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③
しおりを挟む私は自分の認識の甘さを今日ほど恨んだことはないわ。
翌日、首都内で新聞がバラまかれていた。
『号外、ティンファニー伯爵の婚約!』
婚約式はひっそり行ったはずがいかにもプロが撮ったような写真が載せられていたのだ。
「あの時既に用意していたのね」
「ああ、こうなるとスコット先生も協力者だな」
ああ、頭が痛い。
スコット先生は小さな結婚式のお手伝いをしたいと名乗り出てくれて、懇意にしている聖職者がいるので婚約式は任せて欲しいと言われた。
他にも色々手配を任せて欲しいと言われたけど。
「なんのために小さな結婚式にしたか解らないわ」
「既にパレードの準備は終わっているようだ」
もし中止にしたら暴動が起こるかもしれない。
「先生、女は度胸ですわ。盛大にお祝いすべきですわ」
「マリー!お前という奴は」
「これで新しいシンデレラストーリーができましたわね?女性だってチャンスがあると」
「うっ…」
「このまま盛り上げてカビの生えた男尊女卑をぶっこわすのです!」
気合を入れたお嬢様がふと落としたのは…
玉の輿に乗っかった女性の物語だ。
またしてもそんな過激な本を読んだのね!
「このまま先生が伯爵夫人となり閉ざされた皇室を変えれば私の野望は達成されるわ!後ろ盾に私がなればいいんだし。侯爵夫人として男どもの尻を叩きまくるわ」
「頼むから止めてくれ…」
本当にやりそうで怖いわ。
未だに男尊女卑が激しい世の中だから変えたいという気持ちは痛うほど解る。
解るのだけど!
あまりにも急ぎ過ぎのような気がする。
「さぁ!バンバンやりますわ」
「やるって、今度は何をする気だ!待ちなさい」
旦那様は真っ青になりながらも必死で追いかけるも、お嬢様の脚力がレベルアップした気がするわ。
コルセットをしている状態であそこまで走れるなんてすごいわ。
感心しながら見ていると。
「失礼します」
「マミー?」
「お客様がいらしております」
「え?」
私にお客様なんて誰かしら?
「お通しして」
「はい」
「失礼します」
扉越しに聞こえた声に顔をあげる。
「グレイスさん!」
「ご無沙汰しております」
あの騒動からどうされているか心配だった。
直接会うのは難しいし、私の結婚式の準備でバタバタしていたこともあるけど。
「この度はおめでとうございます」
「いいえ…こちらこそ」
「今更でございますが、なんとお詫びをしていいか」
本当に今更だけど。
グレイスさんが悪いわけではないのに。
「ライアスさんはお元気でそうね」
「はい、新しい職場は片親にも優しい方で」
無事に離縁になったけど、片親ということで育児も大変だろうと思ったけど。
ライアスさんの働きぶりを気に入った新たな雇い主はベビーシッターをつけてくれたとか。
グレイスさんもできるだけ協力はしているようで、生活は問題ないようだ。
本当に良かった。
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