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「マリー!」


旦那様の悲鳴が木霊する。
泣いているのか怒っているのか解らないほどの悲鳴だ。


「お前はなんて恰好を!まさか嫁ぎ先でそんな真似を」

「いやですわ。叔父様」


「そうだよな」

「皇族の殿方は皆マゾですわ。大伯父様は例ですけど」

違う。
そういうことを聞いているんじゃない。


「ちなみにですけど私は根っからの攻めですわ」

「いらないんだそんなことは!」

「大体女性は攻めが多いのです。今後はすべての女性は攻めになるべきです」


今度はどんなジャンルに手を出したのか。
まさかまだお若い侯爵家の若様にそんなことを。


「ご安心くださいませ。侯爵様は許可してくださってますわ。こちらの衣装は姑様からいただきましたの」


「ああ…」

「旦那様!お気を確かに!」


侯爵夫人のことは詳しく存じないけど、確か西の島国も姫君だと聞いている。


「花嫁修業の一環として、夫を調教できるようにと鞭をいただきましたの」

「どんな花嫁修業だ!侯爵家は大丈夫なのか!」


「あら旦那様?世間では問題なく通っているのですからいいではありませんか。皆誰しも心に花園抱えているものだのですから」


知りたくなかった花園だわ。

いや秘密の花園は知らない方がいいのかしらね?


「それでその血はなんだ?血のりか」


「いいえ本物ですわ。すこしばかりぐちゃぐちゃにしましたの」


「「ぐちゃぐちゃって何!」」


無邪気な笑顔で言われ私達は悲鳴を上げた。



「ええ、先ほど大伯父様におねだりして雄豚に会いに行きまして」


「雄豚…まさかロンド・シンパシーに会いに行ったのか!お前は皇族に嫁いだのだぞ!」


前代未聞のことだ。
それ以前にどこの世界に刑務所に乗り込み拷問をする貴族令嬢がいるのか。


「しくじった…侯爵夫人は若かりし頃拷問官をしていたんだ」


「他国の姫が…」

「ああ」


どんな家柄なのか。

いいえ、これは偏見ね。
そんな考えを教師が待つべきではないと解っていてもカルチャーショックが強いわ。




「マリー、お前は大人しくする気はないのか」

「はい」

「きっぱり言うんじゃない!」



旦那様はまだあきらめていなかったのね。
こうなっては見守るしかないのだけど、胃が痛いのは続くだろう。



「だって先生の挙式までに排除すべきものは排除しないと」


「お前は何をしてきたんだ」


「お聞きになりたいのですか?」

「聞きたいようで聞きたくない」



賢明な判断だと思います旦那様。

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