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64⑥
しおりを挟む世間体を気にする彼らにとって、今の現状はよろしくない。
ならば、利用させてもらうわ。
「奥様、この方たちは…」
「ええ…困ってまして」
「まぁ!」
私が心底困った表情をすると色々勝手に想像を膨らませてくださった。
「先日も約束もなく非常識にも商会に押し入ったのを見かけましたわ」
「まさか赤ちゃんを浚って売ろうとしたのでは?」
「まぁ、最低ですわ」
勝手に勘違いをしてくれたけど、これで彼らは商会に足を踏み入れにくくなる。
「すぐに警備隊の方と役人を呼んだ方が」
「何を…」
「馬鹿な事を言うな!私達は」
誤解されているけどわざわざ誤解を解くような真似をしない。
「ここは貴女達のような外道が来る場所じゃないわ」
「そうよ!子供を誘拐するなんて最低よ!」
「渡しなさい!私達で保護するわ」
未だに泣き続けているミレイちゃんを奥様達が奪う。
「えっぐ…えっぐ」
「可哀想に。怖かったのね」
「もう大丈夫よ」
子育ての経験者故に、赤ん坊のあやし方はスマートだった。
対するシンパシー夫人は子供をまともにあやすこともできないなんて。
本当に二人の子供を育てたのか疑わしいわ。
「何で泣きやむんだ!」
「ちょっと…」
ミレイちゃんが泣きやんだことにいら立ったのか、再び泣き出す。
「ふぇぇぇん!」
この泣き方は怯えるようだった。
仮にも祖父母や叔父に対する泣き方ではない。
第三者から見れば浚って来たと思っても仕方ない。
「私達はここの女主人の親族よ!」
「そうだ!無礼な…」
「正確には元ですわ。娘と離縁した元夫と、その両親です。復縁を強引に迫られて困っていまして」
「なっ…何を言うの!」
本当に自分達の事しか考えていないわね。
何度も迷惑と言ったのに理解しようとしない。
こんな事を繰り返ししていると第三者はどう見るか。
「なるほど、脅迫して復縁を迫り、奥様にも気脅迫して来たのね」
「最低ね!今すぐ突き出すわ」
「ちょっと!」
私が手を下す暇もなく、三人はその後役人に引き渡された後に厳重注意と、我が商会に出入りすることは禁じられた。
ただ普通に禁じるのではない。
彼らには言っても無駄なのだから。
だから強制的な方法をとることになったのだ。
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