98 / 169
⑦
しおりを挟むこの時私は最悪な選択をしてしまったのではないだろうか。
そう思えてならなかった。
夫婦の形はそれぞれで、これだということはない。
だけど元姑と同類の母親に溺愛され育ったサンディさんはとても我儘だった。
環境が違うのだから仕方ないのだけど。
息子の仕事が多忙で家に帰るのは夜遅くで出勤は朝早く。
最初こそは見守っていた。
手伝ってあげたいけど、ここで私がしゃしゃり出るのは良くないわ。
私の時の前例があるから。
けれど、事態が変わったのはサンディさんが子を身ごもったのだ。
今までのようにはいかなくなった。
私は使用人の派遣をしたり妊婦のお世話をしてくれる友人に頼み込んだ。
気のいい人たちで、快く引き受けてくれたのだ。
その代わりちゃんとお給金を支払い、私が勤めている学校に入れるように手配をした。
「本当にごめんなさいね」
「グレイス先生の頼みなら断れませんよ」
「そうです。それに臨時収入と思えばね?」
医療の明るい元同僚と、一時は宮廷官僚補佐として働いていた経験のある友人は頼もしかった。
これまで問題のある主に仕えていたので精神力、忍耐力もあるようだったが。
「お義母さん!こんな使えない人を派遣して嫌がらせなんですか!」
「は?」
所が、サンディさんは私の友人のサポートをことあるごとに文句を言い。
友人を侮辱した。
「妊娠中の私に嫌味三昧ですよ!これじゃあ流産するわ」
「そんな!私は妊娠中は少しの運動も必要だと…」
「それにもう少し食事も気を配るべきだと…」
二人は良かれと思いした行動はサンディさんにとっては嫌がらせだと言い出したのだ。
「それにご友人なのにお金を払うなんて…最低だわ」
「なっ…何を言うの!正当な報酬額よ」
「お義母様は世間知らずなんですね」
この言い草。
到底我慢できるものではないわ。
それに二人には本来支払うはずの報酬額よりも少なめだった。
友人なのだからと言ってくれたのよ。
「通常、医療の資格を持つ方を雇うのにどれだけの費用が掛かると思っていて?」
「その程度も支払えないんですか。当てがはずれたわ…夫は役立たずだし」
「グレイス、私はこんなモンスターは初めてよ」
「ええ…」
二人も心底疲れ切った表情だった。
私は急ぎ息子に手紙を書き、できるだけ早く帰るように伝えた後に私が出産の手伝いをすることにした。
友人には本当に悪いことをしたと思った。
けれどそれが、私が家を出ていくことになるのだった。
1,769
お気に入りに追加
5,151
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
自分勝手な側妃を見習えとおっしゃったのですから、わたくしの望む未来を手にすると決めました。
Mayoi
恋愛
国王キングズリーの寵愛を受ける側妃メラニー。
二人から見下される正妃クローディア。
正妃として国王に苦言を呈すれば嫉妬だと言われ、逆に側妃を見習うように言わる始末。
国王であるキングズリーがそう言ったのだからクローディアも決心する。
クローディアは自らの望む未来を手にすべく、密かに手を回す。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
離婚したらどうなるのか理解していない夫に、笑顔で離婚を告げました。
Mayoi
恋愛
実家の財政事情が悪化したことでマティルダは夫のクレイグに相談を持ち掛けた。
ところがクレイグは過剰に反応し、利用価値がなくなったからと離婚すると言い出した。
なぜ財政事情が悪化していたのか、マティルダの実家を失うことが何を意味するのか、クレイグは何も知らなかった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
皆さん勘違いなさっているようですが、この家の当主はわたしです。
和泉 凪紗
恋愛
侯爵家の後継者であるリアーネは父親に呼びされる。
「次期当主はエリザベスにしようと思う」
父親は腹違いの姉であるエリザベスを次期当主に指名してきた。理由はリアーネの婚約者であるリンハルトがエリザベスと結婚するから。
リンハルトは侯爵家に婿に入ることになっていた。
「エリザベスとリンハルト殿が一緒になりたいそうだ。エリザベスはちょうど適齢期だし、二人が思い合っているなら結婚させたい。急に婚約者がいなくなってリアーネも不安だろうが、適齢期までまだ時間はある。お前にふさわしい結婚相手を見つけるから安心しなさい。エリザベスの結婚が決まったのだ。こんなにめでたいことはないだろう?」
破談になってめでたいことなんてないと思いますけど?
婚約破棄になるのは構いませんが、この家を渡すつもりはありません。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
正妃である私を追い出し、王子は平民の女性と結婚してしまいました。…ですが、後になって後悔してももう遅いですよ?
久遠りも
恋愛
正妃である私を追い出し、王子は平民の女性と結婚してしまいました。…ですが、後になって後悔してももう遅いですよ?
※一話完結です。
ゆるゆる設定です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
だってお義姉様が
砂月ちゃん
恋愛
『だってお義姉様が…… 』『いつもお屋敷でお義姉様にいじめられているの!』と言って、高位貴族令息達に助けを求めて来た可憐な伯爵令嬢。
ところが正義感あふれる彼らが、その意地悪な義姉に会いに行ってみると……
他サイトでも掲載中。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
平民の娘だから婚約者を譲れって? 別にいいですけど本当によろしいのですか?
和泉 凪紗
恋愛
「お父様。私、アルフレッド様と結婚したいです。お姉様より私の方がお似合いだと思いませんか?」
腹違いの妹のマリアは私の婚約者と結婚したいそうだ。私は平民の娘だから譲るのが当然らしい。
マリアと義母は私のことを『平民の娘』だといつも見下し、嫌がらせばかり。
婚約者には何の思い入れもないので別にいいですけど、本当によろしいのですか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる