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②
しおりを挟む客に対して無礼極まりない発言だった。
黙っている僕に対して女主人は更に続けた。
「この世の女は男に従うような言い方だね。最低だね。アンタみたいなのをモラハラっていうんだよ」
「何だと!」
「あら怖い?拳を突き出して殴るのかい?別に構わないよ…その場合アンタがどれだけ無粋な男かこの店で晒すことになるよ」
何なんだこの女は!
僕は客だというのにありえない。
「出て行ってくれる」
「わぁ!」
水をかけられた。
コップではなくバケツでだ。
「貴様!」
「アンタごとき男に貴様なんて言われる筋合いないわ。本当に最悪だわ」
「そうよ!どんなお客さんにも平等に接するのがモットーだけど、女を見下す男は二度と来ないで欲しいわ」
「女将さんを馬鹿にするなんて最低!」
僕に暴言を吐いたのはこの店の看板娘達だった。
客にはかなりの人気があると聞くが、こんな性悪な女の何所がいいのか解らない。
「貴様らいい加減に…ぐっ!」
いきなり誰かに背後から掴まれる。
「おい、人の女房に何してやがる」
「えっ…」
見る限りやばそうな男だった。
「黙ってきいてりゃ、男がそんなに偉ないのか」
「ぐっ…」
声が出ない。
苦しい…誰かに助けを求めるも、誰も助けようとしない。
「お前みたいな屑男がいるから泣く女が多いんだ。女を見下す奴、女に暴言を吐く奴は男として、人として最低だ!お前は母親の腹から生まれて来たんじゃねぇのか」
「旦那、そいつに何も言っても無駄だぜ。元妻を召使のように使って、最後はポイ捨てしたんだからよ」
「見かねた後見人の貴族様が離縁をするように言うぐらいだぜ」
「本当に最低だぜ。そんなに女を見下したいなら嫁なんて取るなよ」
「本当に見ていて不快だぜ。女将もこんな男尊女卑男は出入り禁止にしろよ」
誰一人として僕を助けようとしない。
何故だ?
同じ男として僕の味方をしないなんてどうしてだ!
僕は間違ってない。
この世は男が動かしている。
女は夫の為に働くのが幸せじゃないのか!
夫に黙って尽くす。
なのに何故だ!
「解らないようだな。お前は今まで妻の苦しみを理解してなかったんだろう。いや、お前にとって妻は都合のいい消耗品か」
「な…ん…で」
どうして僕が責められないといけないんだ。
僕は間違ってないのに。
冷めた視線や軽蔑の眼差しを向けられる理由が解らなかった。
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