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③
しおりを挟むお嬢様の挙式が終わってからも私達の周りでお祝い事が続いた。
長らく独身だった現皇帝陛下が、婚約を発表した。
何でも相手は隣国の王女殿下で恋愛結婚だったそうだ。
外交的にも、良縁だったので先帝陛下は両手を上げて喜ぶ一方で、一部ではその婚約をよく思わない貴族もいたそうだ。
理由は王女殿下は男尊女卑を時代遅れと考え、女性こそが前に出るべきと考えているのだ。
これまで女性を下に見ていた官僚も、王女殿下が王妃となれば政治にも口出しができるだろうし、平等な判断をされればこまるのだ。
しかも王女殿下の祖国では王族はある程度の年齢になるまでは市民に交じって民の生活を学ぶことが定められている。
その為身分で差別を毛嫌いし、この世で最も許せない行為は女子供を虐げる行為だとか。
他国では少ないが王女殿下の祖国では虐待は最も重い罪であり、夫が妻に手を上げたことで刑務所行きになったり、多額の賠償金を請求されたケースも少なくない。
先々代から君主が女性となったことから改変されたとか。
「タイミングが良かったな」
「はい…そうなると現在刑務所に入っている彼らは」
「ああ、本当に運が良かったな」
もし、少しのタイミングがずれていたらシンパシー家は極刑だっただろう。
「彼らはまだマシだろうな?なんせ今は世界で最も安全な場所にいるのだから」
ある意味塀の向こう側は安全だろう。
否定はしない。
「まぁ、一時的だが」
「ある程度の期間がすぎれば牢から出されるのですよね」
「ああ…犯罪者にとって牢から出た瞬間が地獄の始まりだ」
屈辱だという人はいるけど考え方によれば牢の中に入れは雨風はしのげて食事も用意されているのだから。
「塀の外は怖いだろうな。陰口で人を殺せる」
「ええ…」
彼らはいい意味でも悪い意味でも世間知らずなのだから。
「まぁ牢の中も身体的には平和だろうが、精神的にはどうだろうね」
「精神的…ですか?」
「ああ」
私は彼らが今どうしているかなんて詳しく知らないし、知る必要もないから聞こうとも思わなかった。
だってもう関係ないのだから。
けれど私は知らなかった。
彼らは私が思う以上の多くの人を苦しめ、追い詰めていたことにより制裁を受けることになったということを。
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