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④
しおりを挟む貴族の娘であることが誇りだった姑は根っからのお嬢様だった。
貧しくなっても自分の生活スタイルを変えることができず、自尊心だけは強かった。
泣けばなんでも許されていた。
そんな姑が嫌いだった。
だけど私は努力した。
すべては愛する夫の為に、仲良くなろうと努力したけど。
私の母は元はお針子。
苦労しながらも必死で生きてきた。
殿方に頼ることを良しとせず自立した女性。
そんな母に惹かれて父は結婚を申し込んだのだ。
二人は愛し合って結婚してもどちらが上とかはなかった。
でも夫の実家は違う。
何度も私の価値観を否定され、そして言われ続けた言葉がある。
今でも忘れない言葉。
――貴女は本当の娘じゃないから!
この言葉にどれだけ傷つけられてきたか。
今でもはっきり覚えている。
「グレイスさん!お願い…止めて頂戴!貴女なら解ってくれるわね?私の娘なんですもの」
私に縋り涙を流す姑。
もう姑じゃないわね。
本当の他人になるのだから。
「お義母様」
「グレイスさん」
「貴女は本当の娘じゃない…」
「え?」
あの時の言葉を今はっきり伝えよう。
「初めて会った時からずっと言われてきました。私も貴女を母とは思いませんし思いたくありません」
この時の私の笑顔は氷のように冷たかったかもしれない。
鏡を見ないと解らないけど、元姑の表情が物語っていたのだから。
「本当の他人に戻りましょう?戸籍も抜いて本当の他人に…この家を汚した嫁は不要でしょう?」
「何を…」
「私も初めて会った時から貴女を軽蔑していました」
嫌いなんて感情はない。
だってこの人にそこまでの感情を抱いていない。
嫌悪感は抱いているけど。
「ごきげんよう。奥様」
「グレイスさん!貴女は!」
泣いていたかと思えばその目は怒りで満ちていた。
でももういい。
縁を切ると宣言した夫を見てはっきり告げる。
「お金の無心に来るような恥ずかしい真似はなさらないでくださいね?」
「このくそ嫁がぁぁぁ!」
元義兄が怒り狂って私に殴りかかろうとするも。
その手は私に触れることも敵わなかった。
「ぎゃああ!」
「行儀が悪いわよ?屑男」
咄嗟に懐から鞭を取り出した。
「護身用術もできないなんて最悪ね」
身を守るために常に隠していた鞭で拘束する。
「痺れるよグレイス」
「あら?教師の嗜みですわ」
「惚れ惚れするよ」
嬉しそうに微笑む夫に苦笑する。
第三者が見たら私を悪妻というかもしれない。
でも一番愛する人に理解して貰えたのならそれでいい。
「待ちなさい!」
背後で元姑が泣き叫ぶ声が聞こえながらも私達は無視をして邸を出た。
その三日後に住んでいる家を売却して実家に移り住み、子供を出産した。
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