135 / 169
80幸福の裏側で
しおりを挟むすべての問題が終わった後に私達の結婚式が行われた。
身内だけの結婚式なのでこじんまりにしたものだったはずなのだけど。
挙式だけは質素にしてくれた。
「本当に大盤振る舞いだな!」
「伯爵閣下の結婚式の祝いで、広間にはエールが流れて今日から一週間無償で肉酒は無償で振舞われるんだってな!」
「先帝陛下の配慮だそうだぜ!」
「景気が悪かったからありがてぇな!」
だけど挙式以外は恐ろしいほ程の規模でお祭り騒ぎだ。
まず初めに挙式を終えた後のパレードが派手に行われ、私達は皇族の身内になるので皇族専用の馬車で大通りを走り顔を見せるのだけど。
「顔が引きつっているぞ」
「旦那様こそ目が死んでますよ」
「ああ…」
ここまでの大規模になるとは思わなかった。
でもこんなのはまだ序の口でこの後披露宴が待っていた。
通常披露宴は大きな会場を貸し切って行うと思いきや、見たことがない大きな豪華客船で行われた。
「これは…」
「伯父上が若かりし頃敵国から奪った船だ」
「そんなものを…」
恐ろしいほどの巨大な豪華客船。
内装も美しく船の中とは思えないほどで、披露宴の料理もすごいごちそうだった。
「お金を湯水のように使っているのですが…」
「ああ、伯父上が聞かなくてな。もう抵抗しても無駄だ」
悟ったのね。
確かに先帝陛下を止めるなんて不可能だわ。
「主役がそんな枯れた花のようになってどうしますの?」
「マリー…」
「楽しまないと損ですわ」
そういいながらお皿に乗っているのは魚料理だった。
「随分と堪能しているようだな」
「ええ、侯爵家では肉料理が多いので、今後は魚料理も取り入れていただかなくては」
本当に自由だわ。
それにしてもお一人でいて大丈夫なのかしら?
「それよりその表情をなんとかしないと追加で記者が来ますわよ。隣国の」
「何だと!」
隣国の記者を呼んだの!
「だって、おめでたい席ですわよ?できるだけ多くの記者に幸せを見せつけなくては」
意図を感じるのは私だけではない。
挙式の時からやたらと新聞記者が多いと思った。
皇族の結婚式は通常新聞記者の数は少ない。
だからこそ、私達の時は少し多いと説明を受けたのだけど。
それだけではない。
「マリー様」
「先生、幸せは他人に見せつけてこそではありませんの?」
「見せつける?」
「ええ」
誰に見せつけるというのか。
そんなことを考えていたが後日、ジャンから恐ろしい報告を受けることとなった。
「ロンド・シンパシーが脱獄しました」
「は?」
結婚式が終わった翌日の事だった。
1,522
お気に入りに追加
5,129
あなたにおすすめの小説

離婚したらどうなるのか理解していない夫に、笑顔で離婚を告げました。
Mayoi
恋愛
実家の財政事情が悪化したことでマティルダは夫のクレイグに相談を持ち掛けた。
ところがクレイグは過剰に反応し、利用価値がなくなったからと離婚すると言い出した。
なぜ財政事情が悪化していたのか、マティルダの実家を失うことが何を意味するのか、クレイグは何も知らなかった。

自分勝手な側妃を見習えとおっしゃったのですから、わたくしの望む未来を手にすると決めました。
Mayoi
恋愛
国王キングズリーの寵愛を受ける側妃メラニー。
二人から見下される正妃クローディア。
正妃として国王に苦言を呈すれば嫉妬だと言われ、逆に側妃を見習うように言わる始末。
国王であるキングズリーがそう言ったのだからクローディアも決心する。
クローディアは自らの望む未来を手にすべく、密かに手を回す。

【短編】婚約破棄?「喜んで!」食い気味に答えたら陛下に泣きつかれたけど、知らんがな
みねバイヤーン
恋愛
「タリーシャ・オーデリンド、そなたとの婚約を破棄す」「喜んで!」
タリーシャが食い気味で答えると、あと一歩で間に合わなかった陛下が、会場の入口で「ああー」と言いながら膝から崩れ落ちた。田舎領地で育ったタリーシャ子爵令嬢が、ヴィシャール第一王子殿下の婚約者に決まったとき、王国は揺れた。王子は荒ぶった。あんな少年のように色気のない体の女はいやだと。タリーシャは密かに陛下と約束を交わした。卒業式までに王子が婚約破棄を望めば、婚約は白紙に戻すと。田舎でのびのび暮らしたいタリーシャと、タリーシャをどうしても王妃にしたい陛下との熾烈を極めた攻防が始まる。

正妃である私を追い出し、王子は平民の女性と結婚してしまいました。…ですが、後になって後悔してももう遅いですよ?
久遠りも
恋愛
正妃である私を追い出し、王子は平民の女性と結婚してしまいました。…ですが、後になって後悔してももう遅いですよ?
※一話完結です。
ゆるゆる設定です。

純白の牢獄
ゆる
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」
華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。
王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。
そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。
レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。
「お願いだ……戻ってきてくれ……」
王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。
「もう遅いわ」
愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。
裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。
これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。

皆さん勘違いなさっているようですが、この家の当主はわたしです。
和泉 凪紗
恋愛
侯爵家の後継者であるリアーネは父親に呼びされる。
「次期当主はエリザベスにしようと思う」
父親は腹違いの姉であるエリザベスを次期当主に指名してきた。理由はリアーネの婚約者であるリンハルトがエリザベスと結婚するから。
リンハルトは侯爵家に婿に入ることになっていた。
「エリザベスとリンハルト殿が一緒になりたいそうだ。エリザベスはちょうど適齢期だし、二人が思い合っているなら結婚させたい。急に婚約者がいなくなってリアーネも不安だろうが、適齢期までまだ時間はある。お前にふさわしい結婚相手を見つけるから安心しなさい。エリザベスの結婚が決まったのだ。こんなにめでたいことはないだろう?」
破談になってめでたいことなんてないと思いますけど?
婚約破棄になるのは構いませんが、この家を渡すつもりはありません。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる