今日で都合の良い嫁は辞めます!後は家族で仲良くしてください!

ユウ

文字の大きさ
上 下
94 / 169

しおりを挟む





いずれ授かれたらと思った。
だけど既に授かっていたなんて知らなかった。


「本当に?」

「ああ、君は子供を身ごもっているだからこそ。こんな環境はお腹に子に悪いし、僕も皇室家庭教師に選ばれたんだ」


「まぁ…皇室家庭教師に!」


平民である教師が皇室に招かれるなんて確率は少ない。
なのにすごいわ!


「音楽教師として、是非にと言われてね。これで収入も上がるし、君に楽をさせてあげられる」


教職の収入は高くない。
貴族のい邸で家庭教師をしていれば別だが、一般の学校では食べていくのでやっとだ。


でも皇室家庭教室となれば待遇も良く、住まいも保証してくれる場合もあるのだから。



「ずっと僕の為に我慢をさせてごめん。でももういいんだ。もう耐えなくていい」


「貴方…」

「弱い立場の人間を傷つけ悦に浸るような醜い心を持った大人の周りに大事な我が子を見てどう思うか。僕はこんな汚らわしい人間の…魔の巣窟を子供に見せたくないんだ」


「なんですって!」

「貴様!何様だ!」


夫の言葉に義兄と姑が大激怒した。
これまで見下していた弟が反抗したと思っていたのか。


でも本当は違う。
夫は結婚当初から私への扱いの酷さに我慢できず、親子の縁を切ろうかと考えていたのだ。


だけど、人間相性というものがある。
だから止めたけど、もう限界だったのかもしれない。


皮肉な事に夫は限界で、子供を授かった事で縁を切る覚悟ができてしまった。



「待って…考え直して」

「そうだ!子爵家の後ろ盾を失うのだぞ」

「借金地獄の後ろ盾などいりません。遺産も相続放棄します。ですが、借金の方が遺産よりも多いでしょうが」

「何…」


夫の実家はずいぶん前に傾き、それでも姑は金遣いが荒く慎ましやかな生活ができなかった。
一度覚えた贅沢は忘れることができず、借金は膨れ上がっていた。


義兄は知らなかったのね。


知っていたのなら…


「母上、借金はどの程度あるんですか」

「解らないわよ!そんなの」

「自分が作った借金、それから見栄を張る為に兄上に援助しようとした借金、父上が愛人に貢いだ借金。ああ兄上が娼館に通った借金も肩代わりしてましたね」


「止めて…止めてよ」


優しい夫はこれ以上ないほど怒っていた。
ここまで暴露すると言事は縁を切るのは決定打ということね。


「何で…うわぁぁぁん!」

「いい大人が泣かないでください。泣けば思い通りになるなんて思わないでください」


その日、夫は家族と完全に縁を切り婿入りをしたのだった。


しおりを挟む
感想 452

あなたにおすすめの小説

自分勝手な側妃を見習えとおっしゃったのですから、わたくしの望む未来を手にすると決めました。

Mayoi
恋愛
国王キングズリーの寵愛を受ける側妃メラニー。 二人から見下される正妃クローディア。 正妃として国王に苦言を呈すれば嫉妬だと言われ、逆に側妃を見習うように言わる始末。 国王であるキングズリーがそう言ったのだからクローディアも決心する。 クローディアは自らの望む未来を手にすべく、密かに手を回す。

いや、あんたらアホでしょ

青太郎
恋愛
約束は3年。 3年経ったら離縁する手筈だったのに… 彼らはそれを忘れてしまったのだろうか。 全7話程の短編です。

皆さん勘違いなさっているようですが、この家の当主はわたしです。

和泉 凪紗
恋愛
侯爵家の後継者であるリアーネは父親に呼びされる。 「次期当主はエリザベスにしようと思う」 父親は腹違いの姉であるエリザベスを次期当主に指名してきた。理由はリアーネの婚約者であるリンハルトがエリザベスと結婚するから。 リンハルトは侯爵家に婿に入ることになっていた。 「エリザベスとリンハルト殿が一緒になりたいそうだ。エリザベスはちょうど適齢期だし、二人が思い合っているなら結婚させたい。急に婚約者がいなくなってリアーネも不安だろうが、適齢期までまだ時間はある。お前にふさわしい結婚相手を見つけるから安心しなさい。エリザベスの結婚が決まったのだ。こんなにめでたいことはないだろう?」 破談になってめでたいことなんてないと思いますけど?  婚約破棄になるのは構いませんが、この家を渡すつもりはありません。

離婚したらどうなるのか理解していない夫に、笑顔で離婚を告げました。

Mayoi
恋愛
実家の財政事情が悪化したことでマティルダは夫のクレイグに相談を持ち掛けた。 ところがクレイグは過剰に反応し、利用価値がなくなったからと離婚すると言い出した。 なぜ財政事情が悪化していたのか、マティルダの実家を失うことが何を意味するのか、クレイグは何も知らなかった。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

側妃契約は満了しました。

夢草 蝶
恋愛
 婚約者である王太子から、別の女性を正妃にするから、側妃となって自分達の仕事をしろ。  そのような申し出を受け入れてから、五年の時が経ちました。

平民の娘だから婚約者を譲れって? 別にいいですけど本当によろしいのですか?

和泉 凪紗
恋愛
「お父様。私、アルフレッド様と結婚したいです。お姉様より私の方がお似合いだと思いませんか?」  腹違いの妹のマリアは私の婚約者と結婚したいそうだ。私は平民の娘だから譲るのが当然らしい。  マリアと義母は私のことを『平民の娘』だといつも見下し、嫌がらせばかり。  婚約者には何の思い入れもないので別にいいですけど、本当によろしいのですか?    

正妃として教育された私が「側妃にする」と言われたので。

水垣するめ
恋愛
主人公、ソフィア・ウィリアムズ公爵令嬢は生まれてからずっと正妃として迎え入れられるべく教育されてきた。 王子の補佐が出来るように、遊ぶ暇もなく教育されて自由がなかった。 しかしある日王子は突然平民の女性を連れてきて「彼女を正妃にする!」と宣言した。 ソフィアは「私はどうなるのですか?」と問うと、「お前は側妃だ」と言ってきて……。 今まで費やされた時間や努力のことを訴えるが王子は「お前は自分のことばかりだな!」と逆に怒った。 ソフィアは王子に愛想を尽かし、婚約破棄をすることにする。 焦った王子は何とか引き留めようとするがソフィアは聞く耳を持たずに王子の元を去る。 それから間もなく、ソフィアへの仕打ちを知った周囲からライアンは非難されることとなる。 ※小説になろうでも投稿しています。

処理中です...