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言われてすぐは理解できなかった。
同居を解消するのはいいとして、何故私が出て行かなくてはならないのか。


「この家は…」

「ここは私と夫の家です。お義母さんは居候のくせに!私達が養ってあげておるのに上から目線で!何様ですか!」


この家の名義はまだ私のままだ。
なのに何を勘違いをしているのか、どうして私が出て行かなくてはならないの。


「出て行ってよ!この鬼嫁!」


「ふぇぇぇん!」

ベッドで眠っているミレイにも見向きもしないで私を締め出した。


私は懇意にしている修道院に身を寄せた。
育児で精神的に追い詰めれらていたのかもしれない。

一度冷静に話し合うべきだと思った。


「話し合いをしても無駄でしょうけど…」


心の底ではわかりあるなんてことはできない。
そう感じながらも少しだけ距離を取ろうと思った。


同居は無理でも、あの家は私の宝物。
大切な思い出が詰まっているのだから取り返さなくては。


「それにしても、また実家に帰るのかしら」


ミレイが生まれてすぐは私もお世話をしていたけど、お世話の仕方で口論になり。
一時期は実家に身を寄せていた。

それからというもの頻繁に実家に戻るようになり、近所からも良くないうわさが流れている。
仕事も制限していたけど、このままでは仕事先からも見捨てられるわ。



何もできない自分に情けなくなりながら、修道院に滞在して三日後。
友人が真っ青になって私に会いに来た。


「グレイス!大丈夫!」

「私達が不在の間にこんな…」


ミレイの出産を手伝ってくれた友人達だった。


「顔色が悪いわ」

「なんて酷いこと!」


二人は私を信じてくれている。
今頃私が一人で家を出た酷い姑だいいふらしているでしょうけど。


解ってくれる人がいる。
だから耐えることができるけど、息子が帰る前に家を出ることになるなんて。


「弁護士に頼みましょう。第一、あの家は貴方の名義でしょ?」

「ゆくゆくは息子に譲る予定だったけど、何を勘違いしたのかしらね?」


実子ではない彼女が自分のものになることはない。
なのに、夫の物は自分の物とでもいいたいかのかしら?母親に似て本当に図々しいく図太い人。

「グレイス、今は休養が必要だわ」

「そうね。まずは息子さんに帰って来てもらわないといけないのだけど…辺境地で若様が馬鹿をやらかしたせいで帰るのが遅れているのよ」

「本当になんてことをしてくれたのかしら?あの女も許せないけど息子も同罪よ」


あまりあの子に厳しく言わないでほしいわ。
安請け合いをしたのは私なのだから。


でも一度気分を切り替えるのもいいかもしれない。

そう思っていた私に素敵な出会いが訪れた。

可愛らしいお嬢様と若い家庭教師との出会いだった。




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