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③
しおりを挟む裁判の下準備を終えた後に、既にライアスの親権は確実なものとなっている。
「弁護士は?」
「一応つくでしょう。ですが所詮は二流です。依頼料もまとも払えませんし」
「だろうな」
裁判をする以上は加害者側も弁護人が必要となる。
ただし、ジャンと比べ物にはならない。
「まずは既に彼らには後がありません」
「親権を奪われ財産もない。残るのは自分たちの無実を主張して、慰謝料をふんだくり尚且つリサを悪者に仕立て上げて復縁してやる優しい家族というシナリオか」
「ええ…本当に馬鹿げています」
リサは教師として優秀だ。
これまで優雅な暮らしができたのはリサの収入や、周りとの繋がりを大切にしからこそ色々優遇されていた。
失ってからどれだけ苦労したか知っただろうが、そうなるまでにどれだけリサが努力したかしろうともしない。
ああいう人間は寄生虫だ。
自分の為に他人を利用し、つぶしても自分が幸福なら利用された人間も幸せだと信じて疑わないいかれた連中だ。
だからこそ、本当の意味で痛い目に会わせる必要がある。
「既に王都内で噂を流してあります。娯楽に飢えていた者はもちろんですが、下町のご夫人は参加されるでしょうね?なんせ平民の中でも奥方を虐待するパターンは少なくありません」
「君は以前から奥方が一方的に傷つけられながらも法律の所為で夫が有利になるのを嘆いていたな」
「はい、ですから奴らを見せしめにします。そして…」
「この裁判で妻に虐待をした末路を知らしめ、法律を変えます。いいえ変えて見せます」
意思の強そうな瞳だった。
「私は幼い頃、父とその家族の精神的虐待で母は自殺に追い込まれました。なのに、父も祖父母も罪に問われることはありませんでした。それどころか母の財産は根こそぎ奪い、私達を捨てました」
「惨いな…」
「あの男は死に際に悪態を吐き葬儀で唾を吐き捨て罵倒をしたのです。その横顔が彼らとそっくりです」
ジャンがここまで必死になるのは母君の無念を晴らしてやりたい。
そして同じ犠牲者を増やしたくないという強い思いがあったのかもしれない。
「法廷では感情を出しません」
「頼りにしてるよ」
こうして私達は何度もシナリオを読み返しながら万全の状態で本番に臨むことにした。
もちろん、今回の計画に賛同してくれた協力者も一緒だ。
「伯爵様!」
「スコット先生、奥方もこの度は…」
「何も言わないでください。私達はすべての妻代表です」
「この裁判は私達の娘の為でもあります」
年頃の親を持つ母とはこういう人達の事を言うのだろうな。
これだけ心強い協力者はいないと思いながら私達は裁判に臨んだのだった。
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