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⑨
しおりを挟む先ほどまではこちらに部があったが、今では完全とまでいかない。
そんな中あちらの弁護士は続く。
「被告は確かに罪を犯しました。ですが被告が罪を犯すまでの間に夫は何もしなかった…確かに辺境地で大変だったでしょうが、被告には情状酌量の余地があってもいいかと」
「それは…」
「報告書に関しては、育児放棄は見受けられます。ですが夫側も同様ですからね」
感情が読めない裁判長は妻側だけではなく、夫側にも非があるという弁護士の言葉は妥当だと告げる。
「では夫側の弁護士」
「はい」
ここからがジャンのターンだ。
「先ほども申された通り、サンディ・シンパシー夫人にすべて責任があるとは言えません。ですが、辺境地に行く際に妻に同行して欲しいとの訴えを断り、過度な仕送りを要求し続けたのも事実」
当時、二人は手紙のやり取りをしていた。
ミレイを気にかけないわけではない、だが遠くにいては何もできない。
だからこそ仕送りをしっかりしていた。
「こちらは当時の給料明細書です。被告は当時、過度な支払を要求し、夫、ライアス氏は食べることも満足にできず辛い生活を送っています。証言者もございます…当初被告からの手紙です」
「筆跡鑑定は?」
「既に済ませております。後は裁判長に」
「解りました」
裁判長に提出した手紙と当時の給料明細書を見ると表情が険しくなる。
「単身赴任の夫にこのような金額を要求するのはありえませんね。被告人、貴方は夫の生活に配慮はしなかったのですか?」
「えっと…それは。なんとかなると」
「ほぉ?」
冷たい視線を向けられる中しどろもどろになる。
「その時すでに被告人は病を患っていました」
「裁判長!弁護人は被告の言葉を遮っています。本人への発言許可を!」
「待ってください!」
「被告側の弁護士は言葉を慎むように…被告人、答えてください」
ジャンの用意していた証拠にまで目が行き届かなかったようだ。
かなり焦った表情をしているな。
後はあの女がぼろを出してくれればこちらに勝機がある。
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