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80幸福の裏側で
しおりを挟むすべての問題が終わった後に私達の結婚式が行われた。
身内だけの結婚式なのでこじんまりにしたものだったはずなのだけど。
挙式だけは質素にしてくれた。
「本当に大盤振る舞いだな!」
「伯爵閣下の結婚式の祝いで、広間にはエールが流れて今日から一週間無償で肉酒は無償で振舞われるんだってな!」
「先帝陛下の配慮だそうだぜ!」
「景気が悪かったからありがてぇな!」
だけど挙式以外は恐ろしいほ程の規模でお祭り騒ぎだ。
まず初めに挙式を終えた後のパレードが派手に行われ、私達は皇族の身内になるので皇族専用の馬車で大通りを走り顔を見せるのだけど。
「顔が引きつっているぞ」
「旦那様こそ目が死んでますよ」
「ああ…」
ここまでの大規模になるとは思わなかった。
でもこんなのはまだ序の口でこの後披露宴が待っていた。
通常披露宴は大きな会場を貸し切って行うと思いきや、見たことがない大きな豪華客船で行われた。
「これは…」
「伯父上が若かりし頃敵国から奪った船だ」
「そんなものを…」
恐ろしいほどの巨大な豪華客船。
内装も美しく船の中とは思えないほどで、披露宴の料理もすごいごちそうだった。
「お金を湯水のように使っているのですが…」
「ああ、伯父上が聞かなくてな。もう抵抗しても無駄だ」
悟ったのね。
確かに先帝陛下を止めるなんて不可能だわ。
「主役がそんな枯れた花のようになってどうしますの?」
「マリー…」
「楽しまないと損ですわ」
そういいながらお皿に乗っているのは魚料理だった。
「随分と堪能しているようだな」
「ええ、侯爵家では肉料理が多いので、今後は魚料理も取り入れていただかなくては」
本当に自由だわ。
それにしてもお一人でいて大丈夫なのかしら?
「それよりその表情をなんとかしないと追加で記者が来ますわよ。隣国の」
「何だと!」
隣国の記者を呼んだの!
「だって、おめでたい席ですわよ?できるだけ多くの記者に幸せを見せつけなくては」
意図を感じるのは私だけではない。
挙式の時からやたらと新聞記者が多いと思った。
皇族の結婚式は通常新聞記者の数は少ない。
だからこそ、私達の時は少し多いと説明を受けたのだけど。
それだけではない。
「マリー様」
「先生、幸せは他人に見せつけてこそではありませんの?」
「見せつける?」
「ええ」
誰に見せつけるというのか。
そんなことを考えていたが後日、ジャンから恐ろしい報告を受けることとなった。
「ロンド・シンパシーが脱獄しました」
「は?」
結婚式が終わった翌日の事だった。
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