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⑧
しおりを挟む物心つく前からシンパシー家は姉さんを中心に回っていたといっても過言ではない。
母さんが姉さんを溺愛していたからだ。
幼少期から優秀だったこともあるけど、町では一番の美人だともてはやされてきた。
母さんにとって姉さんは自慢だったのもある。
対する僕は姉さんに嫉妬心を抱くほどだったが、姉さんは特別だから我慢しないといけないと言われた。
何よりシンパシーのためだとも言われた。
子供のころは納得できないけど、成長する中で受け入れるようになった。
姉さんも母さんの期待に応えるべく頑張っていた。
そう思っていたのに。
「勉強だってどれだけお金をかけてあげたと思っているの!家が傾いても私は貴女の為に!」
「それがずっと重荷だったのよ…してあげている?冗談じゃないわ!」
泣きながら訴える母さんだったけど姉さんは冷たい目をしていた。
「子供のころから勉強を強いられ、少しでも嫌だとそぶりを見せれば母さんは泣いて、自分の横暴を通す。泣けばなんでも思い通りになると思っていたんでしょ…正直うんざりだったのよ」
「サンディ!貴女は一体どうしてしまったの!そんなことを言うのはサンディじゃないわ…うわぁぁん!」
「ほら、泣けば思い通りにあると思ってる」
互いの温度差が違い過ぎる。
僕が知る限り姉さんは母親思いだったはずなのに!
「私は母さんが面倒だからいうことを聞いたのよ…寄宿学校に入ったのも母さんの支配から抜け出せると思ったから」
「支配って…」
「町では母さんの悪評で私がどれだけ恥をかいたと思っているの」
氷のように冷たい目だった。
今まで見てきた姉さんはなんだったんだ?
こんな姉さん知らない…知りたくもない。
「私は母さんの商人欲求を満たすための道具じゃないわ!」
「酷い、酷すぎるわ!」
ハンカチを握りしめながら再び泣き出すがそのやかましさに奥の部屋にいるはずのミレイの鳴き声が聞こえた。
「ああああん!」
「もう…また泣き出して!」
耳をふさぐ姉さんは我が子なのに疎ましい表情をした。
子供に対する表情ではなかった。
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