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66⑧

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シンパシー一家は連行されるも、注意と役人からの指導を受けることとなった程度だ。


血液鑑定を行った後に血縁者だということは証明されたけど、彼らは赤ん坊の接し方が不慣れであることと、精神的にも問題があるとのことだ。


第三者から見れば生ぬるいと思うけど、赤ん坊の虐待を証明するには証拠が弱すぎたのだ。


「風の噂で聞いたがシンパシー家は町でも爪はじきだそうだ」

「でしょうね?」

「今回の一件は町から町に続いて噂が流れるだろう」


子は宝と考える女性は少なくない。
特に村などでは子供を大事にされており、夫がない女性は村で協力し合っている。


現在は女一人で子を育てる人の為に支援を行っている福祉団体もいるのだけど。
シンパシー家はその援助を受けることは難しくなるだろう。



「こうなれば…」


「最悪の事態になるかもしれないわ」



ミレイちゃんを保護するべきだという声が上がるだろうし。
母親も責められるでしょうね。


「問題はあの姉だろう」


「そうね、私が知るすべはないけど…問題は彼女だわ」


未だに母親の自覚がなさすぎるわ。
彼女だけじゃないわ。

夫にも問題があるわね。


「お節介をした方が良さそうね」

「おい…」

「私達も親でもあるのですから」


正直シンパシー家がどうなろうが知った事ではない。


でもミレイちゃんには何の罪がない。


「言いたいことは解るが」


「子供に罪はありません」


このままではミレイちゃんはどうなるか。
保護してもらえたとしても、環境がいいとは限らない。


「そもそも、夫は何をしているんだ」

「詳しく知らないのだけど、官僚補佐をしていると聞きますわ。かなり多忙なのでしょう」



だからと言ってこうなるまで放置していい理由にならないけど。
手紙で現状を報告した方がいいわね。



「子爵夫人に相談してみますわ」


「このことはリサには…」

「今はいけませんわ」



伯爵様が、リサにアプローチをしてくださったおかげで明るい未来が見えたのだから。


「あの子には今度こそ幸せになって欲しいわ」


「ああ…」

「だからこそ、今回は私達が動くべきなのよ」



ミレイちゃんのことはリサも心配しているでしょう。


ずっと我慢して面倒を見ていたのはミレイちゃんが不憫だったから。


「子供は親を選べませんから」

「私達でできることをしてあげよう」


子を持つ親として、ミレイちゃんが幸福な道を探そう。


それが私達にできる唯一の事だ。


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