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⑨
しおりを挟む泣き止まないミレイに姉さんは冷たい目を向ける。
「姉さん、やかましいよ!なんとかしてくれよ」
「アンタの姪でしょ…」
「何言っているんだ。子供の面倒は母や親が見るものだろ?常識だよ」
解りきったことを言うなんで。
「アンタ馬鹿なの?女だから母性本能が勝手に生まれるとでも思ったの?」
「だってどうだろ?母さん…」
「そうね…」
何だよ。
はっきりしない返事だな。
とにかくやかましい声を何とかしてほしい。
「わぁぁぁん!ぎゃあああん」
さらに泣き声が酷くなる一方だった。
ここ最近は夜泣きもひどく、姉さんがあやすこともなく母さんが代わりにあやしているけど、泣き止まない。
泣き疲れて眠ってしまうか、泣き続けるかのどちらかだった。
「サンディ、貴女は母親でしょ」
「母親だから、できて当然。母親だから子供の面倒はちゃんと見れる…じゃあ母さんはどうなのよ」
「何を…」
「私たちの世話は乳母に任せきりだったじゃない。だからミレイの面倒も満足に見れないんじゃない?」
「姉さん…」
確かに乳母がいたころは僕たちの面倒を見ていたけど。
でも、家が傾いてからは乳母も解雇したじゃないか。
なのに今更…
「リサちゃんに全部やらせていたものね…本当は腰が痛いんじゃなくてやりたくない。むしろできないの間違いじゃない」
「そんなことは…」
「だったら母さんがあやしてよ」
姉さんの言葉に母さんは後ずさる。
まるでできないと言っているかのようだった。
「できるわよ…それぐらい」
「じゃあ、あやしてよ」
母さんはミレイを抱き上げよいうとするも。
「ぎゃああん!」
「これ!動くんじゃないの!」
「やぁぁぁん!」
大暴れをするミレイ。
リサの時はこんなに暴れることはなかった。
抱き合上げれば泣き止んでいたのに。
ミレイはこんなに気難しかったか?
楽なんじゃなかったのか?
「おい!なんか匂うぞ」
「きゃあああ!」
おむつを替えてなかったのか、最悪な状態になっていた。
あまりの臭さに僕と父さんは距離を取る。
「ちょっと何とか…」
「母さんがしてよ」
結局そのあとおむつ交換をしようとするも大暴れして部屋の中は異臭で大変なことになった。
おむつは交換したが、泣き止まず、なぜ泣いているかわからないままだった。
母さんはミレイをあやすこともできず、母さんが育児一つ満足にできないことを再確認しただけだった。
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