
「悪い子よ」
「そんな顔をする子は悪い子じゃないよ」
優しい手が私の頭を撫でる。
叔父様を困らせている自覚はあるけど、今更簡単に人を信じることはできなかった。
だから私なりのやり方でリサ先生を見ることにした。
「そうよ。こういう時は」
お母様の日記を引っ張り出す。
「迷ったときは徹底的に調べろ…なるほど探偵になるのね」
お母様の日記に書かれていたことを実行することにした私はリサ先生のことを徹底的に調べることにした。
1,329
お気に入りに追加
5,128
あなたにおすすめの小説


【完結】婚約者が私以外の人と勝手に結婚したので黙って逃げてやりました〜某国の王子と珍獣ミミルキーを愛でます〜
平川
恋愛
侯爵家の莫大な借金を黒字に塗り替え事業を成功させ続ける才女コリーン。
だが愛する婚約者の為にと寝る間を惜しむほど侯爵家を支えてきたのにも関わらず知らぬ間に裏切られた彼女は一人、誰にも何も告げずに屋敷を飛び出した。
流れ流れて辿り着いたのは獣人が治めるバムダ王国。珍獣ミミルキーが生息するマサラヤマン島でこの国の第一王子ウィンダムに偶然出会い、強引に王宮に連れ去られミミルキーの生態調査に参加する事に!?
魔法使いのウィンロードである王子に溺愛され珍獣に癒されたコリーンは少しずつ自分を取り戻していく。
そして追い掛けて来た元婚約者に対して少女であった彼女が最後に出した答えとは…?
完結済全6話

正妃である私を追い出し、王子は平民の女性と結婚してしまいました。…ですが、後になって後悔してももう遅いですよ?
久遠りも
恋愛
正妃である私を追い出し、王子は平民の女性と結婚してしまいました。…ですが、後になって後悔してももう遅いですよ?
※一話完結です。
ゆるゆる設定です。

だってお義姉様が
砂月ちゃん
恋愛
『だってお義姉様が…… 』『いつもお屋敷でお義姉様にいじめられているの!』と言って、高位貴族令息達に助けを求めて来た可憐な伯爵令嬢。
ところが正義感あふれる彼らが、その意地悪な義姉に会いに行ってみると……
他サイトでも掲載中。

離婚したらどうなるのか理解していない夫に、笑顔で離婚を告げました。
Mayoi
恋愛
実家の財政事情が悪化したことでマティルダは夫のクレイグに相談を持ち掛けた。
ところがクレイグは過剰に反応し、利用価値がなくなったからと離婚すると言い出した。
なぜ財政事情が悪化していたのか、マティルダの実家を失うことが何を意味するのか、クレイグは何も知らなかった。

溺愛されている妹がお父様の子ではないと密告したら立場が逆転しました。ただお父様の溺愛なんて私には必要ありません。
木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるレフティアの日常は、父親の再婚によって大きく変わることになった。
妾だった継母やその娘である妹は、レフティアのことを疎んでおり、父親はそんな二人を贔屓していた。故にレフティアは、苦しい生活を送ることになったのである。
しかし彼女は、ある時とある事実を知ることになった。
父親が溺愛している妹が、彼と血が繋がっていなかったのである。
レフティアは、その事実を父親に密告した。すると調査が行われて、それが事実であることが判明したのである。
その結果、父親は継母と妹を排斥して、レフティアに愛情を注ぐようになった。
だが、レフティアにとってそんなものは必要なかった。継母や妹ともに自分を虐げていた父親も、彼女にとっては排除するべき対象だったのである。

自分勝手な側妃を見習えとおっしゃったのですから、わたくしの望む未来を手にすると決めました。
Mayoi
恋愛
国王キングズリーの寵愛を受ける側妃メラニー。
二人から見下される正妃クローディア。
正妃として国王に苦言を呈すれば嫉妬だと言われ、逆に側妃を見習うように言わる始末。
国王であるキングズリーがそう言ったのだからクローディアも決心する。
クローディアは自らの望む未来を手にすべく、密かに手を回す。

王子は婚約破棄を泣いて詫びる
tartan321
恋愛
最愛の妹を失った王子は婚約者のキャシーに復讐を企てた。非力な王子ではあったが、仲間の協力を取り付けて、キャシーを王宮から追い出すことに成功する。
目的を達成し安堵した王子の前に突然死んだ妹の霊が現れた。
「お兄さま。キャシー様を3日以内に連れ戻して!」
存亡をかけた戦いの前に王子はただただ無力だった。
王子は妹の言葉を信じ、遥か遠くの村にいるキャシーを訪ねることにした……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる