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②
しおりを挟む無礼な弁護士は無慈悲にも僕たちを奈落の底に叩き落すような真似をした。
「離縁にかんしては奥様の許可は必要ありません。夫に虐待をしたという事実確認がありますので」
「は?」
「精神的な虐待、金銭的な虐待ですから…」
「そんな!」
姉さんは無実だと叫んでいるが嘘で塗り固められてきた証言は意味がない。
「私は何もしてないわ」
「何もしなかったのが問題なのがまだ解らないのかしら?本当に女性を見る目がなかったのね」
「こればかりは何も言えないよ母さん」
姉さんを他所に義兄とその母親は既に離縁をするのは決定的なようだった。
まずい…
このままだと僕たちはどうなるんだ?
「母さん、父さん!このまま…って!父さん?」
なんとかこの場を逃れなくてはならない。
姉さんの問題にこれ以上巻き込まれてたまるものかと思ったが隣で父さんが死んだ魚のような表情をしていた。
本当に使えないな!
「待ってくれ!」
「ロンド?」
こうなったら僕だけでも逃げないと。
嘘をついて酷いことをしていたのは姉さんだ。
だから僕は関係ない。
いや、むしろ姉さんの所為で酷い目に合ったんだから被害者じゃないか?
そうだ。
僕は何も悪くないんだ。
「僕は関係ない」
「ロンド!何を言うの…」
「だってそうじゃないか。姉さんが自分で招いたことだ…大体姉さんがやりたい放題して僕はとばっちりを受けたんだ!離縁するなら勝手にすればいいし、慰謝料も、教育費も姉さんが支払えよ。だけど家族を…僕を巻き込まないでくれ!」
どうして僕が姉さんの尻ぬぐいをする必要があるんだ?
おかしいじゃないか!
「結婚して別の家庭を持っているなら関係ない…これ以上僕を巻き込むな!破滅するなら一人でしろよ!姉さんの所為で僕の生活はメチャクチャにしたんだからな!」
姉さんがミレイの育児を丸投げしなければ今頃笑っていたはずだ。
同居だってしなければ余裕のある暮らしをしていたんだ。
「全部姉さんの所為だ!母親の自覚もないくせに子供なんて作るから」
「アンタ!」
「姉さんは昔から母さんに媚びて、学校だって行かせてもらって…優秀じゃない癖に!」
母さんの口癖は姉さんは優秀だからって言っていたけど、学校だって実力で入ったか怪しい。
「昔から男を誘惑することは天才的だったからな」
「なんてことを言うのよ!」
「自分の我儘を通すために近所の男を誘惑していたしな!学校だって体を使ったんじゃないか?仕事だってそうだろ?」
ずっと姉さんが嫌いだった。
長男の僕よりも長女の姉さんを優遇して甘やかし続けた母さんも悪い。
僕は被害者なんだ!
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