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しおりを挟む「お初にお目にかかりますお嬢様」
服装は質素であるけど、派手さがないだけだった。
歩き方にも、話し方にも気品があった。
何より私と話すときは同じ視線になるように膝をおって話してくれた。
変に子供扱いをすることなく話してくれたのは叔父様以外で初めてだったかもしれない。
「旦那様より、お嬢様は大変聡明なお方とお伺いしております。故にお勉強に関しては専門的なものにさせていただきたく思います」
「私に専門的な事を教えられるのかしら?言っておくけど、私を心身共に満足できるとは思えないわ」
これまでの家庭教師は私の知りたいことは教えてくれなかった。
名前だけの無能な家庭教師は不要だわ。
「ではお嬢様のご期待に応えられますように努力いたします。ですが、お嬢様も私の宿題に答えられるように努力してください」
「フンッ!この私に勝負を仕掛けるなんて甘いわよ」
見た所他の家庭教師よりも若いわ。
叔父様が今度こそはと言っているけどそう簡単に認めたりはしないわ。
その日から私達の攻防戦は始まった。
だけど私は子供で、本当に狭い世界しか知らなかった。
「チェックメイトです」
「なっ!」
まず手始め手にチェスで勝負をした。
家庭教師にはじめにする嫌がらせだったのに、私はあっさり負けた。
「お嬢様は中盤で焦り過ぎですわ。これでは勝負に持ち込めませんわ」
「ぐっ…何者よ」
甘く見ていたわ。
毎晩叔父様と勝負していたし、自信があったのに。
前半は順調だった…
でもフェイクをしかけられてあっさり負けた。
「チェスがおできになるならば次はカードゲームをいたしましょう…記憶力に自信があるとお聞きしましたので」
「いいわ。その代わりできなかったら今日の授業はなしよ。私のメイドを一日するのよ」
「では私が勝ったら私のお願いを聞いていただきます」
「いいわ。負けるはずないんだもの」
私は天才的な記憶力がある。
お母様の家系ではそういった女性が稀に生まれる。
それが私だと言われた。
同年代の子供よりも理解力があり記憶は一度見れば忘れない。
だから負けるはずがないのだ…
なのに―――。
「私の勝ちですね」
「何でよ!どうして…」
私はこれまで努力というものをしたことがない。
だってそんなもの必要なかった。
「お嬢様は神様からの贈り物を完全に扱えていません」
「そんなはず…」
「いかに記憶力が良くとも、些細なものまで完全に記憶するには何度も記憶しなくてはなりません。瞬間的な記憶でも…すべてを記憶する前にシャットアウトしているのです」
この言葉に私は何も言い返せなかった。
ある程度記憶すればいい。
そんな感じだったから。
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