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③
しおりを挟むお嬢様は本当に前向きだわ。
そして考え方が開けているといっても過言ではないかもしれない。
「私、やらないで悔やむなら全部してから悔やもうと思いますの!東の国ではこういう言葉があるのは知ってまして?当たって砕けろ!」
「砕けるな!」
「七転八起!いきあったりばったり!」
「前者はともかくとして後者は論外だ!」
前者はいいんだ。
こうして旦那様の苦労は増えていくのね。
なんとなく気の毒に思ってしまった。
でも、やる前に悔いるよりもその方がいいわ。
「私もやってみたいわ」
「は?」
「お嬢様のように全部できることをしてから後悔したいですわ」
「リサ、何か悩みがあるならどんどん言いなさい。君は我慢し過ぎた。もっと我儘になってくれ」
旦那様は私を甘やかせすぎな気もするけど。
もし許されるなら、私はミレイの事を手助けしてあげたい。
「旦那様このような時ですがよろしいでしょうか」
ミレイを彼らから引き離すのは簡単だけど、それは同時に親から引き離す行為になる。
サンディ様がどう思っているかは解らないけど、ミレイを施設に送ってはい終わりでは済まないのだから。
「実はある方に手紙を出したいのです」
私はシンパシー家の親族との付き合いがほとんどない。
サンディ様の夫である人面識はない。
結婚式はこじんまりとしたもので、お祝いの言葉と品を受け取った程度だし。
でも、手紙を受けた限りは良識のある良い方だという印象が強い。
サンディ様の義母の方もことは良く存じ上げないけど。
「現在シンパシー家は危うい状況下にあります」
「ああ、ロンド・シンパシーが仕事を解雇になったようだな」
「姉君も実家に戻って来たままです。実家がごたついているならば問題がでてきます」
これまでは比較的裕福な生活ができていただろうけど、シンパシー家の事情は負債が多く、生活費だけでなくその負債を私とロンドでなんとかしていた。
でも、私があの家を出たことで負担はロンドに行っているだろう。
シンパシー夫人が外で働くことや、倹約をするとは考えにくい。
そうなると生活苦になって、ミレイのお世話もままならない。
お世話がままならないだけならいいけど、ミレイに手を上げるなんてことになったら最悪な未来が予想される。
まだ赤ちゃんのあの子は逃げ道がないのだから。
「元義姉の旦那様に連絡を取っていただきたいのです」
だからこそ、私はお節介を焼くことにしたのだ。
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