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78伯爵閣下の裁き~ヨハネスside①
しおりを挟むすべての問題が片付き、新聞を見開きながら私は笑みを浮かべる。
「嬉しそうですね旦那様」
「ああ、嬉しいよ」
庭を見ると、愛しい妻は日向ぼっこをしていた。
傍には小さな赤ん坊。
私と彼女の間にできた愛の結晶だ。
「裁判の詳細はリサの耳に入らないようにしているが、後数日もすれば入るだろうな」
「はい…ですが、もう関係ありませんわ」
「ああ」
リサには嘘をついておいた。
例の寄生虫一家に関しては私も詳しくし知らないと言っている。
これ以上あの一家に振り回されたくないからだ。
「マミー、ジャンにはそれなりの礼をしなくてはならない」
「はい」
「彼が裁判で徹底的に叩き潰してくれたのだからな」
あの裁判を思い出すと笑みがこぼれる。
あの滑稽な一家は公の場で自分達の愚かさをアピールしてくれたのだから。
「勝ちが決まった裁判程面白くないが、茶番劇としては中々だ」
「旦那様もお人が悪うございますね」
「彼らのおかげで私の性格はひねくれたよ」
過去の私に言ってやりたい。
何かを手に入れるには優しいだけではだめだ。
正しいことをしているだけではだめなのだと。
「私もまだまだ甘かったと認識したよ」
「それでいいのでは?」
「だが、大切なものを守る為には時には鬼にならなくては。いい勉強になったよ」
あの男にそれを教わった。
最終的には感謝しているがな?
「そうですわ。旦那様にお手紙が来ておりますが」
「誰だ」
「例のお節介おばさんです。なんでも奥様と旦那様をめぐり合わせたのは自分だとか言っている馬鹿な方です」
「チッ!」
思わず舌打ちをしたくなる。
そもそもシンパシー家に嫁がせるように仕組んだ人物じゃないか。
「あのババアが余計な真似をしなければここまでややこしくなることはなかったんだ」
「旦那様、人の所為にしないでください」
「お前はどっちの味方だ」
「勿論旦那様ですわ」
口ではそういいながら私の味方をしないマミーに恨み言をいいたくなる。
「もっと早く行動すればよかったのですわ」
「くっ…」
こう言われては何も言い返せない自分が情けない。
過去の私は本当に馬鹿だった。
愛する人の手を自分で離して、かといって諦めきれるわけがなかったというのに。
「結果的に良かったですが、たまたま運が良かったのと。マリー様の行動によりです」
「ああ…」
マリーが背を押してくれなければ。
もしグレイス夫人に出会わなかったらこうも上手く行かなかっただろう。
「裁判に矢面に立ってくださったグレイス様には感謝ですわ」
「そうだな」
茶番劇のような裁判を思い出しながら改めてグレイス夫人に感謝したくなった。
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