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③
しおりを挟む酒場からつまみ出された僕はそのままフラフラ歩いていた。
他所の店で飲みなおす気にもなれず帰ろうかと思っていた時だった。
学生時代の友人が屋台で飲んでいるのを見かけた。
声をかけようとしたが…
「本当にロンドの奴、馬鹿だろ」
「本当に、玉の輿だったのにさ」
「何でリサ嬢にあんな酷い真似を」
僕は立ち止まった。
まるで僕が馬鹿な真似をしたと言わんばかりだった。
「リサ嬢は学生時代から優秀で、学園始まって以来の優等生だったのにな」
「本来ならロンドなんかじゃ釣り合わなかったのにな」
「ああ、子爵夫人が目をかけているだけあって学問にも精通していたしな。つーか、俺狙ってたんだよな」
「お前もかよ!」
何の話だ。
リサが学生時代からモテていた?
彼らはリサが好きだった?
「けどよ、リサ嬢も災難だよな」
「貴族との婚姻は障害が多いからって世話好きのおばさんがロンドなんかを婚約者に選んだんだよな」
「あれ、絶対に嫌がらせだろ」
「ああ!リサ嬢の両親は子爵夫人と仲がいいからこれ以上力をつけて欲しくないって魂胆だ」
何だよそれ…
嘘だそんなの!
リサは僕を愛していた。
だからリサの両親が是非にと頼み込んだんだ。
だから!
「まぁリサ嬢も男を見る目がなかったんだろうな」
「リサ嬢は男慣れしてなかったしな。本当に可哀想だよな」
「あれで傷物だぜ。でも子供が出来なくて良かったんじゃね?」
「だな!子供がいたら人質にして死ぬまで牢獄行きだよな。ある意味命拾いしたっていうか」
僕が悪いような言い方。
どうして誰もリサを責めないんだ。
悪いのはリサだろ?
僕は何一つ非がないのに。
何より彼らは何所でそんな噂を。
噂自体がでっち上げに決まっている。
そうだ…
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決められた結婚なんかじゃない。
そう言い聞かせた。
きっとリサだって頭を冷やせば戻ってくる。
そう思っていたが、僕を待っていたのは…
「ロンド、今日限りで辞めてくれ」
理不尽な現実だった。
何も悪くない僕をどうして神様は虐めるのか。
こんな仕打ちを受けないといけないのか。
理解できなかった。
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