74 / 169
③
しおりを挟む酒場からつまみ出された僕はそのままフラフラ歩いていた。
他所の店で飲みなおす気にもなれず帰ろうかと思っていた時だった。
学生時代の友人が屋台で飲んでいるのを見かけた。
声をかけようとしたが…
「本当にロンドの奴、馬鹿だろ」
「本当に、玉の輿だったのにさ」
「何でリサ嬢にあんな酷い真似を」
僕は立ち止まった。
まるで僕が馬鹿な真似をしたと言わんばかりだった。
「リサ嬢は学生時代から優秀で、学園始まって以来の優等生だったのにな」
「本来ならロンドなんかじゃ釣り合わなかったのにな」
「ああ、子爵夫人が目をかけているだけあって学問にも精通していたしな。つーか、俺狙ってたんだよな」
「お前もかよ!」
何の話だ。
リサが学生時代からモテていた?
彼らはリサが好きだった?
「けどよ、リサ嬢も災難だよな」
「貴族との婚姻は障害が多いからって世話好きのおばさんがロンドなんかを婚約者に選んだんだよな」
「あれ、絶対に嫌がらせだろ」
「ああ!リサ嬢の両親は子爵夫人と仲がいいからこれ以上力をつけて欲しくないって魂胆だ」
何だよそれ…
嘘だそんなの!
リサは僕を愛していた。
だからリサの両親が是非にと頼み込んだんだ。
だから!
「まぁリサ嬢も男を見る目がなかったんだろうな」
「リサ嬢は男慣れしてなかったしな。本当に可哀想だよな」
「あれで傷物だぜ。でも子供が出来なくて良かったんじゃね?」
「だな!子供がいたら人質にして死ぬまで牢獄行きだよな。ある意味命拾いしたっていうか」
僕が悪いような言い方。
どうして誰もリサを責めないんだ。
悪いのはリサだろ?
僕は何一つ非がないのに。
何より彼らは何所でそんな噂を。
噂自体がでっち上げに決まっている。
そうだ…
僕はリサに望まれたんだ。
決められた結婚なんかじゃない。
そう言い聞かせた。
きっとリサだって頭を冷やせば戻ってくる。
そう思っていたが、僕を待っていたのは…
「ロンド、今日限りで辞めてくれ」
理不尽な現実だった。
何も悪くない僕をどうして神様は虐めるのか。
こんな仕打ちを受けないといけないのか。
理解できなかった。
2,122
お気に入りに追加
5,171
あなたにおすすめの小説
皆さん勘違いなさっているようですが、この家の当主はわたしです。
和泉 凪紗
恋愛
侯爵家の後継者であるリアーネは父親に呼びされる。
「次期当主はエリザベスにしようと思う」
父親は腹違いの姉であるエリザベスを次期当主に指名してきた。理由はリアーネの婚約者であるリンハルトがエリザベスと結婚するから。
リンハルトは侯爵家に婿に入ることになっていた。
「エリザベスとリンハルト殿が一緒になりたいそうだ。エリザベスはちょうど適齢期だし、二人が思い合っているなら結婚させたい。急に婚約者がいなくなってリアーネも不安だろうが、適齢期までまだ時間はある。お前にふさわしい結婚相手を見つけるから安心しなさい。エリザベスの結婚が決まったのだ。こんなにめでたいことはないだろう?」
破談になってめでたいことなんてないと思いますけど?
婚約破棄になるのは構いませんが、この家を渡すつもりはありません。
離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。
しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。
私たち夫婦には娘が1人。
愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。
だけど娘が選んだのは夫の方だった。
失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。
事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。
再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。
自分勝手な側妃を見習えとおっしゃったのですから、わたくしの望む未来を手にすると決めました。
Mayoi
恋愛
国王キングズリーの寵愛を受ける側妃メラニー。
二人から見下される正妃クローディア。
正妃として国王に苦言を呈すれば嫉妬だと言われ、逆に側妃を見習うように言わる始末。
国王であるキングズリーがそう言ったのだからクローディアも決心する。
クローディアは自らの望む未来を手にすべく、密かに手を回す。
平民の娘だから婚約者を譲れって? 別にいいですけど本当によろしいのですか?
和泉 凪紗
恋愛
「お父様。私、アルフレッド様と結婚したいです。お姉様より私の方がお似合いだと思いませんか?」
腹違いの妹のマリアは私の婚約者と結婚したいそうだ。私は平民の娘だから譲るのが当然らしい。
マリアと義母は私のことを『平民の娘』だといつも見下し、嫌がらせばかり。
婚約者には何の思い入れもないので別にいいですけど、本当によろしいのですか?
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
【完結】離縁ですか…では、私が出掛けている間に出ていって下さいね♪
山葵
恋愛
突然、カイルから離縁して欲しいと言われ、戸惑いながらも理由を聞いた。
「俺は真実の愛に目覚めたのだ。マリアこそ俺の運命の相手!」
そうですか…。
私は離婚届にサインをする。
私は、直ぐに役所に届ける様に使用人に渡した。
使用人が出掛けるのを確認してから
「私とアスベスが旅行に行っている間に荷物を纏めて出ていって下さいね♪」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる