65 / 169
65⑦
しおりを挟む私が余計な事を言わずとも周りは勝手に誤解をする。
「ちょっと!違うわよ」
「お義母さん!」
奥様達が騎士と役人を呼んでくれたおかげで私は顔を俯かせているだけでいい。
「彼らが赤ん坊を誘拐をしたという奴らですか」
「こんなに泣きはらして!」
「よく見るとおむつを交換していませんし、肌も…」
ここ数日ちゃんと手入れをしていないのが解る。
ベビー服も随分と汚れているし、おむつもちゃんと交換してないのが解る。
入浴後の手入れもちゃんとしていないから肌もボロボロだ。
どれだけ放置していたのかしら。
「誘拐だけでなく心身の虐待を行うとは!」
「待ってくれ!その赤ん坊は本当に姪で…」
ぎゃあぎゃあ騒ぐ彼ら。
こういう時こそ冷静にならないと駄目なのに、本当に馬鹿な人。
特に一番愚かなのはロンドだわ。
本当にここまで馬鹿だったかしら?
婚約時代はそんな馬鹿でなかった。
「大丈夫ですか?」
「ええ、ありがとうございます。でも…またこのような事がないか不安で」
奥様方が私を心配してくださる。
妙齢の娘を持つ親としては気持ちが解ると言った所かもしれない。
「大丈夫ですわ。既に約束を破っているのでしょう?」
「弁護士を代理人にして、二度と商会に入れないようにすればいいのですわ」
「警備を依頼すればいいのですわ」
連行された彼らは、早い段階で釈放されるでしょうね。
血液鑑定をすればすぐに解る事だもの。
ただ、しばらくはこの町に近づくのは難しいわ。
あれだけ騒ぎ、役人に連行されたのだから。
世間の風当たりはきつくなるわ。
既に傾きかけていると聞いているシンパシー家の商売も立ち行かなくなるし、ロンドも仕事を続けられなくなるだろうけど。
自業自得だわ。
私は娘を守りたい母親の気持ちは理解しても、許す気はない。
自分達の幸せの為に大事な娘を踏みつけていいははずがない。
だからこそ少しの仕返しは許されるはずだわ。
それだけの事を彼らはしたのだから。
2,677
お気に入りに追加
5,176
あなたにおすすめの小説
自分勝手な側妃を見習えとおっしゃったのですから、わたくしの望む未来を手にすると決めました。
Mayoi
恋愛
国王キングズリーの寵愛を受ける側妃メラニー。
二人から見下される正妃クローディア。
正妃として国王に苦言を呈すれば嫉妬だと言われ、逆に側妃を見習うように言わる始末。
国王であるキングズリーがそう言ったのだからクローディアも決心する。
クローディアは自らの望む未来を手にすべく、密かに手を回す。
離婚したらどうなるのか理解していない夫に、笑顔で離婚を告げました。
Mayoi
恋愛
実家の財政事情が悪化したことでマティルダは夫のクレイグに相談を持ち掛けた。
ところがクレイグは過剰に反応し、利用価値がなくなったからと離婚すると言い出した。
なぜ財政事情が悪化していたのか、マティルダの実家を失うことが何を意味するのか、クレイグは何も知らなかった。
結婚式をボイコットした王女
椿森
恋愛
請われて隣国の王太子の元に嫁ぐこととなった、王女のナルシア。
しかし、婚姻の儀の直前に王太子が不貞とも言える行動をしたためにボイコットすることにした。もちろん、婚約は解消させていただきます。
※初投稿のため生暖か目で見てくださると幸いです※
1/9:一応、本編完結です。今後、このお話に至るまでを書いていこうと思います。
1/17:王太子の名前を修正しました!申し訳ございませんでした···( ´ཫ`)
皆さん勘違いなさっているようですが、この家の当主はわたしです。
和泉 凪紗
恋愛
侯爵家の後継者であるリアーネは父親に呼びされる。
「次期当主はエリザベスにしようと思う」
父親は腹違いの姉であるエリザベスを次期当主に指名してきた。理由はリアーネの婚約者であるリンハルトがエリザベスと結婚するから。
リンハルトは侯爵家に婿に入ることになっていた。
「エリザベスとリンハルト殿が一緒になりたいそうだ。エリザベスはちょうど適齢期だし、二人が思い合っているなら結婚させたい。急に婚約者がいなくなってリアーネも不安だろうが、適齢期までまだ時間はある。お前にふさわしい結婚相手を見つけるから安心しなさい。エリザベスの結婚が決まったのだ。こんなにめでたいことはないだろう?」
破談になってめでたいことなんてないと思いますけど?
婚約破棄になるのは構いませんが、この家を渡すつもりはありません。
小石だと思っていた妻が、実は宝石だった。〜ある伯爵夫の自滅
みこと。
恋愛
アーノルド・ロッキムは裕福な伯爵家の当主だ。我が世の春を楽しみ、憂いなく遊び暮らしていたところ、引退中の親から子爵家の娘を嫁にと勧められる。
美人だと伝え聞く子爵の娘を娶ってみれば、田舎臭い冴えない女。
アーノルドは妻を離れに押し込み、顧みることなく、大切な約束も無視してしまった。
この縁談に秘められた、真の意味にも気づかずに──。
※全7話で完結。「小説家になろう」様でも掲載しています。
だってお義姉様が
砂月ちゃん
恋愛
『だってお義姉様が…… 』『いつもお屋敷でお義姉様にいじめられているの!』と言って、高位貴族令息達に助けを求めて来た可憐な伯爵令嬢。
ところが正義感あふれる彼らが、その意地悪な義姉に会いに行ってみると……
他サイトでも掲載中。
離れた途端に「戻ってこい」と言われても困ります
ネコ
恋愛
田舎貴族の令嬢エミリーは名門伯爵家に嫁ぎ、必死に家を切り盛りしてきた。だが夫は領外の華やかな令嬢に夢中で「お前は暗くて重荷だ」と追い出し同然に離縁。辛さに耐えかね故郷へ帰ると、なぜかしばらくしてから「助けてくれ」「戻ってくれ」と必死の嘆願が届く。すみませんが、そちらの都合に付き合うつもりはもうありません。
離縁してくださいと言ったら、大騒ぎになったのですが?
ネコ
恋愛
子爵令嬢レイラは北の領主グレアムと政略結婚をするも、彼が愛しているのは幼い頃から世話してきた従姉妹らしい。夫婦生活らしい交流すらなく、仕事と家事を押し付けられるばかり。ある日、従姉妹とグレアムの微妙な関係を目撃し、全てを諦める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる