99 / 169
⑧
しおりを挟む嫁姑の関係は難しい。
自分の時で嫌というほど実感しているからこそ友人に頼んだのが間違いだった。
とはいえ、当人である息子は厄介な仕事を任され傍に入れなくなった。
事情を後から聞いた息子すぐに戻ってきてくれた。
「母さんごめん」
「私はいいのよ…でも」
明らかに顔色が悪く寄せている息子。
無理もないわ。
今回、辺境地に派遣されたのは、仕えている主の遠縁にあたる貴族のご子息が領地経営がまるでなっておらず、挙句の果てに感染病で、どうにもならい状況だった。
そこに白羽の矢が立ったのが息子だった。
会計士として優秀な息子になんとか領地を立て直せるように支えて欲しいと言われたのだけど、簡単ではなかった。
当初、辺境地に行く際には。
「いやよ!そんな不便な土地!行きたいなら貴方一人で行ってよ!ちゃんと仕送りはしてよね」
「しかし…」
「できないの?妻と息子を守ることもできないなんて!」
婚約した当初は辺境地に行くなんて思わなかった。
だが事情が変わってしまったのだ。
しかも本来辺境地に行くはずだった使用人は事故で寝たきり状態になり息子が行かざる得なかった。
だましたわけではないのにこんな言いよう。
「行きなさい」
「母さん?」
「サンディさんのことは私に任せなさい」
正直、なんとかできる自信はない。
でも、会計士として認められるかの瀬戸際だし、万一一緒に連れて行ってもどうなるか明白。
「母さんごめん」
「ただ、私のできる限りはするけど…私も人づきあいが上手い方じゃないわ」
長年教職をしているけど、決して同性に好かれやすいわけじゃない。
世渡り上手とは言わないけど、なんとかするかしかない。
「でもね…考えて欲しいの」
「え?」
「貴方が選んだ人だから私がどうこう言うのは間違いかもしれない。でも生涯を共にする相手かどうか…一度離れてちゃんと見極めなさい」
正直私はサンディさんと上手くやれる気がしない。
けれど息子の仕事を応援したい。
悩みに悩んだ結果だ。
「お役目をしっかり果たしなさい」
「母さんありがとう…」
こうして私は息子の旅立ちを見送り慣れない同居生活が始まった。
しかし同居生活は精神的にも肉体的にも苦難の日々だった。
「お義母さん!こんな飲み物飲めません!」
「お腹を冷やすでしょう」
まずつわりが酷いので日中のお世話は私がして。
食事に関しても好き嫌いが激しく文句の連続だった。
それでも耐えたのに、サンディさんは隣近所で私の悪口を言い出すようになった。
嫁に厳しすぎるとか、毒親などと言って。
ただ近所の人たちは私の味方で相手にされなかったけど。
予定日になっても子供が生まれず、ストレスがたまる所為だと言われるのにも耐えた。
ようやく孫が生まれたかと思った矢先。
「同居を解消させてください」
「はい?」
「お義母様との生活はもう耐えられません!」
そう言って私を追い出したのだ。
1,752
お気に入りに追加
5,133
あなたにおすすめの小説

夫から「余計なことをするな」と言われたので、後は自力で頑張ってください
今川幸乃
恋愛
アスカム公爵家の跡継ぎ、ベンの元に嫁入りしたアンナは、アスカム公爵から「息子を助けてやって欲しい」と頼まれていた。幼いころから政務についての教育を受けていたアンナはベンの手が回らないことや失敗をサポートするために様々な手助けを行っていた。
しかしベンは自分が何か失敗するたびにそれをアンナのせいだと思い込み、ついに「余計なことをするな」とアンナに宣言する。
ベンは周りの人がアンナばかりを称賛することにコンプレックスを抱えており、だんだん彼女を疎ましく思ってきていた。そしてアンナと違って何もしないクラリスという令嬢を愛するようになっていく。
しかしこれまでアンナがしていたことが全部ベンに回ってくると、次第にベンは首が回らなくなってくる。
最初は「これは何かの間違えだ」と思うベンだったが、次第にアンナのありがたみに気づき始めるのだった。
一方のアンナは空いた時間を楽しんでいたが、そこである出会いをする。

村八分にしておいて、私が公爵令嬢だったからと手の平を返すなんて許せません。
木山楽斗
恋愛
父親がいないことによって、エルーシャは村の人達から迫害を受けていた。
彼らは、エルーシャが取ってきた食べ物を奪ったり、村で起こった事件の犯人を彼女だと決めつけてくる。そんな彼らに、エルーシャは辟易としていた。
ある日いつものように責められていた彼女は、村にやって来た一人の人間に助けられた。
その人物とは、公爵令息であるアルディス・アルカルドである。彼はエルーシャの状態から彼女が迫害されていることに気付き、手を差し伸べてくれたのだ。
そんなアルディスは、とある目的のために村にやって来ていた。
彼は亡き父の隠し子を探しに来ていたのである。
紆余曲折あって、その隠し子はエルーシャであることが判明した。
すると村の人達は、その態度を一変させた。エルーシャに、媚を売るような態度になったのである。
しかし、今更手の平を返されても遅かった。様々な迫害を受けてきたエルーシャにとって、既に村の人達は許せない存在になっていたのだ。

ごめんなさい、お父様が選んだ相手でも婚約したくありません。
Mayoi
恋愛
貧乏貴族の令嬢ミシェルは父親が勧める相手と縁談することになった。
相手のダグは商人を自称するものの、信用できるような相手ではなかった。
婚約したくないと言おうが父親は許さず、ミシェルはどうにかして婚約を回避しようとした。

【完】お義母様そんなに嫁がお嫌いですか?でも安心してください、もう会う事はありませんから
咲貴
恋愛
見初められ伯爵夫人となった元子爵令嬢のアニカは、夫のフィリベルトの義母に嫌われており、嫌がらせを受ける日々。
そんな中、義父の誕生日を祝うため、とびきりのプレゼントを用意する。
しかし、義母と二人きりになった時、事件は起こった……。

【完結】毎日記憶がリセットされる忘却妻は、自称夫の若侯爵に愛されすぎている。
曽根原ツタ
恋愛
見知らぬ屋敷で目覚めたソフィアは、ユハルと名乗る美貌の侯爵に──三年前から契約結婚していると告げられる。さらに……
「結婚後まもなく、風邪を拗らせた君は、記憶を一部喪失し、少々珍しい体質になったんだ。毎日記憶がリセットされる──というね。びっくりだろう?」
自分のことや家族のことはぼんやり覚えているが、ユハルのことは何ひとつ思い出せない。彼は、「義理で世話をしてるだけで、僕は君を愛していない」と言う。
また、ソフィアの担当医師で、腹違いの義姉のステファニーも、ユハルに恋心を寄せており……?
★小説家になろう様でも更新中
★タイトルは模索中
【完結】不貞された私を責めるこの国はおかしい
春風由実
恋愛
婚約者が不貞をしたあげく、婚約破棄だと言ってきた。
そんな私がどうして議会に呼び出され糾弾される側なのでしょうか?
婚約者が不貞をしたのは私のせいで、
婚約破棄を命じられたのも私のせいですって?
うふふ。面白いことを仰いますわね。
※最終話まで毎日一話更新予定です。→3/27完結しました。
※カクヨムにも投稿しています。
王太子に求婚された公爵令嬢は、嫉妬した義姉の手先に襲われ顔を焼かれる
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」「ノベルバ」に同時投稿しています。
『目には目を歯には歯を』
プランケット公爵家の令嬢ユルシュルは王太子から求婚された。公爵だった父を亡くし、王妹だった母がゴーエル男爵を配偶者に迎えて女公爵になった事で、プランケット公爵家の家中はとても混乱していた。家中を纏め公爵家を守るためには、自分の恋心を抑え込んで王太子の求婚を受けるしかなかった。だが求婚された王宮での舞踏会から公爵邸に戻ろうとしたユルシュル、徒党を組んで襲うモノ達が現れた。

離婚したらどうなるのか理解していない夫に、笑顔で離婚を告げました。
Mayoi
恋愛
実家の財政事情が悪化したことでマティルダは夫のクレイグに相談を持ち掛けた。
ところがクレイグは過剰に反応し、利用価値がなくなったからと離婚すると言い出した。
なぜ財政事情が悪化していたのか、マティルダの実家を失うことが何を意味するのか、クレイグは何も知らなかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる